中国共産党はあす一日、創立八十周年を迎える。一九二一年七月二十三日、上海で第一回大会を開き、結党宣言をしたとき、党員は全国でたった五十三人だった。それがいま、六千五百万の党員を抱える史上最大の政党になり、十三億国民を率いて「富強」への道をひた走っている。
中国に革命を起こし、社会主義国家を建設した毛沢東、改革開放路線で経済を飛躍させた
小平、それを継承しながら、新たな発展を目指しているのが江沢民氏である。これら三代の指導者が、数々の内外の試練を乗り越え、今日の安定と繁栄を築いてきたことに対し、敬意と同時に懸念も表明せざるを得ない。
中国が経済発展し軍事力を増強する中で、愛国主義を強調する傾向を強めている。それは教科書問題や台湾問題での対日姿勢だけでなく、米中間の摩擦にも反映している。その背景には、中国共産党が国民の不満、不信を、愛国主義の高揚で覆い、指導体制の安定・維持を図っていることがある。
一九八九年六月の天安門事件後登場した江沢民政権は、事件に教訓を得て、改革開放を進める一方で、民主化要求を圧殺し、政治改革は封印してきた。社会主義下での市場経済はさまざまな矛盾、問題を生み、国民の不満が広がっている。中でも体制的矛盾というべきものが、党官僚の腐敗の深刻化である。党政が一体化した中で、党官僚に権限が集中しているためで、国民の党不信の最大の要因になっている。
天安門事件前も、腐敗問題への国民の批判は厳しく、当時の趙紫陽総書記は党政分離に着手、また報道に監視機能を発揮させるため新聞法の制定を考えていた。しかし江沢民総書記には、そうした改革を実施する考えは見えない。総書記はあす行う記念演説でも、党の偉大な歴史を強調し、一致団結に愛国主義を訴えるという。中国指導部が二〇〇八年五輪の北京招致に全力を挙げているのもこのためだろう。
秋にはアジア太平洋経済協力会議(APEC)上海会合も控える中国に望むのは、偏狭な愛国主義ではなく、より開かれ国際的常識を受け入れる国になることだ。そのためにも、政治改革を進め、民主化を図って国内の不信、不満の解消に努めるよう願う。
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