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参考資料2
国内主要造船所が考える塗装スペックTSCF15年強制化の問題点
国内主要造船所に対して、以下の質問を行ったところ、各造船所より次表のような回答が得られた。
Q1. TSCF15年が強制化された場合、工数の増加、工期の差はどれくらいか?
Q2. TSCF15年が強制化された場合、日本(建造能力の低下)はどの程度の影響があるのか?
Q3. 中国や韓国ではTSCF15年は当り前に実施されているのか?
Q4. 実施しているとして全体のどれくらいの割合か?
Q5. 韓国や中国でTSCF15年とそれ以外で、どれほど工期が違うのか?
Q6. 中国や韓国は、日本と違って、どのような設備や施設があるのか?
TSCFスペック中、どこが一番工数上問題であるのか?以下のについて御教示下さい。
Q7. サンドブラストで70%プライマー除去が最大の問題なら、何%なら妥協できるか?
Q8. 別の下地処理方法が提案できるか?
Q9. 塗装2回塗りの強制化は大問題か?それとも、別の何かが問題か?
Q10. TSCF15年(高級な塗装スペック)に代わる、塗装の性能基準とは何か?
| 質問 |
造船所からの回答 |
| Q1 |
実際コスト比較リストも各事業所の設備も異なり、TSCF15をそのまま工数・工数時期を比較できない。
Product船のCOT塗装同等もしくは以上の基準であり、建造工程・コストに与える影響は多大である。まだ具体的な工期・コストは検討していない。
塗装工数・工期は通常、仕様・物量・施行方法で決まる。しかし、船主監督のMannerによっては予想が大きく変動する。TSCF15のように仕様・品質を定義することは監督の個人差を無くすための一助になるようにも思うが、これが現場で起こる事象の全て言い尽くしたものではなく、使い方によっては大混乱を起こす原因になる。よって予想は難しいが、工数2〜4倍、工数1.5〜2倍。
TSCF15を適用した場合、52型クラスのBCで、工数が約20,000時間、工期が約1ヶ月半必要と予想する。
本仕様において技術的設備的な問題事項が解決することを条件とすれば、以下のとおり。 ・工数は当社の標準仕様船に比して220%程度と推定する。 ・工期については増員により工期短縮を計ること実施しても標準船に比して135%程度と推定する。
1. エッジ処理(3パス)で現在の造船所標準より4〜5倍の工数増加となる。 2. 継手部は銅ガラミによるサンドブラスト施工となる。 (現状は工器具)ブラストの段取り、養生や清掃で3倍の工数増加となる。 3. ストライプコートも2回塗りが標準となるため、2倍の工数増加となる。 4. 船内ブラスト工事となると設備的に、除湿装置、集塵装置、バキューム清掃装置等の装置が必要になるが、現状は対応できる設備はない。
TSCFはそのままでは適用できないため、工数、工期増等の推定はできない。 |
| Q2 |
TSCF15の採用は塗装コスト以上に造船所設備・人員最終的には工程(建造隻数)にまでに大きな影響がある。
日本のヤードは建造隻数を大幅に減じ尚且つ設備増強すれば対応は可能
国内大手・中手共殆どの工場はブラスト工場を所有している。当社も小規模ながら所有しているが、全てのブロックを行うことは不可能。従って、ブロック分割の変更等合理的な生産ができなくなる。(建造能力のダウンの数値化は難しいが、60%を予想)
グループ内のいくつかの工場がブラスト工場を持っておらず、今から設備する敷地的余裕もない。日本全体での状況は承知しないが、当社グループに限って言えば、GTベースで約20%の建造量低下につながる。
・当社においてはA工場はブラスト設備あり、B工場はブラスト設備なしの状況にある。 ・現状設備であればB工場での建造が不可能となりB工場建造分55%が0%となる。 ・A工場においても工期が35%長くなることからA工場建造分45%が33%となる。 ・A工場、B工場全体で67%の建造量低下となる。ルール適用となればブラスト設備の増設と成るだろう。
Q1回答分がすべて増加するため、設備の増強等、人の確保等多々問題が生じる。
屋内ブラスト処理が出来る塗装工場があるのは一部で、他の事業所には十分な設備はない。従って、パワーツールの使用が認められないと工事に支障をきたすことになる。 |
| Q3 |
ヨーロッパ、中国&韓国は対応可能(実施中)
韓国造船所がTSCF15を適用し建造しているか否かの情報はないが、BIG3の設備は十分対応可能。
・全ての造船所の確認をおこなっていないが、AFT ERECTION においてブラストするためには特殊ブラスト方式(スポンジブラスト等)、または全面的な養生を実施する必要が有ると考えるが、実施しているとの情報は掴んでいない。 ・また施行方法がTSCFTと異なるが、品質的にTSCFと同等となるPCタンカーのカーゴタンク塗装方式をWBTに適用した話も聞いていない。 ・国内某造船所では、AFT ERECTION において、溶接部のブラスト処理を施行している。
未確認 |
| Q4 |
不明
・AFTER ERECTIONにおいての溶接部のブラスト処理以外は技術的に問題なく、入ってきている情報からして、部分的にはかなり標準化していると考える。 ・当社においてもライバルの調査の必要性を痛感しており、機会があれば調査見学が必要と考えている。
未確認 |
| Q5 |
不明 現在の所、当方においては本件に関するデータを持ち合わせていない。 未確認 |
| Q6 |
ブラスト及び塗装工場でほぼ全てのブロックの下地処理・塗装ができる規模の上屋と設備を有する。(中身は日本の造船所と同じ。規模の違い)
・韓国、中国において実施しているなら、AFT ERECTIONにおける特殊ブラスト装置及び養生材が必要となる。 ・その他設備に付いては技術的には現状保有の装置にて工事可能。
