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3.2 信頼性試験
 図3.2-1に示す日程で信頼性試験を実施した。
 
3.2.1 信頼性試験1(平成14年度)
 平成14年度はSMGT2の運転試験により、運転試験装置の作動確認と、ガスジェネレータモジュールはSMGTで実績があるため、特にパワータービンモジュールおよび熱交換器の作動確認と慣らし運転試験を実施した。
 
(1)着火・起動
 SMGTと同様、着火や起動については問題は無かった。
 
(2)振動
 運転試験により、機械的健全性について確認を行った。その一例として、図3.2-2にパワータービンロータの軸振動計測結果を示す。一次のピークはほとんど検出されず、二次は55%回転数で少しピークがでるが、振動レベルは小さい。それ以上100%回転数までは振動値はほぼ一定で全体のレベルは十分低く、運転に支障が無いことが確認できた。
 
(3)慣らし運転
 無負荷状態で以下の慣らし運転を行った。
・ほぼ無負荷のアイドル条件を2時間保って、ガスタービン本体および熱交換器、熱交換器空気配管や排気ダクト等に熱を加える慣らし運転を実施した。運転データを図3.2-3に示す。
・パワータービンの無負荷慣らし運転を実施し、パワータービンが機械的に100%回転数まで運転できることを確認した。運転データを図3.2-4に示す。
 
(4)点検
 排気ダクト部の目視点検や高温部のボアスコープ点検を行ったところ、特に異常は無かった。
 
3.2.2 信頼性試験2(平成15年度)
(1)ガスジェネレータロータのスラスト計測
 ガスジェネレータ軸受の滑り軸受への変更に先立ち、ガスジェネレータロータのスラスト計測を実施した。
 計測の結果、ガスジェネレータロータの発生するスラスト荷重はスラスト軸受の許容値を超えていることがわかった。スラスト荷重の低減対策としてインペラとNo.2軸受の間に設けているスラストバランサ部分等、各部の圧力バランスを調整した結果、スラスト荷重が軸受の許容値以下と低減できたことを確認した。運転中のスラスト荷重計測結果を図3.2-5に示す。
 
(2)吸気冷却システムの作動確認
 平成15年度は吸収式冷凍機、吸気冷却器および熱媒油ボイラを試験設備に設置し、吸気冷却システム全体の作動確認試験を実施した。試験の結果、各機器およびシステム全体として問題なく作動することを確認した。
 吸気冷却システムの性能確認試験は平成16年度の気温が高い時期を選んで実施した。結果は「2.1 吸気冷却システムの開発」で述べられている。
 
(3)滑り軸受仕様ガスジェネレータの作動確認
 軸受を滑り軸受に変更したガスジェネレータの機械的健全性について確認を行った。
 明確な振動のピークは現れず、かつ、回転数全域に渡って振動レベルは小さいことから、運転に支障が無いことが確認できた。運転中の軸振動計測結果を図3.2-6に示す。
 また、運転中の軸受メタル温度についても許容値より低く問題が無いことが確認できた。運転中の軸受メタル温度計測結果を図3.2-7に示す。
 
(4)制御調整試験
1)起動制御方式の実機検証と調整
 SMGT2のような2軸式ガスタービンの場合、起動完了までの昇速過程において、パワータービン回転数の制御への移行が必要になる。そこで、実機において無負荷定格回転までの起動試験を行った。結果を図3.2-8に示す。事前に実施したシミュレーションと同様の昇速過程を経て無負荷定格回転までの起動が行えることを確認した。
 また、起動制御関係の各種パラメータは事前にシミュレーションにて調整しており、シミュレーションモデルが実機の特性を比較的良く模擬できていたことから、実機による試験において、パラメータの再調整を行なう必要は生じなかった。
 
2)パワータービン回転数制御系の実機検証と調整
 SMGT2は2軸式ガスタービンであることから、実船搭載時における運用はパワータービン回転数の制御が主体となる。これまでパワータービン回転数の制御系についてはシミュレーションによる検証を実施してきたが、実機での検証を行うべく実証機による制御系調整と実証試験を行った。
 図3.2-9に実機試験結果を示す。パワータービン回転数が制御目標値に対して安定に制御され、しかも負荷の投入に対しても大きな変動なく制御されていることが確認できた。
 
