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コメディカル学生・教員等感想文
解剖学実習を終えて
日本工学院専門学校理学療法学科 安西加奈子
 
 はじめに、私達の為に献体してくださった方々と御遺族の皆様に心から厚く御礼申し上げます。
 私は、解剖学実習に参加させていただけることになってから、とても期待に胸を膨らませていました。学校で人体が解剖されている状態で見学をしたことがあるのですが、実際に自分で解剖をするのは初めてだったからです。4日間という短い期間なので、その日その日きちんと目的を持って、何が見たいのか、何が知りたいのかをこれまで学んできたことと予習をすることで明確にし、御遺体に対し失礼のないように多くのことを知ろうと意気込んで実習に臨みました。
 剖出した筋や神経が教科書と同じ位置にあったときは非常に感動し、教科書とは違った位置にある血管や神経、筋のつき方には御遺体特有のもので、その個体差を見つけたときは嬉しさを覚えました。これらの感動は一生忘れられない知識になると感じています。
 また、医療現場における協調性の大切さを学ぶことができました。最初はぎこちなく黙々と作業を進めることが多かったのですが、徐々にお互い助け合いながら一つのことに集中し、皆で人間の体の神秘に感動しながら実習をスムーズに行うことができました。
 座学や教科書を読んでいただけでは学べない多くのことを、この実習を通して、また御遺体を通して学ぶことができました。これらのことを、これから医療分野の学問を学んでいくときや理学療法士になったときに活かしていき、故人が与えてくれた様々なことを無駄にしないような生き方をしようと強く思いました。
 最後に、解剖学実習という貴重な機会を与えてくださった故人のご冥福をお祈り申し上げます。本当にありがとうございました。
 
日本工学院専門学校理学療法学科 糸川朋江
 
 明日から人体解剖実習が始まる。
 私が人を解剖する。私が解剖してよいのだろうか?献体に提供してくださったかたの希望にこたえることができるだろうか・・・。実習1日前、私は極度の緊張状態に陥っていた。このようなことを1日考えながら実習当日がきた。ご遺体と対面。ご遺体の顔を見ると思いのほか前日のような緊張や不安が消え去った。きっとこの方の人柄のせいだろう。4日間はあっというまに過ぎ、私にとってとても充実した日々であった。
 今まで教科書で平面的に勉強してきたものが自分の中で立体的にイメージがわくようになった。実際に膝関節、前腕の筋や神経、脳を見たときは、感動の一言だった。これだけたくさんの筋や神経、靭帯が協力しあって歩行や食事、整容動作を行っていること、またそれを統合している脳。これだけのものが合わさって人は生きているということ。その他、数多くのことを私は今回の実習で学んだ。
 また、ご遺体と対面してから、私の中で生と死について強く考えるようになった。ご遺体はどのような人生を送ってきたのだろうか。またどのような気持ちで献体への希望を出したのだろうか。その家族は?私は、将来自分の体を今後の医学の発展を思って献体に提供することができるだろうか。ご遺体の強い勇気、決心に心から尊敬の念を抱く。
 そして、たった一言、私はご遺体さんに、ありがとうと感謝の言葉を心から伝えたい。
 私に、素晴らしい経験をさせて頂いてありがとうございました。
 
感想
日本工学院専門学校理学療法学科 内川智博
 
 今回、学生ながら実際に御遺体を解剖させていただく機会を頂き、まことにありがとうございました。今回の実習を通して普段我々が教科書から学んで理解していた解剖学と実際の身体の造りのギャップや教科書ではわからない部分を学ぶことができ、大変貴重な体験となりました。今後は今回の実習において学んだ知識と学校で習う勉強とをつなぎ合わせ、臨床の現場に出た際に活用できるよう頑張りたいと思っています。
 また、今回我々は学校の代表として解剖実習に参加させていただきましたが、今回実習に参加できなくて、参加したいと思っている人も多かったようなので今後また同じように解剖実習があれば参加させていただきたいです。また、今回は4日間という短い期間で全身の神経、筋、血管を観察させていただきましたが、参加していたほとんどの方が解剖は初めての経験であったため作業も思うように進まず、少し実習に慣れてきたと思ったら実習が終了してしまい、実習期間がもう少し長ければという思いもありました。ですが、今回の実習では普段の学生生活では接しない他の学校の教員の方やOTの学生や医学部の学生の方と知り合い、交流を持つことができ、貴重な体験となりました。他職種の方や自分が目指している職種の先輩である教員の方から今後自分が経験する臨床実習や臨床の現場のことを聞き、勉強になりましたし、今後の勉強や臨床実習への良い励みになりました。
 最後に、解剖学の知識はどの医療職種にとっても重要であるため、来年、再来年とこの解剖学実習が続き、より多くの学生、現職者の方が解剖学の知識を整理し、より理解を深める機会が増えればと思います。私もまた次の機会があれば今回の実習で観察しきれなかった部分や今回観察できなかった中枢神経系なども観察したいと思っています。
 
