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3. 重度身体障害者が利用できるグループホームについての要望・ご意見(自由記述)
 重度身体障害者グループホーム制度の創設に向けて、要望や意見を自由記述の内容でいただきました。
 その内容は以下の通りです。
◇世話人に関すること
◇グループホームの建設・運営全般に関すること
◇重度の人への対応
◇バックアップ、ネットワークに関すること
◇就労に関すること
◇その他
 
◇世話人に関すること
・世話人は支援に慣れていないと支援される方も辛いので、慎重にボランティア体制を築くことが必要である。
・世話人の資質が利用者が住みよいホームであるか否かを左右するもので、職員の専門性が求められる。
・世話人の役割、立場があいまいなので、明確にすることが必要。
・365日24時間の支援が必要であり、労働時間雇用上の問題など、難しい条件はあるので、継続して安定した支援のできる世話人を確保できる補助制度が必要となる。
・グループホームの世話人は知的障害、精神障害の場合、特別な資格や技術は必要ないが、重度身体障害者が対象となると世話人にも相応の資格が求められる。
(介護福祉士、ホームヘルパー2級以上等)
 
◇グループホームの建設・運営全般に関すること
・重度身体障害者の場合の建物は、全てにおいてコストが高くなる。補助金等がないと自力で建設するのは難しい。
・重度身体障害者対象となると施設整備も大がかりとなり、新築せざるを得ない。その際、国庫等からの建設補助が望まれる。
・利用者が重度のため人手が多くかかる。ホームヘルパーの派遣等様々な制度を利用しないと運営が難しい。
・公有地の無償での貸与も必要と思う。
・国の法的福祉施策の対象外のため、知的障害者同様の法的援助がないと運営面で苦慮する。
・小規模の施設にとって24時間対応の世話人の勤務体制は困難である。
 
◇重度の人への対応
・現状のグループホーム事業において、問題である支援費の問題がある。(人件費など)重度身体障害者の場合、更なる職員体制が要する。
・世話人の24時間対応はもちろん、医師との連携が確保できるか。重度の方だけを対象とするのではなく、軽度の方も一緒に暮らす方がいろいろな面でプラスもあるのではないか。
・重度の人の対応にあたっては、介護に一定の専門性が求められる。
・重度の中には1〜2級という分類より、1人では移動できない人、世話人1人では物理的に介助が不可能な人がいる。そういった人を含めた利用可能になるようにしていただきたい。
・重度障害者が知己で生活するには、介助者が24時間必要だが、現行の制度ではそれが確保できるほどの人件費が補償されていない。運営に対して今後益々厳しくなっていく動きが見られるが、それらを補償するためにも制度の上乗せを望む。
 
◇バックアップ、ネットワークに関すること
・当法人では積極的な地域移行を展開しているが、バックアップ施設の支援だけでは選択肢が狭くなる。生まれ育った地域での生活を支えることが基本となるため、各市町村に展開している生活支援センターとリンクして、総合的な資源活用、相談、医療関係でのサポート等、幅広い地域支援システムの構築が必要であり、コーディネーターの役割が重要となる。
・自立支援援助センターが中心となり、地域ネットワークづくりができればよい。
・バックアップ施設もいざというとき助けにならないと困る。また、医療関係のバックアップも重要となる。
 
◇就労に関すること
・就労は希望があっても、身体障害者を受け入れてくれるところが少ない。
・就労できればよいが、困難な方が中心となるので日中活動の場の保障が大切である。
・重度の人にとって就労は困難であり、日中活動をしたり地域の人たちと交流するためのデイサービスや通所施設等も同時に整備されなければならない。
 
◇その他
・更生施設として身体障害者身体障害者グループホームが制度化されれば、利用者の選択肢が増えて喜ばしいことです。また、グループホームを希望する人も在籍しています。
・身体機能障害の程度が重度の場合、本人の障害程度に応じた住宅を探すのは難しく、公立住宅は戸数が少なく、民間である程度環境が整った住宅があったとしても、住宅改修に大家の了解を得られないことがあります。
 また、高次脳機能障害がある方(身体機能障害)の場合、住宅が探せても全くの単身生活においては、日常生活における安全確認や投薬確認等、一部不安がある場合が多く、単身での地域生活に課題があります。このような場合にグループホームが大いに有効と考えます。
・長野県では身体障害者の地域における自律生活支援として、県単独でグループホームに対する施設整備、運営費補助を予算化して事業推進をしている。
・東京都独自の重度身体障害者グループホームの年間補助金では不可能。
 利用者負担と従事する職員の努力によって支えているのが実情。
 国の制度として重度の方が利用可能な療護施設と同額かそれ以上の補助が必要。
・三障害のグループホームでも良いのではないか。
・身体障害者グループホームを支援費制度の対象とすること。
 身体障害者が知的障害者のグループホームを支援費で利用できるようにすること。
・身体障害者グループホームにおいては、先ず受け皿作りをしてからでないと難しいと思われます。在宅で無理だから施設にいるわけで、ホームヘルプサービス云々の前に、住む場所の確保が必要と考えます。
 
