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5.8 第VI委員会(溶接用語)
委員長 池内 建二
 
1. 委員長名, 各国よりの主な参加者
委員長 D. Rippegather(ドイツ)
G. H. Ziegenfuss(フランス), M. Lundin(スエーデン), C. G. Lindewald(フィンランド), 米国代表, 池内建二(日本)
 
2. 委員長の交代等主要なイベント
 シソーラス作業部会IのP. M. Adams(英国)が勤務先を引退したのに伴い, 部会長を辞任した。
 
3. 全般的な論文の技術分野の傾向及び動向, 委員会全般の雰囲気の特記事項
 溶接用語および定義のデータベースの改訂作業が続けられ, アーク溶接に関する部分が完成される等, 地味ではあるが, 着実に前進している。また溶接シソーラスが完成し, 出版に向けた準備作業が始められている。
 
4. 目新しい又は, 特記すべき技術論文の概要
 特になし。
 
5. 今後の主要な活動計画
 熱切断の用語および定義のデータベースの改訂作業。2005年1月中旬にパリにて中間会議の予定。
 
6. Resolutionのうちの主要な事項及びその内容
6.1 前委員長のO. Dellby氏(スエーデン)を名誉委員長に推薦する。
6.2 シソーラスの見直しと修正が完了したことを総会に報告し, IIW会員の使用に供する準備を進めるよう作業部会Publicationに推薦する。
6.3 溶接用語および定義のデータベースのアーク溶接に関する部分が完成したことを総会に報告し, できるだけ早期にIIW会員の使用に供することを推薦する。
6.4 溶接用語および定義のデータベース「特殊プロセス」―資料IV-783-04レーザ溶接用語―を第IV委員会に照会し, 英語表現の検討を第IV委員会に依頼する。
 
7. 小委員会および作業部会の概要
 溶接シソーラスを作成してきた作業部会Iは, シソーラスが完成したため, 出版のための作業を進める。
 
 溶接用語の統一は各産業分野(船舶関係も勿論)にとって重要であり, 地味な活動ではあるが進展してきている。
 
委員長 神山 宣彦
 
 2004年IIW大阪年次大会での第VIII委員会(委員長:英国Prof. Grant McMillan)は, 7月12日から14日の午前中, 約20〜40名が参加者して開かれた。日本からは, 小林実, 奥野勉, 山田比路史, 岩崎毅, 山口裕の6氏と筆者が出席した。
 
1. IIW Documentsから“Best Practice”(最優先活動)Documentsリストを作成するため, 筆者ら日米欧3人の委員が, 最近10年間(1994-2004)のDocumentsをレビューし, 次回第VIII委員会に報告することとなった。
 
2. 各国から最新の曝露限界値が報告された。米国:ACGIHがwelding fumesのTLVを廃止。英国:NO2ガスの規制値(EL)を1ppmに変更。スウェーデン:Cr(VI)を0.02mg/m3から0.005mg/m3に, Mnを0.2mg/m3から0.1mg/m3に変更。ドイツ:吸入性粉じんの許容値を6mg/m3から3mg/m3に変更。
 
3. ISO/TC44/SC9提出のprEN/ISO15011-4“Heath and Safety in welding and allied processes-Laboratory method for sampling fume and gases generated by arc welding-Part4. Fume Data Sheet”について討論が行われた。総じて原案に対する疑問点や反対意見などが多かった。
 
