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解剖学への招待

 事業名 篤志献体の普及啓発
 団体名 日本篤志献体協会 注目度注目度5


『無題』
大阪歯科大学 国分麻佑
 
 人体解剖学実習との関わりは、思えば昨年の五月十五日に行われた慰霊祭から始まっていたのだと思います。遺族の方々とはお話する機会こそありませんでしたが、焼香の列に並ぶ遺族の方々を見たとき、夏休みが明け九月になると私自身がこの人達の肉親を解剖することになる、と思うと、「精一杯頑張ります。大事に扱います」と何か言葉をおかけしたい気持ちになったことを覚えています。諏訪先生が実習中に何度となくおっしやったように、自分の肉親を、見も知らぬ若い学生の手に委ね、解剖実習への献体として送り出すことは、どれだけの決心であったかと思います。やはり、そこには大阪歯科大学のこれからの学問的な発展への期待と、何よりも先生方や学生への信頼が遺族の方たちの心にあったのだと思います。それならば、学生である私はせめて自分自身、献体から学べる事を学び、生きた人の体を扱う職業に将来つく者の責任として、それまでの私には想像もできなかったような大きな学問に立ち向かう決意を新たにしました。九月から始まった解剖実習については、本当に一言では言い尽くせません。初日、友人たちと少し緊張しながら白衣の背中のマジックテープを止め合いました。友人の一人は、私が遺体を前にして怖気づくと心配したのか、私の背中を叩き、「落ち着いてよ」と声をかけてくれました。私は自分自身気づかないながらもやはり今までにない体験への緊張や不安、それと少しの期待があったのだと思います。実習室へ入ると、薬品の独特な匂いがし、これが解剖の匂いか・・・と変に感心してしまいました。実習台の上には大きな、ちょうど人の大きさの白い袋がのっており、目を奪われました。その後、同じ班の人たちとご遺体の前に並び、黙祷をし、いよいよ実習が始まりました。私が思っていたよりも、解剖でのご遺体の扱いは注意のいる作業で、メスの入れ方や表皮剥離の時に深く入れすぎないようにと神経を使いました。解剖実習を進めていくうちに、人の体というものはどこをとっても無駄というものがなく、何らかの目的があり、然るべきところに存在しているのだという思いが日増しに強くなりました。特に私が興味を持ったのは、歯科領域に関連のあるところでした。私はよく、父や母の診療所に行っていました。口腔外科の手術を横で見ていて、まるで解剖のような雰囲気を感じ、血管や神経の走行や支配領域のことや、その運動様式を詳しく理解していなければ、とても患者さんの体を触ることができないと思ったからです。私にとっての解剖の意義は、将来歯科医師になるための土台の形成であり、また、人体に触れ、その内部まで知ることでさらにしっかりとした学問への意欲が身についたことだと言えます。実習中に、自分の班の遺体だけではなく、他の班の遺体を観察させていただいた事は、私にとって大変勉強になりました。人の体は一人一人特別なものであり、他の誰とも比べられない尊いものです。私は自分の人生できっとこの一度きりしかない貴重で忘れることの出来ない経験を4ヶ月にもわたりさせていただけたことを、とても有難く思っています。このような貴重な実習には、ご遺族の方々の御決心と、何よりも献体になってくださった方のお気持ちが欠かせなかったと思います。また、実習中、何度も方法に迷う私を助けて下さった解剖学講座の先生方、本当にありがとうございました。
 
鹿児島大学医学部 後藤愛子
 
 肉眼解剖実習は、私にとって試練であると同時に、解剖学を学ばせて頂ける喜びに満ちた三ヶ月でした。
 正直なところ、実習初日前夜、これから始まる実習に対する期待と不安、未知の世界へ足を踏み入れることへの恐怖で、私はなかなか眠りにつくことができず、悶々として朝を迎えました。
 ところが翌日、震える足を抑えつつ緊張しながら、班員と共に、ずしりと重い御遺体を受け取り、黙祷を終えて顔をあげた時、私の心はしんと静まり、はっきりと固まっていたのです。医学生として御遺体の前に立った以上、私は今から懸命に学び、ここで得た知識を将来社会に還元することで、少しでも献体して下さったこの方に対する恩に報いようと。
 解剖実習は、前日に予習してきた解剖学の教科書や実習書から得た知識をもとに、その日の範囲を御遺体で観察、剖出、同定させていただくことを中心として行われます。
 神経、筋肉、血管、骨の細部まで、この観察、剖出、同定を繰り返すことにより、教科書の2次元の平面的理解から3次元の立体的理解へ解剖学的知識を深めることができるのです。これは私にとって非常にありがたく、実際、自分の頭の中で、教科書的知識が立体として理解しなおされる度、感動を覚えました。
 初日から納棺の日まで、解剖学的知識に加えて、精神的な面でも、御遺体には本当に多くのことを教えていただきました。毎日の黙祷で考えることは、献体してくださった方の生前の日常や、きっと持っていらっしゃったであろう医学教育への熱い思い、また、日を追うごとに深くなる私達の感謝の気持ちでした。
 しかし、情けないことに、三ヶ月の実習の間、風邪や疲労のために初日の決意が実行に移されないことも幾度かあったことは否定できません。その度に、予習が十分ではなかったり、集中力を維持できなかった私を支え、力を与えてくれたのは、初日から共に学び、私を見守ってきてくれた友人達でした。
 彼らの支えがなければ、到底この長い実習を無事に終えることはできなかったことでしょう。互いを思いやり、常に探求心を失わない友人達に恵まれたことは、私の最高の喜びです。
 私が解剖実習で得たものは、解剖学的知識はもちろんのこと、医師を目指す者としての自覚とかけがえのない友人達でした。
 最後になりましたが、私達にとって非常に貴重かつ重要な、肉眼解剖実習に理解を示し、協力して下さった全ての方々に、心より御礼を申し上げます。
 