(5)負荷試験・性能計測試験
 表3.2-1に定格性能試験結果を示す。熱効率は設計目標値を満足することができた。出力はわずかに目標値を下回っている。この理由はガスジェネレータタービンのスロート面積が若干広く、パワータービンのスロート面積が狭いため、設計目標に対して圧力比が低く、空気流量が少ない点で動作していることによる。今後、圧縮機特性に合わせて高圧力比、大流量側で動作するよう、ガスジェネレータタービンおよびパワータービンのスロート面積を調整することでマッチングの改善を図ることとした。その結果は、「3.2.3 信頼性試験3(平成16年度)」で述べている。
 
(6)第1回耐久試験
 第1回耐久試験としては主に回転数および負荷の大幅な変動に伴なう遠心応力、圧力、温度の大幅な変化によって生じる低サイクル疲労、熱疲労に対する耐久性を実証するためサイクル耐久試験を実施した。試験では「アイドル→負荷→アイドル」を1サイクルとした。また、一日の試験終了後にはエンジンを停止し、翌日の試験開始時は冷態起動として、温度の変動幅を大きく取るよう配慮した。
 第1回耐久試験後、パワーセクションおよび細管型熱交換器を試験装置より搬出し、分解点検を実施した。
 パワーセクション分解点検の結果、前述のようにパワータービンのころ軸受部内輪側の温度が計画よりも上昇していることがわかったが、その他は特に異状は無かった。
 細管型熱交換器についても前述のように分解点検の結果、空気側経路のフランジ部から微量な漏れが認められたが、それ以外は異状は見られず、煤の堆積も殆ど無かった。この結果、パワーセクションについては引き続き第2回目耐久試験に供試することとした。
 
(7)温度計測試験・プレートフィン型熱交換器作動確認試験
 滑り軸受の設計データ取得および高温部の温度計測を目的として、エンジン各部の温度計測試験を実施した。
 また、同時に熱交換器をプレートフィン型に換装し、熱交換器の作動確認を実施した。試験の結果、特に問題が無いことを確認できたので引き続き第2回耐久試験に供試することにした。
 
3.2.3 信頼性試験3(平成16年度)
(1)滑り軸受仕様パワータービンロータの作動確認
 軸受を転がり軸受から滑り軸受に変更したパワータービンロータの機械的健全性について確認を行なった。
 既に「第2章1.2パワータービンモジュールの設計・製作」で記述したように、回転数全域に渡って振動レベルは小さく、運転中の軸受メタル温度についても許容値を下回っており、問題が無いことを確認した。
 
(2)性能計測試験
 前述のように平成15年度に実施した性能計測試験では、ガスジェネレータタービンのスロート面積が若干広かったため、設計目標に対して圧力比が低く、空気流量が少ない点で動作しており、熱効率は目標値を満足することができたが、出力が僅かに目標値を下回る結果となった。
 そこで圧縮機特性に合わせて高圧力比、大流量側で動作する方向へとマッチングの改善を図るべく、ガスジェネレータタービン1段ノズルのスロート面積を狭くした部品を供試して性能計測試験を実施した。表3.2-2に定格性能試験結果を示す。熱効率、出力ともに設計目標値を満足することができた。
 
(3)耐久試験
 平成16年度は平成16年3月から継続して行った第2回耐久試験と第3回耐久試験を実施した。これにより、第1回耐久試験からの累計では、121回の起動回数、1,448サイクルの運転回数及び、1,000時間の負荷運転時間を達成した。表3.2-3に運転実績を示す
 そして、試験終了後、パワーセクションの分解点検を実施した結果、特に異状は見られず、機械的に健全であることを確認した。プレートフィン型熱交換器についても漏れ確認試験を実施し、エンジン性能に影響を及ぼす程の漏れは発生していないことを確認した。
 以上により、SMGT2の信頼性を確認することができた。
 
