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解剖学への招待

 事業名 篤志献体の普及啓発
 団体名 日本篤志献体協会 注目度注目度5


解剖実習を終えて
九州大学医学部 松隈祐太
 
 10月から始まった系統解剖学実習も終わりに近づいている。振り返ってみると、10月からの4ヶ月余りはこれまでの大学生活の中で最も密度の濃い時間であったと思うし、これから先の学生生活、また医者になってからもこのように新鮮味のある時間はなかなか来ないと思う。
 10月15日の実習ガイダンス、ご遺体清拭の前日の夜は、医者になった従兄弟や友人と電話で様々なことを語った。明日からの実習を自分がやり遂げられるのか、遅れずにできるだろうかと不安も多かった。しかし翌日、献体をなされた方のご遺族のインタビュー等をまじえたビデオを見てから、自分の悩み、不安というものが自分本位のものであったことに気付かされた。2年生になって解剖実習のことが段々気になり始めたが、自分が医学生だから解剖実習をする、という思いから始まっていたように思える。けれども、解剖学実習というのは、献体された方々がいて初めて成立することは全く考えていなかったのである。そのことに気付いてから、解剖というのは、ある意味、ご遺体と共に行っていると思い始めた。そして自分が解剖を始める前に持っていた悩み、不安というものも解剖をさせていただいているという気持ちになるにつれ、無くなっていった。
 全35回の解剖をさせていただいて、ご遺体から様々なことを学んだ。途中きつくもあったが、献体された方のご意志に反することの無いよう、自分なりに誠意を持って取り組もうと努力した。本当に、献体して下さった方々とご遺族の方々には、感謝の気持ちでいっぱいだ。
 
〜解剖学実習を終えて〜
神戸大学医学部 松本佳子
 
 四月初旬、桜花の下、私達の解剖学実習がスタートしました。昨年はほとんどが六甲台校舎での一般教養の勉強ということで、今年からが私達が医学生としての勉強の始まりです。まず最初に未熟な私達にご遺体を提供して頂いたご本人様、そしてご家族の皆様にお礼を申し上げたいと思います。私達の勉強はご遺体なしには進めないものです。皆様の私達に対する思いを考えると、どれだけ頑張ってもまだまだ足りなく感じました。私達も精一杯勉強させて頂いたと申し上げられると思います。この真摯な気持ちを忘れることなく、頑張っていこうと心に堅く誓っております。
 実習が始まる前は不安やその他諸々の心配でいっぱいでしたが、実習を無事終えることが私達医学生にとっての第一関門であり、またこの解剖学実習が生と死の狭間を日常とする医師への第一歩だと気合いを入れてその日が来るのを待ちかまえていました。不安感を減らす為に実習書を何度も読んでみたり、先輩のお話を伺ったりもしました。
 そして実習が始まりました。黙祷から始まり初めてご遺体にご対面した時、それまであった不安や心配は姿を消しました。私がすべき事は心配ではなく、今この場で吸収できること全てを自分の物にすることだと気づくことが出来たのです。体の構造にしても教科書を使った学習だけでは見ると聞くとでは大違いと申しますか、やはりご遺体を通して見ることによって真の理解を得ることが出来るのです。
 実習は四人一班で行われるので、個人の努力の上のチームワークが必要となってきます。我が班のメンバーはそれぞれの個性をもって色々な場面に対処していきました。私達の力が及ばず作業が思うように進まない時でも、四人共が緊張の糸を切らせずにやり遂げることが出来たのは誇るべき事だと思います。
 実習の日々はあっという間に過ぎ、納棺の日が来ました。ご遺体を御棺に入れる際には、ご遺体の生前の生活に触れることが出来ました。献体という尊い志を持って亡くなられ、我が班が担当させて頂いたことに御縁を感じました。この方へのご恩をどうすればお返しできるかと自問自答致しました。それはこのご恩を忘れずに、月並みな言葉ではありますが「一生懸命頑張る」ということしかありません。班のメンバー全員がご遺体に感謝の黙祷を捧げると共に、この誓いを堅くしました。
 文末となってしまいましたが、未熟な私達を見守ってくださった先生方とスタッフの方々、本当にありがとうございました。
 最後にもう一度、皆様に厚くお礼を申し上げます。
 
防衛医科大学校 三木博美
 
 解剖学実習は医学生にとって精神的に一つの転換点になるという点で他の実習とは性格を異にしているように私は感じました。私は今でも解剖学実習の初日の事をはっきり覚えています。一人一人おじいさんおばあさんが運ばれていく様子です。この方達が何を期待して、私達医学生に体を預けられたのか、その事を思うと、身の縮む思いがしました。
 実際に解剖学実習が始まるとそれまで本や授業で学んだだけの白黒の知識が様々な色彩を帯びはじめ、実習時間はあっと言う間に過ぎ去りました。解剖学実習では自分なりの映像が多く心に残っています。私が解剖させていただいたご遺体は大変見やすく、他の班が四苦八苦している部分もよく観察することができました。毎回、実習を始める前と終えた後に黙祷しましたが、自然と心に浮かぶのは「今日もお願いします」という言葉と「今日もありがとうございました」という言葉でした。ご遺体には多くの事を学ばせて頂いたと思います。必ずしも教科書通りではないことや、個人によって動脈の走行や筋肉など様々なバリエーションがあるのだということも知りました。様々なバリエーションを持ちつつも同じように一個の生命体として活動できる人間の不思議さも感じました。
 最後になりましたが納棺式のときの事です。献体された方のご家族からのお手紙を読みました。胸が熱くなりました。自分はもっと学べたのではないかと自問自答しました。実習で学べたことをこれからの勉強にいかに生かしていくか、それが今の自分の課題であると思います。全ての経験を糧として、これからも精進していきたいと思います。
 
