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5.11 第X委員会(溶接力学・破壊力学)
委員長 宮田 隆司
 
1. 委員長名, 各国よりの参加者の概要
委員長:Dr. M. Koçak(GKSS Research Center, Germany)
副委員長:Dr. Ch. Wiesner(TWI, UK)
参加者:オーストリア, フランス, ドイツ, イタリア, 日本, 中国, ロシア, スペイン, スロバキア, スウェーデン, 英国, 米国, などから約30名
 
2. 委員長の交代など主要なイベント
 特になし。
 
3. 全般的な論文発表の傾向および特記すべき技術論文の概要
3.1 本委員会
 ミスマッチ, 溶接残留応力・変形, 溶接部・熱影響部特性, 破壊安全性などに関する論文発表(全16件, 内, 日本から7件)が行われた。発表分野についてはここ数年の同様の傾向が続いている。
3.2 X-XIII-XV合同WG「溶接構造物の残留応力・変形予測(RSDP)」
 主査:Dr. J. J. Janosch(Caterpillar, France), Dr. P. Dong(Battelle, USA)
 ラウンドロビンテストPhase 2(配管突合せ継手三次元解析)の進捗状況報告, 残留応力Compendiumの作成状況についての報告, 各国(米国, フランス, 日本)の残留応力・変形に関するプロジェクトの状況報告とともに, 4件(内, 日本から3件)のテクニカルペーパーの発表があった。
 
4. 今後の主要な活動計画
 今後, 第X委員会として新たに取り扱う必要のあるテーマとして, 以下のような連携がKoçak委員長より提案され, 次回会合にて詳細議論することとなった。
 Structural Performance of Welded Multi-Material Structures
第III, 第V委員会との連携(プロセス)
第XV(デザイン)
第X, 第XIII, 第XVでの合同(Structural Performance強度評価)
第X(Avoidance of Fracture)の流れ
 
 溶接部の残留応力などは溶接部の亀裂発生から破壊に大きく影響する。この残留応力を完全になくすことは困難であり, 少しでも減少する技術が開発・研究されている。特に造船関連では, 亀裂の発生から破壊が生ずることは人命にかかわることであり, 破壊防止技術の開発が重要であり, 技術動向に注目された。
(望月正人 記)
 
委員長 樋口 洵
 
1. 委員長名及び各国からの参加状況
 Comm. XIの委員長は米国のWRC, MPC及びPVRCの代表者で日本にも馴染みの深いDr. Martin Pragerであり, 今回再選され向こう2年間継続する。参加国数はジョイントイベントがあり把握し切れなかった。参加人員はセッションにより25〜40人であった。
 
2. 主要イベント
 初日の午前にComm. Vとジョイントでミニシンポジウムを開催し, その後, 月〜水の午後日別に3セッションに別けて議事進行した。ミニシンポジウム及び3セッションのタイトルを以下に示す。
(1)ミニシンポジウム「最近のパイプラインのインライン検査」
(2)補修, リスク, パイプライン及び先進的設計規格
(3)クリープ, 疲労及び圧力負荷に対する先進的設計
(4)溶接施工, 溶接性, 熱処理に関する特別な設計の問題
 
3. 論文の技術的分野の傾向と動向
 ジョイントミニシンポジウムヘのComm. XIからの投稿を含めると今回は全体で28件の発表があり, 昨年の17件に比べて格段に盛況であった。この内日本から10件, 欧州の圧力容器規格EN13445関連の発表が5件, ドイツからクリープ関係の発表が3件, 米国からPragerが2件, その他8件で, 主催国ということもあって日本の貢献が顕著であった。内容的には, クリープ関係9件, 圧力容器設計関係6件, NDT関係4件, 溶接施工関係4件, 維持基準・破壊力学関係3件, 損傷調査関係2件であった。ただし, 相変わらず研究発表的なものは日本からの論文が中心であり, 結果としてWelding in the worldへの投稿推薦は日本のクリーブ関係の論文3件のみであった。
 