未確認であるが、韓国大手や中国の最新工場はブラスト処理能力の大きな塗装専用工場を持っていると思われる。 |
| Q7 |
Shop Preimerは建造期間の保護等の目的で塗るものであり、Primerが塗料に悪さをしないものであれば健全なPrimerは除去する必要はない。
標準Product船のCOT塗装のショッププライマー除去率が70%であることから比較しても、部材の多いバラストタンクで除去率を70%以上にすることは膨大な時間と手間が必要となる。また、何を基準に70%以上除去されているのか判断に困る。すなわち明らかに70%以上除去されていることを目視のみで確認でき、検査を容易にする為には作業としては80〜90%を目指すことになり、単に70%除去のコストでは比較できなくなる。ちなみに、現在はショッププライマー健全部はスイープBlastのみであり、約30%除去程度が現状だと思われる。
数字の大小より現場の状態がその数字に適しているかの判定が難しい。つまり、監督、検査員の感覚に依る検査になることが問題。
最大の問題点とは考えない。時間をかければ出来ることであるが、問題は現在の設備において塗装処理量が減ることにある。現状において平均除去率が30%程度であり処理能力が半減する。また設備は100%FULL活用しており30%が限界となる。
70%のプライマー除去では、現状のブラスト作業の約5倍の工数が必要。
欧州や韓国、中国が採用していると思われる、建造期間中の防錆効果のみを想定した種類のプライマーによる建造法では、その除去率を定めることには意味があるかもしれない。それに対して、日本の造船所では耐熱性の高いショッププライマー(無機ジンクシリケート型)を採用しており、健全な部分については継続的な防食効果もあることから、除去するよりもそのまま塗装することをペイントメーカーも推奨している。従って除去する部分は焼けたり発錆した、いわゆるダメージパートに限られるため、一律に除去率を定めることは実情に合わない。 |
| Q8 |
Ultra High Pressure Water Jetting(170MPa以上)で下地処理する方法もあるが、Flash Rustは避けられず、TSCF15の求めるものにならない。
無機ジンクを70%除去する必要があるのか技術的に検証する必要があると考えている。
特にアイデアはない。
プライマーの種類に関わらず、一律に除去率を定めることは不合理で、むしろSPSSのような除去判定基準を定めるほうが理にかなっている。 |
| Q9 |
現在でも約半数の船主がWETについて2回塗り(125μ×2または150μ×2)の要求がある。2回塗りがコストアップ、工期に影響はあるが、これらの問題が解決できれば重大なことではない。
・現在二回塗りに関してはかなりの建造船で建造実績があり、大問題とはならないと考えている。 ・AFTER ERECTOINにおける溶接部ブラストの方が技術的には問題と考える。
2回塗り自体は特に問題はない。
2回塗り仕様や3-passのエッジ処理は客先との個別交渉で決められる仕様である。コストへの影響も大きいので、必要最小限の基準からは外すべきと考える。が、もちろん人と時間をかければできない話ではない。
二次下地処理でプライマ除去率を定めている部分とブロック・エレクション段階でもブラストを要求している点が最大の問題である。また、ブラスト処理ができる塗装工場がない場合には二次下地処理でのブラストの要求も問題となる。 |
| Q10 |
塗装性能の基準はないと思う。(DNV CORROSION PROTECTION OF SHIPS 2000のRecommended Practice位か)
現在の日本の標準的な仕様の弱点をカバーする、ツボを得た仕様である。塗装の性能基準及び施行性基準を考えると、TSCF15の次の点を改正しても同等の性能を得ることが出来、造船所も受け入れ易くなるのではないか。 変更事項 1)無機ジンク除去率は溶接、損傷部Sa2.5、その他 サンドスイープ 2)AFTER ERECTION BUTTS ST3、THREE FULL STRIP COAT、350MICDFT 3)穴コバにおいては3回のストライプコート。 但し、本仕様としても現状仕様に比して非常に施行に苦労を伴うことになる。
塗装仕様に関する考え方は造船所によっても異なっており、オーソライズされた標準的なものは無いと思われる。
基準を定めるのであれば、必要最小限とすることが望ましいと考える。現状、それに見合った業界共通の基準は見当たらず、設備により異なるので各社各様と思う。1993年に造船工業会で大手造船所が作成したVLCCのバラストタンク用に作成したガイドラインが業界標準に近いかもしれないが、その当時としては、これでも一部の造船所には厳しかったため、造工共通の基準とはならなかったと聞いている。 |
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A社における不都合要素(塗装関係)概算例
1. 研掃工場新設に伴う設備・付帯費用の発生
4ブース案 11億8千万
2ブース案 6億5千万
2. フルストライプコート2回塗りによる工期の増加と時数アップ
フルストライプコートの意味合いは、全シーム及び全エッジと考えられる
ブロック数×平均40H
船内タンク×平均40H
3. 船内エレクションタンクのブラスト工事に伴う工期の増加と時数アップ
シーム個所Sa2.5 その他St3.0
ブラスト〜掃除で1タンク最低2日以上の工期増加
4. 膜厚ミニマム規制による塗料の増加
最低でも2割以上増加
5. 塗膜不具合による再検、手直し工事
不確定な要素で、時数発生は大と考えられる。
6. その他
ストライプコートの検査及び1st Coatの検査の有無ありであれば、工程の混乱と納期遅れの発生大
船殻工程遅れによる手待ち等
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