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2003/08/12 産経新聞朝刊
【主張】日中平和条約25年 首脳交流を早期再開せよ
 
 日中両国が一九七八年八月十二日、平和友好条約を締結してから二十五周年を迎えた。この間、中国は目覚ましい発展を遂げ、世界も大きく変わった。日中関係も各分野で飛躍的に拡大したが、政治面では首脳交流の途絶など問題も少なくない。平和友好条約の原点に立ち、関係のあり方を考えたい。
 平和友好条約は、七二年の国交正常化時の日中共同声明で、「両国間の平和友好関係を強固にし、発展させるため」交渉をうたった。締結まで六年を要する難交渉になったのは、「覇権条項」にソ連が「反ソ主義」と抗議、紛糾したためだった。結局、覇権条項は明記されたが、当時の「反ソ」の意味合いは、ほどなく消えた。
 この交渉における中国の強引な態度は、その後も繰り返された。特に指摘したいのは歴史問題に関する内政干渉的な交渉姿勢だ。
 平和友好条約は前文と五条で成り、第一条と第三条で、平等・互恵と内政不干渉の原則を明記している。政府が検定した歴史教科書や政治家の靖国神社参拝などは、日本の内政問題にほかならず、他国政府が修正を要求したり、報復措置を取ったりするのは、原則違反と言わねばならない。
 条約が目的の一つに掲げる経済・文化関係の発展、国民の交流促進は、七八年末、トウ小平氏の主導で中国が改革開放路線に転換、経済発展を遂げる中で達成された。これには官民の対中協力が大きく寄与したが、中国が経済大国化した今日、政府開発援助(ODA)の中止を検討すべき時期だ。
 条約は「アジアと世界の平和と安定」を目的に掲げている。この点で当面最大の課題は、北朝鮮問題にほかならない。中国の調停努力で、今月下旬に六カ国協議が行われる見通しになったことは高く評価する。核問題にせよ拉致問題にせよ、その解決には日中協力は不可欠で、ともに高度の政治判断を求められる時期が来るだろう。
 そのためには、両国の首脳交流を早期に再開すべきである。中国の温家宝首相は、訪中した福田康夫官房長官に対し、小泉純一郎首相の靖国神社参拝が障害と述べたという。中国国内の反日世論に配慮したためだろうが、残念なことだ。中国指導部は内政不干渉の原則を再認識してもらいたい。
トウ=登におおざと
 
 
 
 
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