財団法人高樹会蔵(新湊市博物館保管)富山県指定文化財
江戸時代後期
大坂の岩橋善兵衛の作。鏡筒の塗り仕上げは一閑張の漆塗りで、黒塗りの上に金箔型押で西洋風の模様が施されている。初代岩橋善兵衛(1756〜1811)は和泉の人で名は嘉孝。寛政5年(1793)、八角筒、周囲8.9寸の望遠鏡を作り、「窺天鏡」と名づけ、当時の知識人に太陽、月、木星、アンドロメダ銀河、ミザール等を披露した。天体の姿が鮮明に映し出され、その評判は大変なものであった。
寛政7年(1795)に再び望遠鏡を製作、自らレンズを磨き、高橋至時や間重富を介し、若年寄堀田正敦をはじめ多くの人に販売している。この頃から幕府の天文方も実力者が採用され、善兵衛の製作した望遠鏡も天体観測に使用されるようになった。精密な日本地図を製作した伊能忠敬の望遠鏡も善兵衛により作られたものである。善兵衛没後は四代にわたり、望遠鏡の製作・販売を続けた。岩橋家の銘のある貴重な望遠鏡は、伊能忠敬記念館、新湊市博物館、彦根城博物館に現存する。
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