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6.4 高張力鋼用サブマージアーク溶接材料の共存型規格案について(Doc.II-1542-04)
(1)Kotecki氏から“ISO/WD88888: Welding consumables-Solid wire electrodes, tublar cored electrodes and electrode-flux combinations for submerged arc welding of high strength steels-Classification”の説明があった。
(2)溶接金属の機械的性質やワイヤ組成に対する日本からのコメントについても説明があったが, AWS側でもまだ十分に議論していない事, 素案に対する出席者からのコメント, 疑問点等を受け11月の中間会議(Houston USA)で以下を再度議論する事になった。
 
(1)溶接金属のYS, TSの値が他の高張力鋼用溶接材料(被覆アーク溶接棒, FCW, ソリッドワイヤ)と矛盾なく整合性がとれているか。
(2)AWSは溶接金属の化学組成まで規定しているが, JISやENは規定していない事からFCWについてのみ溶接金属組成を規格化する案で問題ないか。
(3)すでにISO14171(軟鋼及び細粒鋼用SAWワイヤ他)に規定されているワイヤが, 日本からの提案で高張力鋼用SAWワイヤとして本規格案にも規定されている。両方のDesignationに入っている事をFoot noteに記載する必要があるかどうか。
(4)溶着金属を作成する時の溶接条件でアーク電圧のRange±1.5Vは狭いとの日本コメントに対する対応として, 平均値である旨を記載する必要があるかどうか。
(5)溶着金属を作成する時の溶接条件のうち溶接速度が, A-Side(EN)とB-Side(日米案)で大きく異なるが, 溶接入熱, その結果としての溶接金属性能に対する影響が大きいのではないかという疑問点について意見はないか。
(6)全体として他のISO規格との整合性がとれているかどうかの確認。
 
6.5 拡散性水素量の高温抽出法(Doc.II-1543-04)
 3.1項II-A委員会)記載の内容がElvander氏より再度報告された。
6.6 溶接ヒュームによる分類に関するステートメントについて(Doc.II-1544-04)
(1)Elvander氏より, prEN ISO/DIS 15011-4に対するステートメント案(Draft 1.1)が説明された。
(2)ヒューム発生量に及ぼす各種因子, 各国で異なる暴露限界などから, ヒュームによる分類は誤って用いられたり, 法規に合致しない可能性があり, 種々の問題がある。
(3)これに対して, 様々な意見が出されたため, 再度, 次回中間会議に第2案について審議することとなった。
6.7 硬化肉盛用溶接材料(Doc.II-1545-04)
(1)Kotecki氏から溶接金属のミクロ組織に基づいて分類した硬化肉盛用溶接材料分類方法の考え方について説明があった。
(2)多くの国やメーカーから収集した溶接金属のミクロ組織を17種類の鉄基溶接金属, および14種の非鉄基溶接金属に分類しそれぞれの特徴が示された。
(3)本資料をTechnical reportとして出版することとした。 ―決議8
6.8 ペンストック建設事故の事例紹介
(1)Farrar氏から2000年にヨーロッパアルプスで発生したペンストック建設事故に関する紹介があった。スイスの湖からアルプスの標高2200m部分を貫通する長さ20kmの水平に近いトンネルを作り, さらに2200mから500mまでの落差を利用して発電するペンストックにおいて, 溶接割れに起因する壊滅的な破壊現象が起こった。
(2)950MPa級鋼板(最大板厚70mm, 事故部58mm), 直径200cmの鋼管製造時の溶接方法, 現地での組み立て溶接方法(溶接材料, 余熱, 後熱, NDI), 鋼管を支えるトンネル内構造等多くの問題点が指摘されている。
6.9 II-E分科会2004-2005 Working Programについて(Doc.II-1546-04)
 Widgery II-E主査から, 2004-2005 Working Program案の説明があり, Item 2において“high tensile steels”を“high strength steels”に変更して承認された。 ―決議9
 
7. 宿題・検討事項
 ISO/WD関係
・高張力鋼用サブマージアーク溶接材料における溶着金属の機械的性質, 化学組成等の検討。 ―担当:溶接棒部会調査第2分科会WG4
 