4. 目新しい論文
 今回はクリープ関係と欧州の圧力容器設計規格関係で多くの報告がなされた。
(1)クリープ関係の報告の興味ある内容
 最近高クリープ強度材として開発された高Cr鋼で損傷事故が多発している。原因は長時間のクリープ特性が, 比較的短時間のクリープ特性から推定した値を大きく下回る傾向があること, 特に溶接継手の細粒域でクリープ強度が低下しタイプIVクラックを生じるためとされている。この関係で以下の3件の論文が注目を集めた。
a. 9-12%Cr鋼を種々の条件で溶接し, 内圧クリープテストを実施し, 壊れ方を調べた。(XI-795-04)
b. 9Cr-lMo鋼の実物大内圧クリープテストを実施し, タイプIV割れを再現した。(XI-796-04)
c. 熱処理で作った模擬HAZのクリープ強度を調べた。Ac3HAZ模擬では細粒となりクリープ強度は最も低かった。クリープを解析するために開発したFEMでタイプIVクラックを模擬できた。またBを含有する開発9Cr鋼は細粒域を生じないのでタイプIVクラックを生じない。(XI-794-04)
(2)欧州圧力容器規格EN13445関係
 この規格は現在整備中のもので, その内容は非常に先進的なものである。設計許容応力は引張強さ/2.4, 降伏強さ/1.5と従来のASME規格より著しく大きく取っている。また設計疲労カーブを決定するファクターも応力で1/1.5, 寿命で1/10とASMEの1/2, 1/20に比べて緩和されている。これらの設計手法の解説書が最近完成しMaintenance Help Desk of EN13445のWebsiteからフリーでダウンロードできる(www.unm.fr/en/general/en13445)。
 
5. 主なResolution
 時間が無くなって十分な議論が出来ず, 取り敢えず下記の項目をリストした。
(1)Recommendation for publications and other resolutions
 投稿の推薦は月曜日の日本の3編のみ。
(2)Working program of Commission XI
 クリープき裂進展について皆の興味があるようだ。新たなWGを考える。
(3)Creation of database on fitness-for-service assessment validations
(4)Potential for increasing allowable stress in pressure vessels through increased proof stress testing
(5)Application of probabilistic to boiler weld life assessment decisions
(6)Reports on welding application alloys 23, 24, 91, 911, 92 and 122 for elevated temperature applications
(7)A guide to the application of probabilistic and risk based asset management to pressure vessels, boilers and pipelines
(8)Other topics
来年もComm-V(検査)との協力を実施したい。
 
6. Sub-Working Group
(1)パイプラインの検査について検討するTGを作りたいので, 興味のある人間は数日中に連絡するようにとの要請がPragerからあった。
(2)クリープに関するジョイントWGが4月28-29日コペンハーゲンで開催された。次回は2005年5月の予定。
(3)SWG-E(パイプライン)からは今回も委員長の出席, 報告はなかった。
 
 圧力容器は船舶にも重要な設備であり設計条件などの議論が行われ, 欧州の圧力容器規格の見直し内容も紹介された。今後の技術動向に注目される。
 
委員長 大嶋 健司
 
1. IIW XII委員会委員長Prof. William Lucas, 各国からの参加者概要:XII委員会には21カ国 91名うちJapan(45), Sweden(5), U.K(4), Germany(4), France(4), Netherlands(4), Austria(3), U.S(3), Slovak(3)など
2. IIW事務局より, Lucas委員長の委員長継続についての説明があり, 理事会において日本をはじめとする各国から委員長継続を承認する意見があったことが報告され, XII委員会においてもLucas氏の委員長継続が承認された。また, XII委員会構成について, 大嶋副委員長と相談することになった。
3. 7月12日XII委員会開催に先立って予稿集(CD-ROM)およびガイドブックV“高効率溶接プロセス”(英文版)が出席者に配布された。後者は溶接法研究委員会発行によるものであり, 活動の活性化と国際貢献に役立つものと思われる。これはまた翌日のOne day Joint WorkshopのXII委員会関連の参考資料である。総説と一般論文からなり, 高効率溶接プロセスの現状と展望(溶接材料, 電源装置, ニュー溶接プロセス, CAD/CAM/CAPM/システム化, センシング・モニタリング技術, アーク溶接プロセスのモニタリング)とこれらに関するアンケート調査結果と解説である。
 7月12日および14日の午前中に, 通常の委員会が開催され, 全25件(内12件はわが国からの論文)の論文報告が行われた。初めに, 委員長開会挨拶があり, 中間会議がTWIおよびクランフィールド大学にて1月26-27日に開催されたので, David Yapp氏に謝辞が述べられた。続いてSub-Commission C: Puroduction systems(Chairman: Y. Sugitani)およびSub-Commission E: Quality Assurance in Arc Weldingにおいて全12件のうち, わが国から7件論文発表があった。Sub-Commission D: Environment, Health and Safety, において, Sub-Commission A: Metallurgy and Filler Metals, Sub-Commission B: Arc Welding Processesの順に報告が行われた。
 7月13日は第III委員会, 第IV委員会および第XII委員会の合同で, One Day Joint Workshop on Improving Productivity and Reliability in Welding Processesが行われ, それぞれの委員会の立場から高効率化に関する報告が行われ, 今後の動向が議論され盛況のうちに終了した。7月14日午後はSG212と第XII委員会の合同でUnderstanding The Mechanism of The A-Tig Process and Its Application in Industryが行われた。A-TIGのメカニズムなどのサーベイが行われた。
4. 労働安全衛生の立場からEMF(電磁環境)に関する発表が行われ, 委員会としても, これに大変関心を持っており, 今後ともその動向を調査することになった。また, 原子力施設における水中でのA-TIGを活用した補修溶接に関する論文報告が行われた。
5. 本年度の中間会議は, オーストリアのFronius社で行うことが委員長より提案され, 時期, 開催方法などをFronius社で検討することになった。
6. 次回年次大会はチェコのプラハである。Workshopとして, Laser Arc Hybridが提案された。これは2年前にすでに行っているが, 再度行う方向で, 第IV委員会委員長と相談することになった。
 