 横浜市においては、先駆的に独自のグループホーム事業をこれまで進めてきています。A型(運営委員会方式)B型(法人型)があり、大きな特徴は、障害の種別・程度を問わないことや運営委員会という任意団体が運営することです。
 今回は日々のグループホームの設置運営などから、下記項目の質問とグループホームの現状をA型・B型合わせた243ホームを対象にアンケート調査を実施いたしました。
 
1. グループホームをつくろうとした動機
【A型:運営委員会】
・入居者の家族が入居者の方が児童の頃から、「将来はグループホームへ」と考え、資金を貯めて行動していた。
・親亡き後のために将来に渡って安定した生活を送りたいと思いホームをつくった。
・作業所に通う親の要望があったため
・障害者地域作業所を15年前に立ち上げた。4〜5年するうちに一人で生活するのが困難な人たちが出はじめ必要にせまられて。
・自立を応援
・ご両親が亡くなり、施設入所予定だったが家に残ることを希望。その家をグループホームとして開放し、区内のグループホーム入居希望者と一緒に暮らす事となった。
・障害を持った子どもたちも、地域で暮らしていけるように。障害を持った子どもの自立を考えてグループホームでの生活を望んだ。
・当事者団体の研修に参加していた人たちが、グループホームで暮らしたいと思ったため
・横浜市立松風学園(知的障害者更生施設)の関係者が、学園利用者も地域の中で生活できないものかと考えた。
・作業所で両親が亡くなってしまい、兄弟で生活を過ごしてきたが、経済的、精神的にきついとすぐにでもグループホームに入りたいという声が多くあったので、作業所の職員有志とつくった。
・地域活動ホームの中で必要な人がいるということで、作っていく会が発足し、その中で入居希望者を募りホームができた。
・当事者の親たちが子どもたちにグループホームでの生活をさせてあげたいと願った。親たちの願いです。
・入居しているメンバーそれぞれに異なりますが、将来、自立した生活がしたいので、その第一歩として。
・今まで一人でアパートに住んでいた人が限界になったり、親が高齢者となり残された子どもが心配だと言う相談も多くあったのでつくった。
 
【B型:法人】
・施設に長く入居していたので、より自分たちらしい生活を作りたいと思ったこと
 また、障害として施設のような刺激の多い所より、グループホームになることでそれぞれの生活の安定を目指して
・山の中の施設に閉じこめることに反対だから世間と隔離してしまうと人間性を保つのが大変になるから
・法人の入所施設の利用者を地域で、自立した生活をさせるという法人の方針
・義務教育を終えて社会に出た人たちの多くがロックアウトされてしまう。
 このような状態を変えて行くには、支援者が側にいて就労を安定させていくことと生活、人生を楽しいものに提供したいという気持ちから
・入所施設ではプライバシー、プライベートが守られづらいことで、より人間らしい生活を送っていただくグループホームを立ち上げた。
 また、極力自立生活を目指していただき、障害を持った人でも地域生活が可能であることを世間に知ってもらうため
・利用者からプライバシーの確保された部屋に住みたいとの希望があった。
 利用者の自立のための通過点として、個々の個性に配慮した支援を行うためにもグループホームが必要だった。
・自立した生活の場づくり(家族の援助なしで)
・施設利用者家族から声があったので
・施設入所利用者の地域生活実現のため
・育児施設の入所者が年々、重度重複化多様化しており、進路先がなく家庭的に様々な境遇にて家庭復帰できないケースがほとんどのため
・在宅障害者が緊急一時などを利用しながら生活していましたが「施設ではなく町の中で暮らしたい」と言う思いを強く持たれていました。
 他にも施設入所中で同じような思いを持つ方が数名いたため、グループホーム勉強会を立ち上げ、グループホームを作ろうという動機に結びついた。
 
2. グループホームをたちあげる際の資金調達について
【A型:運営委員会】
・社会福祉協議会支援センター(現:在援協)の補助金の利用と保護者の自己負担金によって調整された。
・作業所の保護者が「支援する会」をつくり、その会費や各地で行われるバザーの収益金などで調達した。
・運営委員会と知り合いの大家さんが家を建ててくれた。
・市よりの補助金と寄付金
・入居する人が持っていたお金と立ち上げに関わった人のお金を使用
・学園利用者の保護者からの寄付
・準備をする会をつくり、バザーをしたり、チャリティコンサートをしたりして資金を調達した。
・親たちがバザーをしたり、テレフォンカードを作って販売したりした。また、入居者の親から敷金と負担金(10年償却)を預かった。
・入居者の親が分担して負担
・寄付と地域の方の内職などによるボランティア活動
・仮払金を運営委員会にて一時立替を行い、設立後返金した
 
【B型:法人】
・初度開設準備金として横浜市より出る
・法人持ち出し
・グループホームを不動産の紹介で大家が建てた。
・地権者と法人が相談して調達
・市の補助金を利用
・入居者の自己資金
・当グループ後援会費
 