(3-1)第2回耐久試験
 エンジン部品については、第1回耐久試験後の分解点検の結果で特に異常は見られなかったため、引き続き同一の部品を供試した。熱交換器はプレートフィン型熱交換器を使用して、第2回耐久試験としてサイクル試験を開始した。
 第2回耐久試験は平成16年3月中旬から6月中旬にかけて実施し、68回の起動回数、600サイクルの運転回数及び、270時間の負荷運転時間を達成した。試験終了後、パワーセクションの分解点検を実施した結果、遠心圧縮機インペラの短翼に割れが確認された。その他の部品については特に異状は見られなかった。
 また、プレートフィン型熱交換器についても漏れ確認試験を実施し、エンジン性能に影響を及ぼす程の漏れは発生していないことを確認した。
 
(3-2)第3回耐久試験
 第2回耐久試験後の分解点検によって不具合が確認された遠心圧縮機インペラの不具合について対策を施し、第3回耐久試験に供試した。その他の部品については第2回耐久試験で使用したものを引き続き供試した。
 第3回耐久試験では、回転数及び負荷の大幅な変動に伴なう遠心応力、圧力、温度の大幅な変化によって生じる低サイクル疲労、熱疲労に対する耐久性を実証するためのサイクル耐久試験を実施しつつ、高温環境下における耐久性を実証するために負荷運転時間をこれまでに実施してきた耐久試験より長時間として、サイクル数及び累積負荷運転時間の双方を稼ぐことの出来る運転パターンとした。
 第3回耐久試験は平成16年9月上旬から11月末にかけて実施し、43回の起動回数、788サイクルの運転回数及び、705時間の負荷運転時間を実施した。試験終了後、パワーセクションの分解点検を実施した結果、特に異状は見られなかった。また、プレートフィン型熱交換器についても漏れ確認試験を実施し、エンジン性能に影響を及ぼす程の漏れは発生していないことを確認した。
 耐久試験後、そのままの部品で再組立を行い、引き続いて制御調整試験等の試験に供試した。
 
(4)実船搭載型減速機の作動確認
 耐久試験の終了後、主減速機を負荷遮断時のパワータービン軸オーバースピードを抑制するためのフライホイールを内蔵した形式に変更した。また、主減速機の交換に合わせて出力軸カップリングも万一のダイヤフラム破断時に対応するためバックアップギヤ付きとした形式に変更して作動確認試験を実施し、振幅レベルも小さく、運転には支障なく機械的に健全であることを確認した。
 
(5)制御調整試験
 急負荷遮断時の負荷追従制御調整試験を行った。
 図3-2-10、図3-2-11に、それぞれ出力軸回転数が90%における全負荷遮断の試験結果を示す。放風制御無しの場合(図3-2-10)には出力軸回転数の上昇が大きく長く持続しており、設定回転数に復帰するまでの時間も長い。この間は燃料を最小流量まで絞っていることから、再生器から回収される熱エネルギにより出力回転数が上昇させられていることがわかる。これに対し、放風制御有りの場合(図3-2-11)は出力軸回転数の上昇が小さく、速やかに設定回転数まで復帰していることがわかる。なお、放風制御無しの場合には出力軸回転数が危険回転数付近まで上昇してしまう恐れがあったので、放風制御有りの場合の1/3程度の負荷遮断速度で試験を行った。それにも係わらず、放風制御有りの場合には回転数上昇も小さく、比較的短時間で設定回転数まで復帰している。このことから、今回組み込んだ放風制御の有効性を実証することができた。
 定格回転数(出力軸回転数:100%)における全負荷遮断の試験結果を図3-2-12に示す。この場合には、放風制御無しではオーバースピードに対処できないことが予想されたので、放風制御有りの場合についてのみ試験を行った。試験結果に示されるように、定格回転数・全負荷遮断に対してもオーバースピードを回避し速やかに負荷追従できることが実証された。
 平成16年度は、推進用ガスタービンとして実船に搭載する上でもっとも重要な負荷追従機能について、陸上試験機による実証試験を行った。その結果、二軸再生式ガスタービンにとってもっとも条件の厳しい負荷変動である全負荷遮断について、オーバースピードを回避しながらも速やかに負荷追従できる制御方式を実証することができた。また、従来行ってきたシミュレーション計算結果と良く一致することが確認できた。これにより、SMGT2における主要制御機能について基本動作の検証が完了した。







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