徳島大学医学部 宮井優
 
 百聞は一見にしかず。解剖実習中によく思い出したことわざです。どんなに優れた参考書も分かりやすい講義も、解剖実習で得た知識には到底及びません。あの様な貴重な体験、勉強をさせていただいた事に、深く感謝しています。
 解剖実習以来、あの様な貴い勉強をさせてもらい、貴い志を肌で感じ、自分はそれを受けうる資格があるのだろうか、と心の葛藤が毎日続きます。以前の私は、「自分が様々な人の支えがあってはじめて一人前の医師になれるのだ」という意識が希薄だったと思います。ですから、医学の勉強も、あるレベルさえ超えていれば、あとは自分が興味あるだけ勉強するという自己満足的なものでした。けれど、解剖実習中、自分はこの様な尊厳ある意志に支えられて医師になっていくのだと痛感し、畏敬の念と、自分の医学を進む事への認識の甘さを感じ、何度かその重さに泣きそうになりました。
 今でも心の葛藤は続いていますし、これからも医師になっても続くと思います。でもこの葛藤が自分を医師へと育てていくものとかみしめています。
 献体してくださった方々の志を受けついでいけるよう、これからも頑張ります。
 
金沢大学医学部 宮本由紀子
 
 高度臨床解剖学実習(以下、臨床解剖学実習)に出席して、今年の4月から6月に行ったプライマリーコースの解剖学実習とは異なった視点から人体を改めて観察することが出来た。このプライマリーコースの実習では、人体の正常構造を理解するために、解剖学実習マニュアルに従って人体の形態物を剖出し、その形態と他の構造物との位置関係と機能的役割などを学んだ。今回の臨床解剖学実習における人体構造の剖出ステップは臨床医学そのものであった。この教育には解剖学教室及び脳外科学の教官も出席し、解剖学教授の総合管理の下、臨床医学者が解剖学実習室において、臨床治療としての命最優先の手術的剖出による人体構造の奥底を学生に教えてくれることを目的としている。
 教育の実際において、脊柱の椎孔の狭窄患者を想定し、椎骨突起を除去する高度の剖出(手術)実習が行われた。この講義・実習に出席された先輩の先生達は、臨床解剖学実習総合指導者である超優秀な先生からの経験豊かな教えを受けながら、目標構造物や周囲構造に致命的な損傷を与えることを防止しつつ、本当にしっかりとした術式に従って剖出を行い、その過程と結果を私達に教えてくれた。私達学生は生命安全を絶対的に優先するためには、高度技術の修得がどれほど重要であるかということを強く教えて貰った。それと同時に、プライマリーコースの実習で学んだ人体構造の一つ一つが有する意義の大きさを改めて実感した。
 今回の臨床解剖学実習には全国から多くの先生が出席された。臨床解剖学実習の総合的指導者の先生は、私達学生にも解り易いように手術方法を別途に教えて下さった。私達からは遥かに先輩であられる臨床の先生方も、命を最優先とする臨床医学と医療行為のあり方を技術面と精神面から教えてくれた。臨床解剖学実習によって、人体構造をしっかりと学ぶことの重要性を教えられ、献体者への感謝の念を一層強く抱くようになった。
 
東京歯科大学 本吉真人
 
 解剖実習から多くのことを学び、そして多くの疑問を感じました。解剖学はもちろんのこと、命のこと、生きるということ。「目の前にあるご遺体は以前、命があり生活をしていた」。このことが解剖実習の間ずっと僕の頭から離れませんでした。剖出が進み、生活に必要だった筋肉や臓器が僕たちによって剥ぎ取られていく。「この筋肉を取ってしまったらこの人はもう立てなくなってしまう」。ご遺体はもう目を開けることがないし、起き上がることはないとわかっていながらも、心を痛めずにはいられませんでした。
 僕は2年になり解剖を出来ることが楽しみでした。神秘的な人間の筋肉・心臓・内臓・骨など、ずっと見てみたいと思っていました。ぼくにとって解剖の授業は未知の世界とも言える興味的なものでした。教科書や専門書などでは人体の構造が綿密に計算されたかのように的確に配置された生きるために重要な役割を果たすものでした。今思えば、解剖実習の始まる前まではご遺体を解剖の勉強の道具としてしか考えていなかったのかもしれません。しかし、そんな気持ちは一気に吹っ飛んでしまいました。ご遺体は意識がないだけで、以前は生きて生活していたことをありありと物語っていたのです。彼はとても痩せていましたが、それでも骨格はしっかりとしたものでした。亡くなる間際まで、必死に生きていたことも物言わぬ中から伝わってきました。
 この経験を僕は一生忘れないと思います。そしてこれを活かし今後の勉学に励んでいきたいと思います。最後となりましたが、献体をして頂きました方々への感謝と、そしてご冥福を祈念し感謝の意を申し述べたいと思います。ありがとうございました。







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更新日: 2019年8月10日

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