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解剖学への招待

 事業名 篤志献体の普及啓発
 団体名 日本篤志献体協会 注目度注目度5


解剖実習を終えて
富山医科薬科大学 田中紗代
 
 毎日の解剖実習の中で、私は人体の精巧さに幾度となく驚かされ、今でも実習中に感じた事をよく思い出します。例えば、人体には繊細かつ強靭で柔軟な構造が備わっているのを実感した時の言葉にならないほどの感動や、自分で勉強した際に頭の中で描いていたものと全く異なった形態で解剖された臓器を目の当たりにした時の驚き、そしてそのような感動や驚きを私に与えてくださった、献体された方々への感謝の気持ちなどです。
 解剖実習を進めていくにつれて、この臓器はどのような血管や神経と関係しているのだろう、などと好奇心でいっぱいになりましたが、御遺体は常に私に答えを与えてくださり、私の人体に対する興味はとどまることを知りませんでした。作業がてまどったりしたために、さらに詳しく解剖をしておきたかったところが不十分のまま終わったこともありましたが、私の人生においていままでで最も充実した2ヶ月であり、そしておそらくこれからの人生においても本当に有意義な2ヶ月になったであろうと思います。
 実習では私達が将来、臨床や基礎の場で働いていく上で必要不可欠な知識を得る事ができました。一つの臓器に関してみても、その位置や大きさ、形態、血管や神経の分布や走行など複雑かつ巧妙な構造を目の当たりにできたことを本当に感謝しています。人体のあらゆる器官はあるべくしてそこにあり、すべての器官は統合して働き、生命を維持しているという事は大きな驚きでした。
 このような貴重な体験は医学部や歯学部に入学したものにしか許されず、その機会に恵まれた自分はなんと幸運なのであろうかと感謝せずにはいられませんでした。医師を志すものとしてだけではなく、一人の人間としてのこれからの人生において、今回の解剖実習がたいへん貴重な糧となることはまちがいないでしょう。
 解剖実習が終わりに近づいた際、このように多くの感動や知識を与えてくれた御遺体の方々が、天国から私をみて、「この学生に自分の解剖をさせてよかった」と思われるような人間、そして医者になろう、と決意を新たにしました。
 最後になりましたが、解剖実習中には未熟な私達学生を指導してくださった教授をはじめとする先生方とスタッフの皆様の存在がなければ成り立ちませんでした。この場を借りて御礼申し上げます。また、最後に改めて御遺体とその御家族の皆様に厚く御礼申し上げます。
 
滋賀医科大学 田中伸孟・辻子祥子・中川徹也
 
 はじめに、医の道を学ぶ私達の為に、その御遺体を献体して下さった故人の尊い御遺志と、献体に際しご理解とご協力を賜りました御遺族の皆様に、この場を借りて深く御礼申し上げたいと思います。
 解剖学とはそもそも、人の体の構造を事細かに観察し探求していく学問であり、人体と向き合う医学にとっては、なくてはならない、基礎となる分野であります。その知識を得るためだけならば、教科書に書いてあることを覚えれば十分であろうと考える方もおられるかもしれません。ではなぜ私たちは、実習として、尊いご遺体を実際に解剖させて頂くのでしょう。それは、教科書の知識を目や手で確認し、生きた知識とするためであり、そしてそれ以上に「いのち」を肌で感じるためであると私は考えます。
 医師とは、病気に立ち向かっていく職業なのではなく、「いのち」と向き合う職業だと思います。ではその「いのち」とはいったいなんなのか、それは決して教科書には書いていないことであり、誰が教えてくれるものでもありません。私達が、様々な経験をすることによって自ら答えを見つけなければならないことです。解剖実習においてご遺体を解剖させて頂いたことは、その答えを見つけるための最高の経験となったことは言うまでもありません。そして改めて、このような貴重な経験をする機会を得ることができたのは、故人や御遺族の尊いご理解とご決意があったからだということに思いが至るたびに、言葉に表せないほどの感謝の思いがこみ上げてまいります。そして、この尊い御遺志に報いるためにも、「いのち」と向き合える立派な医師になれるように日々精進していこうと、改めて心に強く思いました。
 最後になりましたが、御献体下さいました故人、ならびに御遺族の皆様に、今一度心からの御礼を申し上げます。そして故人のご冥福を、心よりお祈り申し上げております。本当にありがとうございました。
 
自治医科大学 田中宏典
 
 昨年11月から始まり、約半年間行ってきた解剖学実習が、先週終了しました。日々の実習は毎日内容が濃く、勉強も大変で、振り返ってみると長いようで、実際にはあっという間に過ぎた半年間でした。
 