8. 標準化関係会議の開催予定
8.1 IIW第II委員会2004年秋中間会議 :2004年10月18〜19日, ヒューストン(USA)
8.2 ISO/TC44/SC3 2005年会議 :2005年01月, パリ(フランス)
8.3 IIW第II委員会2005年春中間会議 :2005年03月08〜11日, ケンブリッジ(UK)
 
 アーク溶接は最も基礎的な重要な溶接技術であり, 船舶製造上においても基本溶接手法である。最近では特に水素の挙動が溶接部の亀裂発生に大きく影響することが判明しており, 溶接の後, 数日後に発生する遅れ破壊の防止には水素量の低減が必要であることが注目されてきている。水素量の測定方法, 溶接材料の規格などアーク溶接の問題点・課題解決に対して, 精力的に検討が行われた。
 
委員長 里中 忍
 
 今年のIIW大阪大会は, 大阪国際コンベンションセンターを会場として7月11日から16日までの1週間開催され, 盛会裏に終了した。
 第III委員会関係の会議は, 実質的には7月9日の名古屋大学でのFSWに関するPre-Assembly Meetingから始まり, 7月14日までの会期で運営された。主な行事は以下の通りである。
7月9日 IIW Pre-Assembly Meeting on FSW in Nagoya
7月10〜11日 WG-B1
7月12日 C-III, SC III-B, WG-1A
7月13日 C-III, C-IV, C-XII Joint Workshop
7月14日 C-III
 7月9日のIIW Pre-Assembly Meeting on FSW in Nagoyaについては松山第III委員長から報告されているので, 7月10日からの委員会活動状況の概要を報告する。出席者は本委員会が16カ国27名, 第IV, XII委員会との合同委員会が27カ国87名以上, FSW規格準備委員会が7カ国20名であった。主な活動の概要は以下の通りである。
 
1. ISO規格関係
 次の規格が各国Delegateによる投票を通過し, それぞれFDIS, DIS投票案作成のためにISO事務局に送られることになった。
 ISO/DIS14323 Resistance spot and projection welds-Destructive testing of welds-Specimen dimensions and procedure for impact shear test and tension testing
 ISO/DIS14373 Resistance welding-Procedure for spot welding of uncoated and coated low carbon steels
 ISO/DIS16432 Resistance welding-Procedure for projection welding for uncoated and coated steels using embossed projection(s)
 ISO/DIS16433 Resistance welding-Procedure for seam welding of uncoated and coated low carbon steels
 ISO/CD10447 Welding-Peel and chisel testing of resistance spot and projection welds
 
2. サブコミッションおよびワーキンググループ(SC III-B, WG-B1, WG-1A)関連
 昨年のTUM(ミュンヘン)での中間会議からスタートしたWG-B1では, 委員が草稿しBolser氏がまとめたFSWに関するISO規格案を審議したが, 76ページ中26ページしか見直すことができなかった。今回の会議の結果を基に, 委員は担当セクションの見直しを行うこと, 次回の中間会議からは3日間の会議とすることにした。また, 松山委員長からは規格名をFriction Stir Welding-General Requirement for Friction Stir Welding of Aluminumとする提案があり, 了承された。次回の会議は9月17-19日Metz(フランス), 2月2-4日GKSS(ドイツ)の予定である。2日間の会議の最後に, Bolser氏から今回の会議の準備に関して難波氏への謝辞, SC III-B委員長Nicholas氏の来年退職の紹介, そして委員の協力に対する謝辞が述べられた。SC III-Bでは, WG-B1での経過報告が行われ, 新たにFSWの機械的性質のデータベースを取り扱うWG-B2とFAWのモデリングを対象としたWG-B3を立ち上げることを決めた。それぞれのWGのリーダーとして, 藤井先生(阪大), Mr. D'Alvise(ベルギー)が選出された。WG-1Aでは, 多点スポット溶接部材の疲労試験の関するISO規格修正案が提案され, 試験片の厚さ, 形状, 試験法, 負荷方法などについて意見交換を行った。また, この規格案作成に関してはISO/TC44/SC6からも了承され, 今後ISO/TC44/SC6/WG3とも協力しながら作成していくことになった。
 