4. 日本と第VIII委員会との合同セミナーが2日目に行われた。日本からの要旨集とフランスからの発表要旨が約40名の出席に配布され, McMillan委員長の挨拶の後, 筆者の司会で次の講演発表が行われた。
4.1 溶接作業者の健康障害防止のための日本の現行法規:神山宣彦, 小笠原仁夫(NIIH, JWES)
4.2 粉じん危険要因保護対策に関するアンケート調査結果:小林 実JWES)
4.3 フランス鉄鋼製品製造工場における肺がん死亡率と酸化鉄曝露:E Bourgkard, JJ Moulin, B Courcot, M. Diss, et al.(INRS, SOLLAC Atlantique, et al.)
4.4 アーク溶接に用いられる呼吸保護具:山田比路史(日本呼吸保護具製造協会)
4.5 アーク溶接作業時の青光障害防止のための保護めがねの有効性:奥野 勉, 小嶋 純, 斉藤宏之(NIIH & 日本保護眼鏡工業会)
4.6 溶接ヒュームとガスの工学対策のわが国の現状:岩崎 毅, 藤代祐樹, 久保田祐二, 小嶋 純, 柴田延幸(興研, NIIH)
 
 以上の講演発表は参加委員に大変好評で合同セミナーは成功であった。特に日本発の情報が乏しい中, こうした発表は大いに意義があり大歓迎だという評価も得た。
 
5. 幾つかの情報の紹介や意見交換が行われた。
 EUにおける造船における深刻な問題の紹介。EU諸国で若年労働者が造船の溶接作業につきたがらず労働者不足がおきている。主な原因は造船の劣悪な労働環境状態にある。対策として3年間造船所を公開して適格にする(qualify), 国が主催して合同セミナーを開催する, など。
 
6. 最近, 米国で溶接作業者のMn曝露によってパーキンソン病が発症したとして訴訟が起きたことから溶接ヒューム中のMnが注目されている。米国を訪問してMn問題の情報収集をしたMcMillan委員長からMn Updateと題するプレゼンテーションがあった。
 プレゼンテーション後, 委員会声明が審議され下記の様に決定し, 閉会した。
 
第VIII委員会声明
 次のことを遅滞なく進めることを要請する:
*溶接企業で曝露する吸入性マンガンとその化合物を最小限にする, 少なくとも国の規定値以下とすること。
*溶接ヒューム曝露作業者のマンガンとそのマンガンがパーキンソン病発症の原因または促進させるという仮説を検討する研究をすること。
*溶接企業はこの研究の委託と研究資金に実効性のある役割を演じること。
 
 欧州において, 造船の作業環境の悪さから若年労働者が造船の溶接作業に定着しない, 深刻な状況が報告された。溶接作業時に発生するヒューム・粉塵・青光に対する対策が重要であり, 各国の現状と対策について意見交換が行われた。溶接作業時の安全衛生の維持向上は各産業界に共通な課題であり, 今後共注目していく必要が大きい。
 
委員長 池内 建二
 
1. 委員長名, 各国よりの主な参加者
委員長 B. de Meester(ベルギー)
H. Cerjak(オーストリア), Ph. Bourges(フランス), 百合岡信孝(日本), C. Farrar(英国), J. Hald(英国), J. dos Santos(ドイツ), Th. Bollinghaus(ドイツ), J. C. Lippold(米国), S. A. David(米国)
 
2.委員長の交代等主要なイベント
2.1 現委員長B. de Meester(ベルギー)の任期満了に付き, 来年度よりTh. Bollinghaus(ドイツ)が委員長に就任することが無投票で認められた。
2.2 小委員会IX-J「溶融金属の冶金学」の百合岡信孝小委員長の辞任が認められ, 次期小委員長として小関敏彦氏が指名された。
 
3. 全般的な論文に認められる技術分野の傾向及び動向, 委員会全般の雰囲気の特記事項
3.1 我国から多数(19件)の発表があった。特に, ステンレス鋼に関係する発表が多く, 2日目は2会場に分かれて開催された。
3.2 第III委員会と協力して摩擦攪拌接合に関するPre-Annual Assembly Joint Meetingを名古屋で開催し, 国内外を含め90名を越える参加者を得た。年次大会でも摩擦攪拌接合に関する報告が多数あり, 本法に関する関心の高さが伺われた。
 
