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第IV章
アンケート調査結果
《施設運営法人の重度身体障害者グループホーム設立意向調査》
 全国の身体障害の援助に関係している施設運営法人(全施設1049施設)を対象に平成16年10月、郵送によるアンケート調査を実施しました。
 434施設より回答がありました。(回収率41%)
 回収率の施設種別による内訳は以下の通りです。( )内は送付した施設数です。
 
・身体障害者更生施設(入所・通所) 43施設(85) 50.5%
・身体障害者授産施設(入所・通所) 183施設(428) 42.7%
・身体障害者療護施設 179施設(410) 43.6%
・身体障害者小規模授産施設 16施設(70) 22.8%
・身体障害者福祉ホーム 13施設(56) 23.2%
 
1. 現在、あなたの施設では重度身体障害者(身体障害者手帳1〜2級)が利用できるグループホームを運営していますか。
(1)重度身体障害者が利用できるグループホームを運営している。
 重度身体障害者が利用できるグループホームを運営している施設は、434施設中18施設(4.1%)でした。18施設を運営している法人は17法人で、合計29グループホームの運営をしています。
 
(2)重度身体障害者が利用できるグループホームを運営していない。
 重度身体障害者が利用できるグループホームを運営していない施設は、434施設中416施設(95.9%)でした。
 
(3)重度身体障害者が利用できるグループホームは運営していないが、その前の宿泊訓練として地域生活移行事業等を行っている。
 434施設中104施設(23.9%)が宿泊訓練などを実施していた。
 その内容として以下の通りです。
(1)宿泊訓練 44施設
(2)キャンプ 8施設
(3)旅行 44施設
(4)生活体験実習 43施設
(5)その他 20施設
・レスパイト
・短期入所
・自立訓練
・宿泊訓練自宅で実施
・ショッピング
・社会適応訓練
・屋外リハビリ
・地域交流ハウス
・地域移行モデル事業
※複数回答可
 
(4)重度の身体障害者が利用できるグループホームは、どの利用制度によって運営していますか。
(1)国の制度 8施設(8ホーム)(※知的障害者グループホーム制度を利用)
(2)県の制度 6施設(10ホーム)
(3)区市町村の制度 3施設(10ホーム)
(4)その他 1施設(1ホーム)
法人独自の事業
 
【グループホームの運営状況と運営施設種別内訳】
 
 回答のあった施設のうち、「重度身体障害者が利用できるグループホームを運営している」と答えた施設は18施設であり、全施設(434施設)の4%と大変少なく、ホーム数で見ると29のグループホームが回答しています。
 
表1. 重度身体障害者が利用できるグループホームを運営していると回答した18施設のバックアップについて、種別分類しています。
 
表1 重度身体障害者が利用できるグループホームを運営している施設の種別
施設種別 バックアップ施設数
身体障害者更生施設(入所・通所) 2施設(11%)
身体障害者授産施設(入所・通所) 13施設(72.5%)
身体障害者療護施設 1施設(5.5%)
身体障害者小規模授産施設 1施設(5.5%)
身体障害者福祉ホーム 1施設(5.5%)
 
 授産施設(入所・通所)と更生施設(入所・通所)で全運営施設の80%以上を占めていて、併せて19のグループホームを持っています。
 
表2. 1施設が運営している重度身体障害者が利用できるグループホーム数を示しています。
 
表2 1施設が運営している重度身体障害者が利用できるグループホーム数
運営ホーム数 バックアップ施設数
1か所 12施設(67%)
2か所 3施設(17%)
3か所 2施設(11%)
4か所 0施設
5か所 1施設(5%)
 
 複数のグループホームをバックアップしている施設は全部で6施設あります。そのうち、1か所だけをバックアップしている施設が全体の70%を占めます。
 複数のグループホームをバックアップしている施設は全体の30%で、県や市等で独自の事業として身体障害者グループホーム制度がある大阪府や横浜市の施設運営法人が運営しています。
 
 回答のあった29の重度身体障害者が利用できるグループホームを利用制度別にみると、国の制度によるもの8か所(27.6%)県の制度によるもの10か所(34.5%)区市町村の制度によるもの10か所(34.5%)その他1か所(3.4%)となっています。
 
表3. 重度身体障害者が利用できるグループホームの運営状況を施設種別に見たもの
 
表3 重度身体障害者が利用できるグループホームの運営状況を施設種別にした
単位:施設
施設種別 GHを運営している 地域生活移行事業等の実施 GHを運営していない
身体障害者更生施設
(入所・通所)
2 14 41
身体障害者授産施設
(入所・通所)
13 56 170
身体障害者療護施設 1 26 178
身体障害者小規模
授産施設
1 8 15
身体障害者
福祉ホーム
1 2 12
18 104 416
 
