米国防総省が「中国の軍事力に関する年次報告書」を発表した。台湾に向けた短距離弾道ミサイルの配備が約四百五十基に達し、日本や米国を射程に収めるミサイルの開発・配備も着々と進んでいるとするなど、中国の軍事力増強が予想以上のペースであることが報告された。日本も中国の軍事情勢を厳しく監視していく必要がある。
この報告書は、米国内法で二〇〇〇年から議会への提出が義務付けられたもので、今回はブッシュ政権下では昨年に続き二回目となる。昨年はこの報告書をきっかけに、米内外で中国脅威論が高まったが、今回も同様な議論となることが予想される。
問題の台湾に照準を当てた短距離弾道ミサイルは、昨年の報告書では約三百五十基だったが、今年は約四百五十基と一気に百基も増えた。昨年、今後は年間五十基の割合で増えるとしていたので予想の二倍のペースだ。異様な増え方といわざるを得ない。しかも今年の報告書では、今後は年間七十五基の割合で増えると修正した。
中国は台湾を平和的に統一する方針を示しているが、これでは相手に銃を突きつけて握手を求めるに等しく、理解を得るのは無理だ。しかも中国は依然として台湾への武力行使の可能性を捨ててはいない。
報告書は、中国が弾道ミサイルではなく衛星で誘導できる短距離ミサイル「東風15」(射程六百キロ)の改良型ミサイルを開発中で、前方配備すれば沖縄も射程に入ると指摘した。日本も安心できない。報告書はさらに、中国は現在、米国を射程に入れる大陸間弾道ミサイル(ICBM)を約二十基配備しているが、性能向上とともに二〇一〇年までに最大約六十基に増やす可能性があるとも言及している。
冷戦終了後、主要国の大半は国防予算を縮小してきたが、中国は逆に年々二ケタの大幅増額を続けている。しかも、中国の国防費(昨年は前年比17.5%増の二百億ドル)には武器輸入代金などが含まれないため、実際は三倍以上で世界二位にもなるという。中国がいくら「中国脅威論」を否定しても、これではだれも信じまい。
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