 自治医大に入学してまだ1年も経たないうちから解剖学が始まり、ああ本当に医学部に来たんだなあと実感しました。早期から専門の勉強が出来ることに喜びを感じていました。しかしこの解剖学実習というものは実際にご遺体さんの体を使わせていただくため、実習の前から、絶対に安易な気持ちで取り組んではいけない、と自分に対し強く意識するようにしていました。実習を始めるにあたり、最初は興味・好奇心と同時に、実際にご遺体さんを目の前にすることに対する恐怖心のようなものがありました。「早く本物の体の中を見てみたい。でもご遺体を見て自分は倒れないだろうか。それ以前に、自分は献体していただいたご遺体さんを解剖させていただく心構えができているだろうか・・・」。
 
 実習第1日目の前日の夜、僕は母親に電話をかけました。僕は、明日から解剖学実習が始まるということ、それに対し自分が緊張していることを話しました。僕の話を聞いた母から、解剖させていただくご遺体を自分の親だと思って解剖するようにと言われました。前に「献体について」のプレゼンで聞いた言葉と同じ言葉だったのですが、実際に自分の母親から聞くと心にズシンと響くものがありました。受話器の向こうでいつものように明るく応援の言葉をかけてくれる普段の母の口調とは何だか違った気がしました。「明日から解剖させていただくご遺体さんは自分の親だ」と思うと、それまで感じていたよりも真剣に実習を行わなければという緊張感が一層増していきました。
 
 実習が進んでいくにしたがって、最初のころに感じていた恐怖感がなくなり、だんだんと気持ちは楽な状態で実習を行うことができるようになりました。何度か観察すべきものが思うように剖出できず、夜遅くまで実習室にこもっていたこともありました。夕食を取らずに遅くまで実習を続けるのは体力的・精神的にも大変で、「もしかしてこれがずっと続くのか?もっと楽にならないのか・・・」などと弱音を吐いたこともありました。実習が進み、徐々に「慣れ」のようなものを感じましたが、自分では常に「初めてご遺体さんを目の前にした時の気持ちを忘れるな・・・」と自分に言い聞かせるよう心掛けました。先生もおっしゃっていた通り、ご遺体さんが途中で「もの」になってしまわないように、この体は僕たちのために提供していただいた献体さんなのだということをいつも意識していたつもりです。
 
 冬休み前、心臓と肺を摘出する実習の時でした。血管を切断し、心臓を取り出す作業を行ったのですが、僕は摘出した心臓を両手にのせた時に、そのまま呆然としてしまい何も考えられなくなってしまった時がありました。何だか無気力になり、言い知れない虚無感に襲われた感じでした。人間が生きていくためにまず必要な心臓という臓器が、今こうして自分の両手の上にあるという奇妙な現実が信じられませんでした。このご遺体さんのこの心臓も、ほんの数年、数ヶ月前まではしっかり活動していたんだ・・・。そう思うとぽうっとしてしまいました。その後の解剖においても、頭蓋底の観察時や、頭頚部離断、顔面折半時など、何度も不思議な気分になることがありました。目の前には頭の無いご遺体が横たわっており、腹腔はからっぽで、傍らでは半分になった頭部を持ち神経や血管を探しているあの光景・・・。通常の人が見て動揺しないはずはない光景でした。そして僕たちも数ヶ月前まではこんなことは信じられなかったはずです。その光景を見慣れてしまった自分に、何とか「最初の頃のあの気持ちを忘れるな・・・」と言い聞かせて頑張りました。実習が進み解剖が深部・細部に至るにつれて、ご遺体さんの姿が最初の頃からは想像できないような容姿になっていってしまい、「こんな姿はご家族には見せられない・・・」と思いました。
 ご家族の方、そしてご本人は大切なお体を僕たち医学生の勉強のために提供して下さいました。僕たちがご家族の方、ご遺体さんにしてあげられることは何か。ここまで僕たちのためにして下さっているのだから・・・。僕たちへのご家族の方、ご本人の思いに報いるためには、ただ感謝の気持ちを送るだけではなく、しっかり勉強して将来の医療に貢献できるような立派な医師にならなければなりません。僕たち学生の勉強のためにご遺体を提供していただいたのですが、少しの勉強だけで満足することなく、頑張って勉強していかなければと思いました。より良い医療を実現するための第一歩は、僕たち学生が精一杯勉強して、豊富な知識を持った医師になることだと思います。今回の解剖学実習を通じて、医学的な解剖学の知識はもちろんですが、それだけではなく、僕たちがこれから勉強し続けていかなければならない理由についても学ばせていただいた気がします。実習と並行して自分なりに勉強してきたつもりですが、今振り返ってみるとまだ頑張れた気がします。今回の実習を通して自分が納得、満足出来なかった点を反省し、もっと勉学に励んでいかなければと思いました。
 
 最後になってしまいましたが、大切なお体を提供して下さった方々、ご家族の皆様へ、心からの感謝の気持ちを送らせていただきます。皆様のご意思に報いることができるよう、これからも日々勉学に励み、将来立派な医師として社会に貢献できるよう頑張ります。本当にどうもありがとうございました。







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更新日: 2019年8月10日

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