 各種溶接プロセスの高効率化に関する発表と意見交換が行われ, モニタリング技術など造船施工への溶接技術への適用にも期待される。 (山根 敏 記)
 
委員長 三木 千壽
 
1. 日時:2004年7月10日〜14日(10日はワーキンググループ)
 
2. 委員長名と主な参加者
 委員長:S. J. Maddox, UK
 副委員長:C. Miki: Japan, H. P. Lieurade: France
 主な参加者:C. M. Branco: Portugal, N. Chen: USA, B. Shaw: USA, W. Fricke: Germany, C. M. Sonsino: Germany, A. Galtier: France, P. J. Haagensen: Norway, A. Hobbacher: Germany, G. Marquis: Finaland, J. Samuelsoon: Sweden, E. Statnikov: USA/RF, など30名程度
 日本人参加者:三木千壽, 山田健太郎, 森 猛, 村岸 治, 森影 康, 穴見健吾, 中村聖三, 冨永知徳, 小西拓洋, 町田文孝, 小野秀一, 菅沼久忠, 田辺篤史など
 
3. 主要なイベント
 委員長の再任が認められた。副委員長・WG主査にも変更はなかった。
 
4. 全般的な論文の動向, 特記すべき技術論文
 XIII委員会全体会議において25件の研究発表と, 13件のWG報告が行われ, 活発な議論が交わされた。その内, 日本からの研究発表は10件であった。主なトピックとしては
1)Effective Notch Stress等の構造的応力アプローチ
2)1×107サイクル以上でのS-N線
3)疲労寿命予測
4)疲労強度改善UIT(Ultrasonic Impact Treatment)
5)複雑な応力下での疲労
が挙げられる。日本からは, 鋼製橋脚・鋼床版の疲労損傷と対策, 局所応力アプローチの1mm応力法, 疲労検知センサー等について報告された。
 特に, 疲労検知センサーは参加者の関心を集めた。
 
5. 今後の主要な活動計画
 次回中間会議は, 2005年3月初旬デルフト(オランダ)にて開催予定。
 
6. Sub Working Groupの概要
WG1/M. Huther(欠席のためLieuradeが代行)
 WG間の情報交換, 疲労試験法と試験結果の統計処理方法提案, 疲労試験方法の標準化
WG2/P. Haagensen
 疲労強度改善法, 高張力鋼溶接継手の疲労強度改善に関するラウンドロビンテストを参加機関で実施中。日本からは東工大が参加。
WG3/W. F Fricke:
 “Designer's Guide on Structural Hot-Spot Stress Approach”は微調整必要。Notch Stress Approachの適用手法の紹介。解析手法のラウンドロビンを実施中である。
WG4/H. P. Lieurade
 疲労に関する欠陥の影響分析, 溶接品質の疲労評価, 疲労解析ソフトウェア紹介。
WG5/C. Miki
 疲労損傷とその補修事例を集めたホームページの更なる充実のため, 事例を収集中。WG5の成果物を出版予定。現在編集中。
JWG/J. J. Janosch & A. Hobbacher
 “Recommendations of Fatigue design of welded joints and components”の改訂に関する討議。討議事項は, Knee-pointの移動(1千万回), SN-Curveの傾斜変更(m=3と22), 疲労限の撤廃などである。この内容については注意を要するため, 日本でも検討し意見を出す必要がある。
 
 溶接部の疲労破壊防止と試験方法を中心に報告と意見交換が行われた。特に疲労検知センサーの報告に関心が集まり, 今後海洋構造物, 船舶を含めた構造物の疲労検知への利用が期待される。
(菅沼 久忠 記)







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