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2001/10/02 毎日新聞朝刊
[社説]中国共産党 国民政党への初めの一歩
 
 中国共産党が、階級政党から国民政党への転換を図っている。党内の守旧派は強く反発しているが、中国の民主化にとっては必要な一歩である。来年の第16回党大会での党規約改正が期待される。
 中国共産党は、先ごろ閉幕した中央委員会総会(6中全会)で、江沢民総書記の「三つの代表」論を、今後の共産党のありかたを示す重要な理論であると確認した。党規約改正の布石といわれる。
 現行の党規約では、中国共産党は「中国労働者階級の前衛であり、各民族人民の利益の忠実な代表」とされている。
 これに対して、江総書記は、共産党が「先進的生産力」「先進的文化」「幅広い人民大衆の利益」の三つを代表する、とする。
 中国でも「先進的生産力」「先進的文化」の担い手は、「労働者階級」から、改革開放政策が生み出した私営企業家、都市の中産階層、知識人に多様化している。
 「三つの代表」論の狙いは、彼らを共産党の基盤に組み込もうということだ。党の階級性を薄めて、多様性を強める。当然、資本家の入党を認めるような共産党があるか、という拒否反応もある。
 日本共産党も昨年、「日本の労働者階級の前衛政党」という党規約の表現を「日本の労働者階級の党であると同時に、日本国民の党」と改めている。
 80年代以降、故トウ小平氏の指導のもとで行われた中国の改革政策は「わかれ道に来ると、『左』の方向指示器を出しながら『右』に曲がる」といわれた。
 トウ氏は、「社会主義初級段階」論や「社会主義市場経済」論など、「社会主義」という「左」の方向指示器を出しつつ、計画経済から市場経済へ、大胆に右ハンドルを切った。
 しかし政治改革の歩みは遅れた。社会主義とは、プロレタリア階級の独裁であるという理論が、一党独裁体制を合理化した。その結果、権力を独占する共産党員の汚職腐敗が進行した。高い地位にある党員の大型汚職が相次ぎ、党の威信は地に落ちた。6中全会では、巨額の収賄で雲南省の省長とアモイ市の党書記を除名した。
 「三つの代表」論は、共産党の活路を支持基盤の多様化に求めた。だが、私営企業家が入党しても、一党独裁という基本の体制が変わらない限り、新たな腐敗が生まれるだけだ。
 89年の天安門事件では、共産党以外の政党の存在を認めるよう民主化要求が噴き出した。武力で抑えつけたが、社会の内部にたまった火種は消えていない。世界貿易機関(WTO)に加盟して、中国のルールを世界の標準に合わせるようになれば、国内の民主化要求も高まる。
 江総書記は「三つの代表」論で党改革に着手したが、来年の党大会で引退するといわれている。一党独裁の放棄という歴史的な決断を下すかどうかは、次の党指導部の課題になるだろう。問題は、トウ氏のように大胆な指導者がこれから出るかである。
 
 
 
 
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