中国の海洋調査船が「日本の海」で自由に調査活動を実施する季節が今年もやってきた。中国調査船は毎年四月から十一月にかけて沖縄県尖閣諸島や先島諸島周辺で調査を行っている。この時期は海上が穏やかで調査活動に適しているからだ。今月十六日以降、宮古島南東の排他的経済水域で堂々と調査を実施している。
今回も、中国船は数回にわたる海上保安庁の問い合わせを無視した。昨年は四月から十一月の期間中に十五隻の中国船が侵入、九月には領海侵犯までしている。今年も、おそらく多数の中国船が「日本の海」であるこの海域に入り込み、まるでわが庭であるかのように調査を続けることが予想されている。
中国船が日本政府の設定した「日中中間線」を越えて日本側海域に頻繁に出没するようになったのは九〇年代に入ってからだ。最初は密輸船や海賊船であり、近年は海洋調査船である。今やこの海域の「日本の海」は「中国の海」と化したと言っていいだろう。
この事態を政府はどのように見ているのであろうか。「経済水域内の資源調査は事前の許可が必要」だが、「科学調査であれば、公海上であり自由」というのが政府の見解だ。中国船の調査内容が資源調査か科学調査であるのかが判然とせず、「対応が難しい」(海上保安庁)という。観測機器が似ていることもあるが、中国側が日本側の呼びかけに応じず、調査内容を説明しないことがその主な理由だろう。
日本政府の方針は調査内容が資源調査と判明するまでは中国政府に対して明確な外交措置は取らないというものらしい。「外交上トラブルを生じる懸念のある行動は好ましくない」(外務省中国課)という紳士の姿勢を貫いている。一般的な人間関係であるならば、このような姿勢もまた好ましい。
だが、ことは主権に係わる極めて重要な問題である。中国船が日本側の問い合わせを無視し続け、「日本の海」で密かに活動内容を拡大していったら、どうするのか。日本の主権的権利が及ぶ沖縄海域で日本の主権が半ば侵されるような事態が起きつつあるという当然の認識が政府には欠如している。
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