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別冊
船体保守にかかる調査
報告書
平成17年2月
株式会社 日本海洋科学
1. 目的
船体保全の現状調査及び船体保全マニュアル、記録簿等の書類の現状調査からGBS(Goal-based New Ship Construction Standards。以下GBSと称す。)で規定すべき船体の保全マニュアル及び記録簿の種類、これらに書かれる内容、項目等の概要をまとめることを目的とする。
(1)現状調査
以下の現状調査を行った。
(1)一般的な船体保全管理に関する現状
・船舶管理の方法
・原油タンカー、ケミカルタンカー、バルカーの船体保全の現状
(2)船体保全マニュアルの現状
(3)船体保全記録簿の現状
(2)提案する保全マニュアル及び記録簿
(1)の現状調査を踏まえ、保全マニュアル及び記録簿の種類、これらに書かれる内容、項目等の概要をまとめる。
(1)一般的な船体保全管理に関する現状
船舶管理会社へのヒアリングによりまとめる。
(2)船体保全マニュアルの現状
船舶管理会社からの入手資料からまとめる。
(3)船体保全記録簿の現状
船舶管理会社からの入手資料からまとめる。
(4)保全マニュアル及び記録簿の提案
(1)(2)(3)の結果からGBSで規定すべき船体の保全マニュアル及び記録簿を提案。
なお、ヒアリング内容、結果は資料編‐1に掲載している。
調査会社を表3-1-1に示す。
オペレータ兼オーナ1社、インハウス船舶管理会社2社、独立系船舶管理会社4社、インダストリアルキャリア1社、オーナ1社の9社が調査に協力していただいた。
ヒアリング内容は船舶管理方法、原油タンカー、ケミカル(プロダクト)タンカー、バルカーの船種毎に関する船体保全管理状況、船体保全マニュアル・記録に関する現状である。
ヒアリング項目及び各社のヒアリング結果の詳細は資料編−1を 参照願う。
表3-1-1 ヒアリング調査対象会社の概要
| 番号 |
会社略称 |
ヒアリング
原票番号 |
会社の概要 |
会社分類 |
調査対象船種 |
| 1 |
A |
1 |
運航隻数約700隻の大手運航会社。インハウス船舶管理会社、独立系船舶管理会社に管理を委託。コンテナ、タンカー、バルクキャリア、PCC、LNG船等を運航 |
オペレータ、オーナ |
原油タンカー、ケミカルタンカー |
| 2 |
B |
2 |
中核運航会社から分社したインハウス船舶管理会社。タンカー、バルクキャリア、PCC船、LPG船、コンテナ船を管理。全35隻を管理。 |
インハウス |
原油タンカー、ケミカルタンカー |
| 3 |
C |
3 |
中核運航会社から分社した船舶管理会社であるが、独立系色が強い。全60隻を管理。 |
独立系 |
バルカー |
| 4 |
D |
4 |
大手運航会社と資本関係があるが、独立系船舶管理会社。管理隻数は3隻のバルクキャリア。 |
独立系 |
バルカー |
| 5 |
E |
5 |
原油タンカー専門のイアンダストリアルキャリア。タンカー全9隻管理。 |
インダストリアルキャリア |
原油タンカー |
| 6 |
F |
6 |
独立系船舶管理会社。大手運航会社及び商社から管理を委託されている。管理隻数は約60隻。 |
独立系 |
バルカー |
| 7 |
G |
7 |
製鉄メーカ系の運航会社のイアンハウス船舶管理会社。全19隻管理。 |
インハウス |
原油タンカー、バルカー |
| 8 |
H |
8 |
ケミカルタンカーを主体としたオーナー。全8隻管理。 |
オーナ |
ケミカルタンカー |
| 9 |
I |
9 |
独立系船舶管理会社。全20隻管理。 |
独立系 |
バルカー |
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(1)親会社(実オーナ)と船舶管理会社の契約、保全管理方法等
(1)オーナ及びインダストリアルキャリアは自社船のため船舶管理契約は必要ないが、他の船舶管理会社は実オーナとは船舶管理契約を結んでいる。
(2)保全管理の方法
(1)船舶管理はISMコードで規定されており、船舶及び会社は認証されることが必要。全社がSMS(Safety Management System)を備えている。定期的に会社による内部監査、船級による外部監査がありチェックされている。
(2)管理方法はISMコードに準拠したSMSマニュアルによる。SMSマニュアルでは保全管理手順の作成することを強制しているため本船及び陸上に保全に関するマニュアルがある
(3)SMSマニュアルには管理規定、手順が示され、管理方針が書かれている。保全管理においては、SMSマニュアルに記述できない詳細事項は保全管理マニュアルを別に作成している。
保全管理方法としての記述では、一般にSMSマニュアル、船級規則、契約に従った管理をすることが記載されている。
また、本船及び保全担当者の役割、保全の手順を決めており、船舶管理会社はそれに則り管理している。
(4)一般に船舶管理では年初に予算を作成する。年初に本船のOBM(Onboard Maintenance)スケジュール、入渠スケジュール、受検スケジュール、不具合の修理等の保全計画仕様を作成し、実オーナと検討し、保全仕様・管理予算を確定する。また、本船の状況、予算の進捗状況をオーナに年2回報告している。
(5)船体も含め、設備に何等かの異常がある場合、船長は必ず会社に報告するシステムとなっている。
この場合、安全に影響がある場合、会社で安全管理委員会が招集され、対応が決定される。当然、船級、用船者等の関係者にも報告される。
(3)運航会社との関係
(1)5百隻以上を運航している大手のオペレータ(一般に、実オーナ、チャータラーになる)には技術部門があり、船舶管理会社に対して何等かの指示、技術資料の提供を行っている。
その資料は多くの自社運航船舶からの技術情報・損傷情報、船級のガイド、PSC(Port State Control)から得たものである。
運航船で問題が発生した場合、調査・分析を行い技術資料を作成し、管理会社へ技術資料の提供及び点検を指示している。
(2)大手のオペレータは独自の管理基準を持ち、船舶管理会社及び船を定期的に検査している(いわゆる用船者検船)。
(4)船舶の管理年数
(1)船舶の管理年を実オーナから指示されている会社とそうでない会社があるが、一般に管理会社は独自に目標管理年数を決めているようである。現在は、管理年が延びるようである。
(2)例えば、管理会社が3年、5年、8年、10年管理のメニューを作り、実オーナーに選択させている場合があった。
(5)船体保全マニュアル
(1)船舶管理会社ではSMSマニュアルでコントロールされる保全管理マニュアルがある。保全管理マニュアルは船体、運航、機関、通信等の全体を管理対象としたものでOBM手順、検査手順、証書の管理手順、入渠工事の手順、関係者の役割分担が書かれている。それとは別に船種毎に詳細な船体保全マニュアルを作成している。
(2)保全管理マニュアルには船級からの情報、他船からの情報を得て、問題があれば対応技術情報を作成し、本船及び関係者に指示。
(3)一般にNK船級の各種マニュアル、造船所の技術資料を利用している。NK船級のPSC年次報告書の検査情報を保全管理に利用しているケースもあった。
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