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2002/08/19 産経新聞朝刊
【主張】対中投資 安全保障への影響注視を
 
 中国への企業進出などの直接投資が昨年から再び急増を続けている。日本からの対中直接投資額(実行ベース)は一九九七年をピークに二〇〇〇年まで減少を続けたが、昨年は四十五億八千万ドルと前年を六割近くも上回り、過去最高を記録、今年も記録を更新する勢いだといわれる。
 中国への企業進出は、これまで経済面でのコストメリットやリスクは語られてきたが、対中投資、とりわけハイテク産業の対中進出や貿易増大が、日本や地域の安全保障にどのような影響を与えるかについての問題意識は、十分とはいえなかった。
 米連邦議会両院が超党派でつくった「米中安全保障調査委員会」(R・ダマト委員長)が先月、高まる一方の対中投資や貿易など「米中の経済関係の増大が、米国の国家安全保障にどのような影響を与えるか」について初めての年次報告書をまとめた。
 二十人近い専門家を中心に、米政府関係各省庁、日本、中国、台湾などにある米政府出先機関、さらには米中央情報局(CIA)まで動員して徹底的に調査・分析した。
 結論は、対中投資は、米国に次ぐ軍事予算規模を持つ中国の軍事力増強に寄与する危険があり、米中経済関係の発展は米国の安全保障を損なう面がある−というもので、米政府に民間の対中投資の監視を強化するよう勧告した。また、対中投資の急増に伴う国内の産業空洞化についても、同じ問題に直面している中国周辺の日本や韓国、台湾などと話し合うよう促している。
 企業の相次ぐ中国進出に伴う産業の空洞化については、ことし六月、日本商工会議所の「地域産業空洞化問題特別委員会」(児玉幸治委員長)が中間報告をまとめ、「このままでは日本のものづくりが衰退する」とし、食糧安全保障、エネルギー安全保障などとならぶ「ものづくり安全保障」の国家戦略を打ち出すよう提唱した。
 ハイテク企業の中国進出の増大に伴い、日本の技術者の中国への移転、流出はすでに止められないのが実情だ。このままでは日本産業の生命線ともいえる技術の空洞化すら起こりかねない。対中投資の安保への影響を注視し、日米韓台などが協力して空洞化対策を検討する時期に来ている。
 
 
 
 
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