 身体障害者授産施設(入所・通所)がバックアップ施設として13施設で最も多く、地域生活移行事業等の実施も他の施設よりも多く取り組んでいます。
 
2. 重度身体障害者が利用できるグループホームを作る計画がありますか。
表4. 重度身体障害者が利用できるグループホームを作る計画についての結果を示す
 
表4 重度身体障害者が利用できるグループホームを作る計画について結果
単位:施設
施設種別 具体的な計画がある 将来作りたい 作りたいが作るのは難しい 作る考えはない その他
身体障害者更生施設
(入所・通所)
1 15 8 12 2
身体障害者授産施設
(入所・通所)
1 92 32 41 7
身体障害者療護施設 5 89 28 41 6
身体障害者小規模
授産施設
1 12 2 1 0
身体障害者
福祉ホーム
1 5 3 4 0
9(2%) 213(49%) 73(17%) 99(23%) 15(3%)
 
 それぞれの項目について記載されたコメント、または実施困難の理由などは以下の通りです。
 
(1)具体的な計画がある。 9施設(2%)
(内容)
・滋賀県内 平成17年 1か所(モデル事業)
・鹿児島市 平成19年4月 1か所
・岐阜県内 平成20年度 1か所
・鳥取県内 平成17年 1か所
・福岡県内 平成17年 1か所
・東京都内 平成19年 1か所
 
(2)現在、具体的な計画はないが将来は作りたい。 213施設(49%)
 
(3)作りたいが作るのは難しい。 73施設(17%)
(理由)
・土地、建物の確保が資金的に難しい。
・現在の地価から考えると取得が困難。
・生活に便利な市街地、平地で建物を確保するのが難しい。
・住居を設定するときに、制度にあてはまる物件が賃貸ではなかなか見つからない。
・民間の建物でもバリアフリー化が進んでいないので、環境確保が難しい。
・バリアフリー住宅にするには費用がかかりすぎる。
・自己資金を法人が確保するのが難しい。
・法人独自では財政的に難しい。
・家主の理解が得られない。
・地域住民の理解が得られない。
・利用者家族の理解が得られない。
・国の制度にない。
・制度が確立されていないため、財政的に難しい。
・施設整備に対する補助金制度が十分でない。
・県立の施設のため、法的根拠がないと計画するのは難しい。
・社会福祉上の制度がないため、自治体の協力が得られない。
・介護、支援に必要な人的配置に相当した収入が期待できない。
・重度障害者の個別ニーズに対応できる職員配置ができない。
・世話人の複数配置が必要な場合、夜間の支援体制の人員確保が難しい。
・施設職員の賃金水準が低水準に置かれる可能性が大きく、人材確保育成が困難
・施設の所有地が田舎のため、地域生活移行が困難。
・バックアップ施設が市街地から離れていて、協力体制が不都合なため。
・単独設置では、医療機関との連携が困難。
・小規模療護施設(特養併設)のため、これ以上の新規事業は困難。
・地域的に利用者がいるかどうかはわからない。就労の場の確保が必要となると一層難しい。
 
(4)作ることは考えていない。 99施設(23%)
(理由)
・需要がない
・統廃合により、施設がなくなるから
・建設に関わる予算的問題
・金銭的余裕がない。
・施設の運営で現在は手一杯
・施設運営が難しくなるため
・利用者の負担が大きすぎる可能性がある。
・現在、福祉ホームを重心の人でも利用可能にしているため。
・現状では重度の人が少なく、法人にビジョンとして考えていない。
・障害が重度すぎて医療的ケアが中心となるため。その体制の見通しがつかない。
・重度身体障害者のグループホームに対するノウハウがない。
・現在のグループホームでは介護サービスの安定供給することは困難であるため。
・国の制度がなく、運営するための経済的基盤がない。
・制度がないせいもあるが、具体的なニーズの確認ができない。
・現在の施設運営でも、入退出者の問題で経営が難しい状況。新たな事業は考えられない。
 
(5)その他 15施設(3%)
(内容)
・ホームヘルプ、医療機関とのネットワークが確保できるか否かによって建設は左右される。
・身体障害者福祉ホームを検討中のため。
 
※無回答25施設(6%)
 
 「具体的な計画がある」と「現在、具体的な計画はないが将来は作りたい。」を合わせると全体の50%を占め、重度身体障害者が利用できるグループホームの建設・運営に前向きな姿勢を持っている施設が多いようです。
 その一方で、「作りたいが作るのは難しい」と重度身体障害者が利用できるグループホームの建設・運営に難しいと思う施設が17%ありました。その理由としては、土地、建物の確保の問題、費用の問題、法的問題、バックアップ体制が整わないなどのソフト面の不備、また人件費補助の要求などソフト、ハードの両面から運営の困難さが述べられています。
 「作ることは考えていない」と回答した施設は23%ありました。その理由をみると、金銭的、予算的余裕がないこと、施設運営が難しくなるため、国の制度がなく、運営するための経済的基盤がないなど、身体障害者のグループホームに対する具体的なニーズの確認ができ、制度が創設されれば解決されていくのではないかと思われます。







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