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2004/02/23 読売新聞朝刊
[社説]人民元 中国、緩やかな切り上げが望ましい
 
 中国政府・人民銀行が、人民元の固定為替相場制度の見直しに、動き始めた。
 温家宝首相は、政府の関係幹部を集めた金融改革会議で、為替相場制度を段階的に改めていく方針を示した。人民銀行の周小川総裁も幹部会議で、今年の主要課題として為替相場制度の改善を掲げている。
 一九九〇年代半ば以降の世界的な景気低迷の中で、中国は高い成長を維持してきた。今や、国内総生産で世界六位、輸入総額では三位を占め、世界経済の牽引(けんいん)車としての存在感を高めている。
 人民元の割安相場が続き、対外不均衡が広がれば、貿易摩擦も強まるなど、世界経済の不安定要因が増す。
 政府・人民銀行が、元切り上げにつながる為替相場制度の見直しに踏み出したのは、中国経済のみならず、世界経済の発展にとっても適切である。
 人民元の対ドル相場は、過去十年にわたって一ドル=八元台に事実上、固定され続けた結果、年8%前後の成長を続ける中国経済の実力からみて20%から40%も割安になっている、と言われる。
 欧米や日本は、元安による安値輸出で貿易黒字を増やしている、と批判してきた。秋の大統領選挙を控えた米国では、産業界からも、中国に切り上げ圧力をかけるように求める声が強まっている。
 中国の通貨当局が元相場を現水準に固定するため、巨額の人民元売り・ドル買い市場介入を続けたため、通貨供給量が急増し、大都市で地価高騰など資産インフレが起き始めている。固定相場を見直すことは、中国がインフレの拡大を抑え安定成長を続けるためにも必要だ。
 見直しの具体的な方向は、明らかにされていないが、将来の変動相場制への移行を視野に、変動幅を徐々に広げ、緩やかな切り上げを図るのが現実的、というのが日米通貨関係者の大方の見方だ。
 国営銀行が巨額の不良債権を抱え、国内金融市場の整備も不十分な現段階で、急激に切り上げるのは、内外の投機的な動きをかき立て、金融市場ばかりか、中国経済そのものを混乱させかねない。
 当面は、不良債権処理や市場整備を加速して“抵抗力”を強めつつ、緩やかに切り上げていくのが、望ましい。
 中国通貨当局は、為替相場制度の見直しについて、月内にも米国と専門家会合をもつ予定だが、日本の協力にも期待しているという。
 日本は、七〇年代初めの米国の金・ドル交換停止を機に、固定相場制度から変動相場制度に比較的円滑に移行させた経験をもつ。中国の為替相場制度の見直しにも、その経験が役立つはずだ。
 
 
 
 
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