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2001/10/03 毎日新聞朝刊
[社説]中国WTO加盟 日本版USTR検討の時
 
 世界貿易機関(WTO)の多国間作業部会が先ごろ、中国の加盟を決めた議定書を承認した。続いて台湾の加盟も認めた。11月にカタールのドーハで開催される閣僚理事会で正式決定され、年明けにも加盟となる。これで、世界の主要国はロシアを除き、すべてWTOの枠組みに入る。
 世界的に2国間や地域内での自由貿易協定(FTA)の締結が活発化し、多角的な貿易自由化の枠組み強化への熱意がさめている。そうした時、中国の加盟はWTOの機能を再評価する好機である。WTOとして初めてとなる一括貿易交渉(新ラウンド)開始にもつなげていくべきだ。
 中国はいまや、繊維製品や家電製品を中心に「世界の工場」となりつつある。米国にとっては最大の貿易赤字国である。また、中国からの輸出を巡る紛争も世界で多発している。このような国がWTOの外にいることに問題が多かった。加盟で紛争処理はWTOの場が舞台になる。
 日本も1960年代に貿易・資本自由化に取り組んだ。当初、競争力の低下が危惧(きぐ)されたが、結果的には、競争力を高めることになった。いまの中国も同じような状況にあるだろう。海外からの直接投資は技術水準、生産水準を高めることになるとともに、技術開発も進む。成長拡大要因になることは間違いない。
 当然、日本や米国との競争は激化する。貿易摩擦も増えるだろう。日中間では現在、ネギ、生シイタケ、いぐさの3品目について緊急輸入制限(セーフガード)が暫定発動されている。タオルについても繊維セーフガードの発動が検討されている。いずれも、稚拙な通商体制の結果だ。今後、摩擦はハイテク製品にまで及ぶことは想像に難くない。
 そこで、問題になるのは、日本の貿易交渉が品目や分野別に関係官庁が担当することが基本になっていることだ。コメの輸入自由化や対米自動車摩擦、半導体摩擦などで示されたように、日本の経済全体を考えた交渉にはなっていなかった。これまでの米国との交渉も厳しいものであったが、中国はさらに手ごわい。
 今後とも、日中は経済面でも共存共栄していかなければならないが、摩擦は増えることはあっても、減ることはないだろう。それも広範囲に及ぶことは確実だ。中国以外の国についても日本がWTOの場で争うことは多くなる。なかでも、もののみならず、サービスや知的財産権にからむ紛争が増加するとみられる。
 そこで、米国の通商代表部(USTR)に似た通商交渉を一元的に行う機関を検討する時期にきているのではないか。縦割り行政の弊害を除去するとともに、通商協議を総合的に統括することも可能になる。
 大競争時代に突入したいま、一義的には、日本の企業の経営力や研究開発力が試されているが、政府も競争を自らの問題として考える必要がある。中国のWTO加盟がその絶好の機会になる。
 
 
 
 
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