北海道医療大学 小堀有紀
 
 私は茨城県出身です。昨年のある授業の中で、日本で一番献体者の数(割合)が少ない県が、茨城県であると知り、はっとしました。何を隠そう、私も絶対に献体はしないと思っているうちの一人だったからです。献体だけでなく、臓器提供もしないつもりでした。私は、高校生の時には既に医療系へ進むことを考えていたので、大学生になったら解剖実習もやるのだろうな、と漠然と考えていました。それでも、恥ずかしいことに自分が献体をするという状況を考えることなど、全くなかったのです。授業の中では、茨城県の献体者が少ない理由として、地域性が挙げられていました。水戸藩の武士の身体を切り刻むなどけしからぬ、親から頂いた身体を粗末に扱っては失礼だ、という昔からの信念が今も残っているとのことでした。
 そうこうしているうちに解剖実習が始まり、献体者の気持ちについて考えることが多くなりました。この方はどうして見ず知らずの私たちに身体を提供してくれるのだろう。解剖されるのに、どうして自ら進んで献体しようと思ったのだろう。考えれば考えるほど分からなくなってきて、解剖をするたびに申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
 ある時、私がこの献体をして下さった方に対してできる御礼とは何なのだろう、と真剣に考えたとき、この身体をお借りして学ぶことだ、と気づいたのです。そして、その瞬間、私の中で気持ちがふっと楽になりました。献体者の気持ちを初めて理解することができたのです。この方々は、私たちのために、医療の発展のために献体をしたのだと。自分にはない価値観、世界観、献身的精神を持つこの方々に驚愕しました。
 私が今回の解剖実習で学んだことは、医学的なことは勿論ですが、倫理面でより大きかったように思います。献体をしようという決心まではいかなくても、一歩前へ進んでいる自分がいました。
 良い医師や歯科医師を育てるには、解剖実習が重要です。私たち学生の未来は、献体者の存在があって初めて成り立ってくるものです。献体をして下さった方々への感謝の意を込めて実習を行うと、歯科医師になるという責任感を自覚します。ただ椅子に座って知識を詰め込む授業だけでは決して得ることの出来ないものです。また倫理感について考える機会を与えていただきました。ありがとうございました。
 
奥羽大学歯学部 斉藤智英
 
 解剖学実習を終えて私が思うことは、私の中で確実に人間そして生命というものに対する認識が変わったことです。体を動かす、物を食べる、考える、あたり前だと思っていた様々な行為に筋肉や血管、神経などがいかに関与しているかを知るたびに大きな感動を覚えました。新しい知識が増えてゆくごとに、自分が今生きている事、勉強している事は本当にすばらしいことなんだと痛感しました。このように考えたりできるようになったのは私達に自分の体を提供して下さった方々のおかげです。私達学生に進んで自分の体を預けてくださったその行為に本当に頭の下がる思いで一杯です。もちろん御遺体ですから何もおっしゃらないのですが、体で色々教えていただきました。
 解剖学実習は細部までそして内部まで理解する為に行うことであって、最初は自分のしていることが本当につらくて、バランスを失った事もありました。その頃はただただ恐い、つらい、嫌だという気持ちでした。しかしどこで変わったとは言えないのですが、気持ちが学ぼうとする方向に変わっていきました。そして実習の度に、果たして自分は自分を献体できるかと考えました。そして臓器提供や白血病の為のドナーなど、様々な医療の現実についても考える様になりました。ある意味病気の人の為に自分の体を提供する事のみを私は素晴らしいと考えていた部分がありました。うまく言葉では表現できませんが、篤志家の方々の行為は本当にすごい事なんだと思います。解剖をする事で志の尊厳と厳粛さ、矛盾する様ですが生の素晴らしさとを同時に学びました。篤志家の方々の厚意、想いにこたえられるように人間として正しい行為のできる歯科医師になって恩返しをしたいと想います。本当にありがとうございました。







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更新日: 2019年8月10日

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