3. III, 第IV, 第XII合同委員会
 松山第III委員会委員長の開会挨拶の後, 第III委員会からFSWのプロセスパラメーターと機械的性質, 低入熱摩擦圧接の機械的性質(木村先生), スポット溶接の超音波測定(里中), 電磁圧接を利用した自動車構造部材の新しい溶接法の発表があった。第IV委員会からはレーザ溶接の新しい応用例(松縄先生), 重工業部品のレーザ溶接における生産性と信頼性(松縄先生), 高生産性の厚板用減圧電子ビームの開発状況が, 第XII委員会からは日本における溶接棒の開発(中野氏), 溶接用電源の開発(三田氏), アーク溶接のセンシング技術(浅田氏), 溶接におけるCAD/CAM/CAPM技術(杉谷氏)などの最近の動向が報告され, 活発な議論が行われた。最後に, 松縄第IV委員長の司会で総合討論が行われ, 各委員会の立場から情報交換が行われた。
 
4. 本委員会での論文発表
 FSW関連2編(日本から発表:篠田先生(名大)), 溶接部材の試験と機械的性質関連2編, モニタリング関連2編, 抵抗溶接のモデリングとシミュレーション関連2編の発表が行われた。また, 本委員会, Pre-Assembly Meeting, 合同委員会で発表された論文の中から, III-1293-04, III-1295-04(篠田先生他:名大), III-1296-04(藤本氏他:川重), III-1297-04(西原先生:国士館大), III-1299-04, III-1300-04(粉川先生他:東北大), III-1301-04, III-1302-04, III-1303-04, III-1304-04(篠田先生他), III-1321-04(Park氏:東北大), III-1322-04(前田先生他:阪大), III-1323-04(大岩氏他:石川島播磨他), III-1292-04, III-1310-04, III-1313-04の論文がWelding in the Worldに搭載する論文として推薦された。
 
5. 第III委員会におけるSCおよびWG活動の再編
 FSWが第III委員会で取り扱われるになったこと, Dr. Weber(ドイツ)のSC III-Aの委員長辞退の申し出を考慮して, SCとWG活動を整理することになった。審議の結果, 第III委員会の組織構造と名称を次のように再編することになった。
 第III委員会(委員長:松山先生, 副委員長:Mr. Kimchi(アメリカ)):委員会全体に関わる事項, 規格関連事項, 運営に関する事項を取り扱う。
 SC III-A(委員長:Mr. Kimchi(アメリカ)):SC内にWG-A1, WG-A2のワーキンググループがあり, FSWを除く抵抗溶接およびそれに関連するプロセス(機械的な接合, 固相接合, 電磁パルス溶接, MIABなど)の技術的な事項を取り扱う。
WG-A1(リーダー:Mr. Galtier(フランス)):溶接材の試験法
WG-A2(リーダー:未定):モニタリングと制御
 
 SCIII-B(委員長:Mr. Micholas(イギリス), 副委員長:Mr. Santos(ドイツ)):FSWの規格や技術的な事項を取り扱い, WG-B1, WG-B2, WG-B3がある。
WG-B1(リーダー:Mr. Boslser(アメリカ)):FSWの規格
WG-B2(リーダー:藤井先生(阪大)):FSWの機械的性質のデータベース
WG-B3(リーダー:Mr. D'Alvise(ベルギー)):FSWのモデル化
 
 
6. 今後の予定
 第III委員会の今後の予定としては, 以下のような中間会議が計画されていることが報告された。
2月5日:C-III, SC III-B(開催場所GKSS(ドイツ))
2月4日:SC III-A(開催場所GKSS(ドイツ))
2月2〜4日:WG-B1(開催場所GKSS(ドイツ))
10月18〜19日:C-III(開催場所EWI(アメリカ))
7月10〜16日:IIW年次大会(開催場所プラハ(チェコ))
 
 スポット溶接を中心とした抵抗溶接に関する討議が行なわれた。新たに摩擦攪拌接合(FSW)が本委員会に加わったことにより, 従来以上に注目された。摩擦攪拌接合はアルミ合金に対する新たな接合技術であり, 高速アルミ船の開発には欠かすことの出来ない最新技術であり, 活発な意見交換が行われた。







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