1.2.3 各種運転試験と改良設計
運転試験としては、3度の耐久試験と性能評価のために負荷試験、高温部品の温度を確認するために温度計測試験を実施した。後述のようにガスジェネレータモジュールと同じように滑り軸受化への改良設計を行い、作動確認試験で妥当性の確認を行った。ただし、第2回耐久試験までの運転試験は、転がり軸受によって実施した。
(1)負荷試験
平成14年度では、無負荷状態にて、パワータービンを定格回転数まで運転し、振動等の問題が発生しないことを確認した。平成15年度は負荷をかけた状態にて、定格回転数まで運転した。負荷試験時のパワータービン軸振動計測結果を図1.2-19に示す。振動レベルは、全回転数域にわたり問題の無いレベルであった。
パワータービンの負荷試験時の定格点性能を表1.2-2に示す。表に示すようにタービン効率は設計目標値を達成することができた。膨張比および流量が設計値より小さくなっているのは、ガスジェネレータタービンのスロート面積が少し広く、マッチング点が計画点よりずれているためである。
(2)メタル温度計測試験
ガス流路近傍に位置する高温部品の信頼性を確認するため、高温部の温度計測試験を実施し、高温部品のメタル温度は設計計画値以下となっていることがわかった。試験方法としては、熱電対での温度計測とともに示温塗料を塗布した部品(ブレード、ノズル、ディスク、シャフト等の主に高温部品)をエンジンに組み込み、定格負荷試験にて一定時間保持した後、分解し、示温塗料の変色の程度により部品のメタル温度を確認した。
(3)パワータービンの改良設計
パワータービン温度計測試験時に計測した、転がり軸受部内輪側のシャフト温度が設計計画値よりも高いことがわかった。このため、パワータービンの信頼性向上のため、軸受の滑り軸受化の検討を実施した。
一般に、転がり軸受では温度変化による軸受の半径方向隙間の管理が難しく、既に、ガスジェネレータについては、信頼性の向上を目的とし平成15年度に滑り軸受を採用している。前項にて実施した温度計測試験により、パワータービンの転がり軸受部内輪側のシャフト温度が設計計画値よりも高いことがわかったため、パワータービンについても急負荷変動等の色々な運転状況においても影響の受けにくい滑り軸受の採用について検討を実施した。
滑り軸受計画図を図1.2-20に示す。軸受は、ティルティングパッド式を採用し、NO.3軸受をジャーナル軸受とし、NO.4軸受をスラスト軸受とジャーナル軸受の一体型とした。軸受の変更に伴い、パワータービンシャフト、軸受周りのシール、ケーシング等の設計変更を実施した。パワータービンシャフト設計変更した際の、軸の固有振動および強度は、解析により確認した結果、転がり軸受用シャフトとほぼ同じであり問題ないと考えられる。参考に、シャフトの強度解析結果(転がり軸受用シャフトとの比較計算結果)を図1.2-21に示す。
さらに、転がり軸受から滑り軸受への変更に伴い、軸受への潤滑油量の増加に対応するため、軸受ケーシング及び給油及び排油系統の大容量化を図った。
(4)滑り軸受作動確認試験
平成16年度は、パワータービンを滑り軸受化するために軸受部品、シャフト、周辺構造部品の設計製作し、機械的健全性を確認するために作動確認試験を実施した。
パワータービン軸振動計測結果を図1.2-22に示す。実機では明確な振動のピークは現れず、かつ、回転数全域に渡って振動レベルが小さいことから、運転に支障が無いことが確認できた。NO.3及びNO.4軸受の軸受メタル温度計測結果を図1.2-23に示す。軸受メタル温度についても、許容値より十分低く問題ないことが確認できた。
(5)耐久試験
信頼性を確認するため、平成15年度は第1回耐久試験(項目3 参照)を実施した。耐久試験実施後、パワータービンを分解し、各部品の点検を実施した。静翼、ブレード、ディスク等特に異状は無かった。このため、同一部品を用いて再組立を行い(滑り軸受関連部品は除く)、平成16年3月中旬から6月中旬にかけて第2回、平成16年9月上旬から11月末にかけて第3回目の耐久試験を実施した。耐久試験完了後のパワータービンモジュール外観を図1.2-24に示す。
耐久試験後、パワータービンを全分解し、各部品の点検を実施した。分解時の第1段静翼および第1段タービンロータの写真を図1.2-25、図1.2-26に示すが、静翼、ブレード、ディスク等に異状は無かった。また、第2段静翼および第2段タービンロータの写真を図1.2-27、図1.2-28に示すが、第1段と同様各部品について異状は見られなかった。さらに、設計変更したNO.3、NO.4滑り軸受やシャフトについても異状は見られなかった。
以上により、パワータービンモジュールの信頼性を確認することができた。
表1.2-1 パワータービンの設計仕様
パラメータ |
設計仕様値 |
回転数(rpm) |
12,500 |
断熱効率(%) |
90.2 |
膨張比 |
2.7 |
段数 |
軸流2段 |
回転方向(注1) |
時計周り |
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図1.2-1 パワータービン流路子午面形状
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