3. グループホームをつくろうとする際のアドバイス
設立における留意点、運営における留意点など
 
【A型:運営委員会】
・色々なグループホームヘ見学に行って「多くを見る」方が良いと思う。
・設立にあたり地域の方への説明や以後の協力についてが重要となります。そして、すぐには理解は難しいと思いますが、時間が経つに連れて良い方向になると思います。(まわりの方々とのコミュニケーションが大事な要因)
 職員やメンバー(入居者)と一対一なので、それぞれの問題を定期的にチェックしていくようにしていただきたいと思う。
・3年後、5年後を考えながら準備をする。
 5年目の今、思うと常にお金と人(職員・入居者等)の問題がつきまとっている。
・4人の入居者では経済的にかなり難しいだろう。
 選択することができるかどうかは別として、頭数揃え的な仕方は後で苦労する。
 地元の人たちの理解を充分に得る。
・家の設計段階からしっかりと考える。
 毎日決められたチェックがある場合は、それをしっかりやる。
・4人の両親が共通の理解をもって、進めていかなければいけないと思う。
 良き理解者に恵まれること(良き理解者を探すこと)
 立地条件と良心的な不動産との出会いも大切
 入居者は同じ程度の障害であること、または年齢的にもあまり差がない方がよい。
・設立時には資金などを含め、細かい計画が必要だと思います。また、入居する人たちの相性も大切なので、何度も入居前に一緒に生活することを経験した上で、入居者を決めた方が良いと考えます。
 運営面では、人材の確保、運営費の不足など厳しい面が多く、個々の入居者に対する個別支援が問題になってくると思います。様々な場面を考えた上で、運営していく必要があると思います。
・利用者には障害の程度にかかわらず、ひとり一人独立した(浴室、洗面所、トイレ)部屋を用意できれば良い。
・グループホームの職員及びアルバイトをあらかじめ雇用できるならば、グループホームの研修をしたり、勉強会を数回にわたって行うこと。
 グループホームを始めてから、生活面で困ったときいろいろ対処できる。
・周りの意見だけでなく、本人が本当にグループホーム入居を希望しているのかどうかの確認をすること。
 公共交通機関などの利用にあたり、便利の良い土地を選択すること非常勤職員、アルバイト等の確保
・様々な好意があると思いますが、家屋賃貸に関して、しっかりと契約関係にすること。正式な入居前に入居者も職員も共に体験の機会があると望ましい。
・生活の場であるため障害者を良く理解している方がいい
・あくまでも入居者中心のホームであってほしい。小規模施設にならないように
 
【B型:法人】
・ハード面:入居者に合わせた設計をすること。
 職員:職員体制で毎日職員がかわらないこと
 サービス:余暇に対して理解ある職員であること
・ホーム利用者の人権を主と考えながら、援助者の人権及び余裕ある体制づくりが必要地域との関係づくり
・運営の安定しているグループホームに助言を求める、相談する。
・様々な生育歴の方、個性を持った方達が個室に入居できるとはいえ小さなグループでの団体生活になっています。ハード、ソフト両面で様々な配慮、支援が必要。
・助成金または支援金の動向が不安定なので、運営費のやりくりが大変
 入居者の日中活動の便や生活、安眠ができる環境を整えること
・地域の方の理解を充分にしていただいた上で建築場所の検討
 入居者・家族のグループホーム意識向上の準備会を充分行う
・母子分離を充分にすすめておくこと
 (Shot Stay体験、社会的体験など多く)
 エンパワーメントが重要
 経済的自立を図っていくこと
 若いうちのチャレンジが良い
・場所選びが大変重要
 通所のみを考えて場所を選ぶのではなく、生活をすることを考えて場所を選ぶ、そうしないと施設の様になってしまう。
・日中活動先の確保、また活動先との連携方法の確立
 入居者同士の相性が問題になることが多く、事前に考慮する必要があります。
・設立における留意点
 物件の確保
 なるべくグループホーム用として使えるために(間取りが適している)、設計段階から要望を出せるように、新築物件がほしい。
 不動産業や建築会社に間に入ってもらい交渉する方法もあります。
 財源の確保
 グループホームの助成金だけでは充分なものにはならないので、自己資金がどれぐらいあるかが大きな問題です。入居予定者にその財源を求めることはあまりしない方がいいようです。後でトラブルになる原因となる可能性があります。
・運営における留意点
 体験入居の実施
 入居予定者の方は、できれば入ろうとしているグループホームで体験入居することをお勧めします。その環境に合うか、他のメンバーと合うか、職員との相性はどうか見たほうが良い必要な人材をシュミレーションする。だいたい入居者が決まったら、その人にどんな支援が必要か、一日を追ってシュミレーションしてみます。朝は着替えから始まり、食事介助、通所付き添いなど、どの時間帯にどのくらいスタッフが必要になるかが出てきます。その人材と人件費の確保がグループホームだけでは難しい場合、個人つきのヘルパーを入れることも必要となってきます。







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