石川県立看護大学 大河幸恵
 
 「解剖学」、「解剖学実習」は看護学生がよく耳にし、そして一度は体験することである。私は編入学生という状況から、今回二度目の解剖学実習をすることが出来た。解剖学実習を終えて思うことは、二度目の実習において、臨床経験もあるということから、他の1年生に比べて捉え方や臨む姿勢に違いが生じていたのではないかということである。その違いとは、献体された皆様が献体を決意された理由、闘病生活のご苦労と悲しみ、そして身内を亡くされたご家族の痛嘆を看護師の経験に依拠し、深く理解申し上げたということである。
 解剖学実習は一度だけでなく、看護職に就いている時も必要であると痛感している。何故なら1年生という、看護学を始めて間もない段階で学ぶということには限界があるからである。これは不必要であるということでは全くなく、この段階で学んだことを基礎にして看護を学び、看護職として歩み、そこでもう一度解剖学実習に参加し、人体構造を再確認する必要があるということなのである。病院に限らず、臨床では常に様々な問題や疑問が生じており、看護師の技術においても同様のことが言える。常に患者・家族に細心の注意を払い、安全で確実な処置・心理ケアを行わなければならないにも関わらず、ヒューマンエラー・インシデントといった危険を背後に抱えて勤務している。そこで看護師に二度目の解剖学実習を取り入れたとする。実習によって、これらの危険が完全に防止されるとは言えないが、一つの重要極まる策として、その必要性を主張したい。
 例えば、筋肉注射や静脈採血において神経損傷という危険が伴うが、解剖学書を見て理解したとしても、その危機感は実物を見て実感するのとでは明らかに違う。しかし、そこで数年前の学生時代の実習を思い出そうとしても、記憶や当時の視点には限界があるだろう。そうかといって、また観察させて頂きたいと思い、最寄りの医学部に行って見学することも考えられないことである。これらの状況から考えると、最近の病院で多く取り入れられている新人研修などという、就職後の学習の場に解剖学実習を取り入れることは有意義であると言える。このように考えたのも、二度目の実習をさせて頂けたからであり、二度目の解剖学実習の有意義さを実感している。
 ご献体やご遺族の意思を察し、感謝し、更なる学びへの努力をお約束すると共に、ご教授頂いた先生方、医学部生に感謝申し上げます。
 
東都リハビリテーション学院 鬼澤鮎美
 
 見学の前にビデオをみせていただきました。献体についてのビデオで、献体を希望される方の気持ちや考え方、ご家族の気持ちを知り、解剖学実習とは何かと考えました。学院長の先生からはご遺体を前にして絶対失礼な態度のないように注意も受けていました。ビデオで献体を希望される方々の「死んでも今までお世話になった医療のために、最後まで役に立ちたい」という気持ちを聞いて、その方々の気持ちに応えるためには、私達は敬意をもって見学に臨まなければいけないと思いました。見学が始まった時はただご遺体を見ることしかできませんでした。それは勉強不足ということです。その時、せっかくこのような機会をつくっていただいたのに、献体してくださった方に申し訳ないと思いました。予習・復習をして見学に臨むことが、本当の敬意ということだと気付きました。それからは、しっかり予習・復習をしてから見学実習に臨んだことにより、筋の部位・起始・停止や機能がわかってきました。また、人体は人によって違いがあるということを改めて理解しました。教科書だけでは学べないことをたくさん教えていただきました。先輩達がもう一度見学実習をしたい、と話していることの意味がよくわかりました。
 今回私達のために、解剖学見学実習という機会をつくってくださった、ご献体の方々、日本歯科大学の先生方、学院長先生にお礼を申し上げます。特にご献体の方々には心から感謝いたします。理学療法士になるために、今回学んだこと、感じたことを忘れずに勉強に努めたいと思います。







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