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2003/10/17 産経新聞朝刊
【主張】中国宇宙船 気がかりな軍主導の開発
 
 中国が、有人宇宙船「神舟5号」の打ち上げ、回収に成功した。宇宙船の打ち上げ、軌道上でのコントロール、そして内モンゴル自治区での帰還・回収、いずれもが予定通り、手堅い技術の実証だった。今回の成功の延長線上には、すでに月着陸も組み込まれている。中国は、今後とも内政・外交、軍事をからめた独自の宇宙開発を展開していくだろう。
 しかし、一衣帯水の隣国であるわが国にとって、中国の有人宇宙船成功は安全保障とも合わせて考えていかねばならない。心配の第一は、中国の宇宙開発が人民解放軍主導で進められている点である。
 中国が、有人宇宙飛行計画をスタートさせたのは、平成四年はじめ、毛利衛さんが米スペースシャトルで宇宙飛行した年だが、宇宙開発そのものは昭和四十五年四月の人工衛星「東方紅1号」までさかのぼる。そして、衛星を宇宙軌道へ運び上げてきたロケットの源をたどれば、ミサイル運搬手段としてのロケットだったのである。
 以来、ミサイルと衛星打ち上げは表裏一体で進められ、衛星打ち上げ追跡管制本部も発射センターもすべて人民解放軍と中国共産党中央軍事委員会につながっている。アポロ計画を含めた米国の宇宙開発をつかさどってきた米航空宇宙局(NASA)と、軍が切り離されている米国などとはここが違う。中国では、すべての技術と資源を宇宙開発と軍事開発が共用していると見なければならないのである。
 「神舟5号」の打ち上げから帰還まで、スケジュールどおりに運んだということは、中国のロケット管理、運用の安定性を示し、ロケットに弾頭を載せた兵器として運用されたときの脅威の増大にもつながっていく。「神舟5号」の成功をきっかけに、日本を含めた自由社会ではミサイル防衛網構築が一段と現実味を帯びて論議されなければなるまい。
 それにしても、人間を宇宙軌道へ送り込む高度の技術を持ち、宇宙船打ち上げに多額の資金を投入できる国に、なお政府開発援助(ODA)が必要なのか。納税者の素朴な疑問である。また、国民が一体感を共有できるような国家プロジェクトを日本政府としても考える必要があるのではないか。
 
 
 
 
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