4. 目新しい又は, 特記すべき技術論文の概要
 Ni基合金の溶接金属の延性低下割れについて, 破断歪み量試験と, 電子顕微鏡観察に基づく検討が加えられ, 溶接金属の高温粒界割れ機構の新しい見解につながる結果が得られている。粒界の曲折および辷りに及ぼす析出現象の効果と, 耐延性低下割れに対するその影響について, 最新のクリープ理論に基づいて議論し, 不純物および格子間元素が延性低下に及ぼす影響についての考察に結び付けている。
 
5. 今後の主要な活動計画
 各小委員会および作業部会について, 本年次大会で各小委員長および部会長より報告された活動計画を全て了承した。また, 全小委員会および作業部会に対して, ISO技術報告として公表する候補がないか, 近年の資料を見直すよう要請された。
 
6. Resolutionのうちの主要な事項及びその内容
6.1 Bollinghaus次期委員長への要請事項として, 小委員会IX-AおよびIX-Jの小委員長と協力して, これらの小委員会の名称および活動計画を見直すこと, またその活動の効率化および小委員会II-Aとの協力関係の改善を図るよう適切な助言をすることが望まれた。
6.2 本年次大会で発表された報告の中から17件が, Welding in the World誌への掲載が推薦された。その内, 9件が日本からの報告である。また, 1件がISO技術報告としての公表を念頭においてISOへ伝達された。
6.3 第IIIおよびIX委員会は, 両委員会の共催により名古屋で開かれたFriction Stir Weldingに関するPre-Annual Assembly Joint Meetingで口頭発表された全論文(9件, 内4件が日本から)をできれば同一号にまとめて掲載することを推薦した。
6.4 小委員会IX-Hで数年前に取り組まれ, CEN ISOに引き渡された高温割れ性評価のための縦型曲げ試験法(LBT)の標準化作業は終了した旨, 報告された。
 
7. 小委員会および作業部会の概要
7.1 構造用鋼および低合金鋼の溶接
・小委員会IX-A「炭素鋼および低合金鋼の溶接性」
 小委員長:Ph. Bourges(フランス)
・小委員会IX-J「溶融金属の冶金学」
 小委員長:小関敏彦(日本)
7.2 ステンレス鋼, ニッケル基合金および耐熱鋼の溶接
・小委員会IX-H「ステンレス鋼およびニッケル基合金の溶接性」
 小委員長:C. Farrar(英国)
・作業部会「溶接継手の高温挙動およびクリープ」
 部会長:J. Hald(デンマーク)
7.3 非鉄金属およびその他の材料の接合
・小委員会IX-NF「非鉄材料の溶接性」
 小委員長:J. dos Santos(ドイツ)
7.4 溶接性の数理モデル化
・作業部会「溶接現象の数理モデル化」
 部会長:H. Cerjak(オーストリア)
7.5 中間会議の予定
・小委員会IX-AおよびIX-J
 共同会議2005年3月21日, パリ(フランス)にて
・小委員会IX-H
 2004年10月20〜22日, ヒューストン(米国)にて, 第II委員会と共催
 2005年3月14日, ケンブリッジ(英国)にて
・小委員会IX-NF
 2005年1月30日〜2月1日, ゲーストヘヒトGKSS(ドイツ)
・作業部会「溶接継手の高温挙動およびクリープ」
 2005年4月5〜6日, ヘルシンキ(フィンランド)にて
・作業部会「溶接現象の数理モデル化」
 2006年9月25〜27日, グラツ(オーストリア)にて
 
 ニッケル合金鋼は低温用鋼として, 液化天然ガスの輸送船・輸送タンクなどに利用されているが, 溶接性が重要である。この委員会においては, 溶接による金属の挙動について検討がおこなわれており, 造船分野への技術の利用・応用が期待できる。
 また, 最近注目されているアルミニウムヘの摩擦攪拌接合に関して, 金属の挙動研究が進んでおりアルミ船の開発などに有益な情報が報告された。







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