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2002/11/08 産経新聞朝刊
【主張】中国共産党大会 不安定まねく「重要思想」
 
 中国共産党は八日から、五年に一度の党大会(第十六回)を開く。江沢民総書記ら第三世代から、胡錦濤政治局常務委員ら第四世代へと指導者が交代し、江氏が提唱した「三つの代表」論を新たな指導思想として党規約に明記、資本家を含む「広範な人民の党」へ変身するという。中国はどこへ向かうのか、党大会を見守りたい。
 一九七八年末、トウ小平氏の指導で改革開放政策に転換した後、中国の発展と変化は目覚ましかった。特に八九年六月の天安門事件直後に総書記に就任して以来、十三年余に及んだ江沢民体制下では市場経済化と国際化が進み、中国経済は高成長を持続、それに伴い軍事力も著しく増強し、世界の大国として国際的発言力も大きくなった。
 こうした実績に立って江氏が打ち出したのが三代表論である。先進的な生産力と文化、および広範な人民の利益を党が代表するとの同論は、先端技術・知識が世界経済を制するとの時代認識を基礎に、市場経済の中で急成長、国有・公有経済を圧倒しつつある私有経済を取り込み、共産党が産業発展の指導権を握って一党独裁を維持する戦略にほかならない。
 しかし三代表論を中国公式メディアが「重要思想」と大宣伝する一方で、一般国民は冷め切っている。「広範な人民の利益」ではなく、少数のエリート階層や富裕層に利益をもたらし、格差の拡大、官僚の腐敗、失業の増大といった、社会主義の官僚支配体制下での市場経済が生んだ社会矛盾を深刻化させかねないとの声が多いのだ。
 江沢民総書記は党大会初日の活動報告で、都市と農村、沿海部と内陸部の格差是正のため、西部大開発計画や農村支援策の強化、失業者救済のセーフティーネット確立などの方針を打ち出すといわれる。しかし高成長策を続ける限り、矛盾の拡大は避け難い。
 中国の学者の間にも、社会・経済状況は天安門事件前よりも危機的との見方がある。実際に各地で労働者、農民の「反乱」が頻々と伝えられているが、そうした異議申し立ては力で押さえ込まれ、民主的に解決する制度改革の発想は、三代表論には見えない。エリート支配の愚民政策が三代表論の本質だとすれば、中国が不安定化に向かう可能性は否定できないだろう。
トウ=登におおざと
 
 
 
 
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