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(2)T9918の概況
 T9918のベストトラックの経路と23、24日の9時の地上天気図を図2.7に示す。T9918は9月17日にフィリピンの東海上で発生し、19日9時に台風になり、南西海上付近を発達しながらゆっくり北上し、22日21時には中心気圧が930hPaまで低下した。24日6時には、中心気圧950hPaと強い勢力を保ったまま八代海を通過して熊本県北部に上陸した。その後、九州北部を通過して周防灘に抜け、24日9時に山口県に再上陸したときも中心気圧960hPaと依然として強い勢力を保っていた。
 
図2.7 T9918のベストトラック経路と9月22〜24日9時JSTの地上天気図
 
 
 
(3)洋上における計算値と衛星観測値の比較
 地形の影響が小さい洋上での推算値と衛星観測値の比較を行った。衛星観測値はQuickSCAT*2データを使用した。
 図2.8に高度10mにおける計算値と観測値のベクトル図(風速毎に色分け)と台風の中心地点と進行方向を示す。対象時刻は、計算値は9月22日18時JST、観測値は9月22日18時15〜18分JSTとした。計算は、対象が地形の影響の少ない洋上の台風のためMasconモデルは使用せず、2次元台風モデルのみを使用した。
 計算値における海上風の最大風速は、台風中心の南東に存在し、台風の中心付近では、最大風速地点と台風中心を結ぶ線に対して線対称の風速分布であった。一方、観測値における海上風の最大風速は、台風の前面に位置しており、衛星観測風から計算した平均台風と同様に非対称な構造を持っていた。
 これまでの推算手法では、このような非対称な構造を推算することはできない。したがって、T9918事例の海上風を推算するためには、非対象性を評価することのできる計算を行う必要があると考える。
 

*2 QuickSCAT
 マイクロ波散乱計SeaWindsを搭載し、1999年6月にNASAによって打ち上げられた衛星で、あらゆる天候下での観測が可能である。海上風ベクトルを風速精度2m/s、風向精度20°、観測幅1800km、水平分解能25kmで観測を行っている。2日で地球上の全海域の90%をカバーしている。







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