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2001/06/21 毎日新聞朝刊
[社説]日中貿易摩擦 ネギのツケは高くついた
 
 案じた通りの展開になった。中国産のネギ、生シイタケ、イグサ(畳表)に対して日本政府が一般セーフガード(緊急輸入制限)を暫定発動したら、中国政府は、日本製の自動車、携帯電話、空調機の3品目に特別関税をかけると決定した。
 セーフガードを発動すれば、中国がどう出るかは、昨年、韓国と中国のニンニク戦争ですでに答えが出ている。
 韓国が、安い中国産ニンニクの流入に音を上げて高関税をかけた。中国は携帯電話とポリエチレンの輸入を全面禁止した。韓国製品のなかでも特に競争力の高い2品目を選んだのは、韓国製品を巨大な中国市場から締め出すぞという象徴的な意味がある。
 韓国は耐えきれず、結局ニンニクの関税を下げた。中国の勝ちだった。韓国は、市場で消化しきれないニンニクを携帯電話メーカーに引き取らせ、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)向けの支援物資に回したという。
 中国が対日報復に自動車など3品目を選んだのも、日本の工業製品の象徴だからである。さらに踏み込んでくれば二の矢、三の矢として、自動車部品や鋼板を取り上げるかもしれない。このまま日中貿易摩擦をこじらせていって、日本に勝算はあるのか。
 幸い、日本のセーフガードは200日間の暫定措置である。できるだけ早く、日本側は農産物3品目について、本発動を回避するための着地点を示すよう努力すべきである。
 8月になったら、小泉純一郎首相の靖国神社参拝によって、日中関係は悪化する可能性がある。政治問題とからんでしまったら、経済摩擦の解決はきわめて難しくなることも頭に入れておかなければならない。
 セーフガードに対する報復は、世界貿易機関(WTO)のルールでは認められていない。だが、中国はまだ加盟していないのだから、その主張を押しつけることはできない。
 そもそもセーフガードは、自由貿易という日本のめざす価値観に基本的にそぐわない。むやみに抜いてはならない伝家の宝刀を抜くなら、中国がWTOに加盟して、共通の土俵ができてからのほうが賢明だった。
 しかも、中国産ネギ、イグサの種子は日本が輸出したものだ。中国の安い土地、労働力を使って育て、日本が輸入している。日本が輸出した部品を使った安い家電製品や衣料品を輸入しているのと、同じ構造である。
 3年前、長雨で野菜が不作になり、都会の立ち食いソバ屋から薬味のネギがなくなった。その時、緊急輸入でしのいだではないか。ネギだけではない。日本の農業全体が、すでにグローバリズムの波をかぶっている。それに耐える構造改革を迫られている。
 今回の日中貿易摩擦は、日本側が先手をとった。だが、ネギなどの開発輸入は、本質的には日本自身にはねかえってくる。日本が解決の道筋を示すべきだ。
 
 
 
 
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