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2002/03/30 産経新聞朝刊
【主張】中国特許侵害 WTO加盟国の証し示せ
 
 日米のDVD(デジタル多用途ディスク)プレーヤー関連六社が、特許使用の許諾なしにプレーヤーを製造・販売してきた中国音響家電メーカーに特許料の支払いを求めている。世界貿易機関(WTO)に加盟した中国が、国際ルールを守り速やかに支払いに応じるのは当然だろう。
 特許料支払いを求めているのは、日立製作所や東芝など日本メーカー五社と米タイムワーナーで、金額は日本側だけで二百九十億円に上るという。支払い交渉に応じない場合は、法的措置も辞さない構えだ。
 六社が強い姿勢を打ち出したのは、もはや中国製プレーヤーの存在が無視できなくなったからだ。中国国内の価格は日本メーカー製の半値だし、北米市場でも低価格でシェアを伸ばしている。その影響額は八千億円に達するとの説もある。
 知的財産権侵害はDVDプレーヤーに限らない。中国製の海賊版はCDや靴、バッグ、時計などのブランド品からオートバイに至るまで幅広い。沿海部には海賊版専門工場の集積地まであり、一大産業になっているという。
 とくにオートバイは「HONDA」ならぬ「HONGDA」が堂々と販売され、輸出も多い。ベトナムでは年間需要と同じ量のニセモノが、中国から部品で輸入され、現地で組み立て・販売された。本物の三分の一という価格におされ、現地ホンダの生産は激減したこともある。
 WTOは中国の加盟に際し、知的財産権の保護を重要な条件の一つにした。中国もこれを受け入れ、「特許法」や「商標法」などの法整備を行った。しかし、中国専門家によると、北京政府の取り締まりの目は地方まで届いていないのが実態だという。
 中国はWTO加盟で自由貿易の利益を享受する。実際、日本をはじめ海外からの直接投資急増が中国経済を潤している。だが、せっかく生産移転しても、特許が中国企業に不法に流用されるようでは、おちおち進出できない。それは中国にとってもマイナスだ。
 中国はWTO加盟で改革を一層進めねばならない。それには法による統治の確立が必要だ。知的財産権の侵害を徹底的に取り締まり、WTOの一員であることを証明してほしい。
 
 
 
 
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