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2004/01/13 読売新聞朝刊
[社説]改革開放25年 経済大国に成長した中国の責任
 
 中国が改革・開放路線を歩み始めた二十五年前、誰が今日のような目覚ましい経済発展を予想しただろうか。
 一九六〇年代から七〇年代にかけて、十年間続いた文化大革命によって、中国は周辺諸国から経済的に大きく立ち遅れた。
 ところが、この四半世紀、年平均9%を超える高度成長を遂げ、今や国内総生産(GDP)は、世界第六位である。昨年も8.5%前後の成長を達成したとされる。英仏を追い抜くのは、時間の問題といえよう。
 経済大国化は、改革・開放の「光」の部分だ。「陰」の部分も小さくない。
 中国経済は、多額の不良債権を抱える金融機関、国際競争力をなくした国有企業、積極財政策で生じた巨額の財政赤字といった問題に直面している。
 しかも、驚異的な経済発展の裏側で、所得格差、地域格差が拡大し、独裁を続ける共産党幹部の腐敗はますます深刻化している。所得の伸びない農民やリストラされた失業者らは、腐敗への不満を募らせている。
 中長期的にみれば、不足する水や食糧やエネルギーをいかに確保するかという難問も解決しなければならない。
 一昨年秋の共産党大会で発足した胡錦濤指導部は、経済発展至上主義的な従来の方針を修正し、調和のとれた発展をめざす姿勢を打ち出している。改革・開放の負の側面が、もはや放置できないまでに重くのしかかっているからだろう。
 中国の経済発展は、海外からの直接投資に大きく依存しており、輸出入に占める外資系企業の比率は五割を超える。石油などの資源も、輸入に頼る割合が増えている。
 さらなる発展のためには、周辺諸国との良好な関係が不可欠である。そのためもあって、中国はこのところ、地域の平和と安定に寄与する「責任大国」であると、しきりに強調している。
 だが、経済大国化した中国は、周辺諸国の間に警戒心や不安感、そして、「中国脅威論」ももたらした。
 その背景には、中国が軍事費を毎年二桁(けた)の伸びで増大させ、核やミサイルの近代化など、軍事力を増強し続けているという現実がある。
 中国に求められているのは、よりいっそうの国際協調的な姿勢だ。それが脅威論を除去することにもつながる。その意味で、北朝鮮の核廃棄に向けた仲介外交が試金石といえよう。
 さらに、閉鎖的な体質を改め、よりわかりやすい存在とならねばならない。それは地域の大国としての責任である。
 
 
 
 
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