日本財団 図書館


2002/10/21 産経新聞朝刊
【主張】中台「三通」 総合的見地から判断せよ
 
 戦後半世紀以上も禁じられてきた中国と台湾の間の「三通」(直接の通商、通信、通航)が、解禁へ向け動きを強め始めた。しかし、台湾内部ではなお賛否両論が対立しているうえ、三通解禁問題は、中台関係や台湾の国際的地位だけでなく、日米をはじめとする外国企業のかかわりなど国際関係にも影響する問題だけに、当事者には総合的見地からの慎重な判断が求められる。
 三通問題は、内戦に勝って中国大陸を統一した中国共産党と台湾に逃れた中国国民党との戦後長期にわたる対峙(たいじ)の産物だが、中国側が改革開放路線を打ち出した故・トウ小平氏のもと、一九七九年に台湾側に解禁を呼びかけて以来、中台間の懸案となってきた。
 台湾側は中国側の統一の意図、安全保障問題を警戒して、李登輝前総統時代までは解禁拒否から慎重な構えを続けた。しかし二〇〇〇年五月に陳水扁・民主進歩党政権が発足して以来、台湾経済界の要望に押されて解禁の方向を打ち出し、昨年八月、総統の諮問機関、経済発展諮問会議が三通解禁を勧告した。
 その流れで、台湾の行政院(内閣)で大陸政策を担当する大陸委員会はこのほど、技術面や手続き面の検討をいまの立法院(国会)の会期が終わる十一月末までに終了すると発表した。これで三通解禁に向けた台湾側の法的整備が、まずは整うことになる。
 一方、中国側はこれまで、「一つの中国」原則を堅持し、三通で開通する中台路線を「特殊な国内路線」と位置付けてきたが、台湾の報道によると、中国の銭其●副首相はこのほど北京で台湾からの訪問団に対し、中台路線は「両岸路線と呼んでいい」と発言したという。両岸路線なら国内問題という意味合いが表面上は薄れ、中国側の戦術的柔軟化もうかがわせる。
 台湾経済界はコスト低減につながる三通解禁を望み、中国側は国内の経済建設のために台湾企業の進出、中台経済関係の強化を望んでいる。三通解禁はもはや止められぬ動きのようだ。しかし三通実現までには、台湾の主張する主権問題の扱い、国内路線と位置付けられた場合に外国企業がこのドル箱路線から締めだされる懸念など問題が山積している。総合的判断と対応を求めるゆえんである。
●=王へんに深のつくり
トウ=登のおおざと
 
 
 
 
※ この記事は、著者と発行元の許諾を得て転載したものです。著者と発行元に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど、著者と発行元の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION