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NPO立ち上げて支援
就労問題に取り組む大阪の青年団
 職探しで活動どころではない、気分的な余裕がないなど、「就労の不安定」は青年の集団活動にも大きな影を落としている。大阪でも、特に失業率が高い泉州地区の青年団では深刻だ。「この状況を何とかしなければ」と泉佐野市青年団協議会は、大阪府青年団協議会(東真佐彦会長1万人)に相談を持ちかけ、両者で対策をはかることにした。とりあえず、若者が青年団に興味をもってくれるような居場所作りから始めた。フットサル大会、漫才や寄席等のイベントを主催、そこで「相談コーナー」を設け、青年団のPRや生活上の悩みなどを聞くという活動に取り組んだ。
 そして2002年6月、国の緊急雇用対策事業を活用して7つの団体(大阪府青年団協議会、泉佐野市青年団協議会、部落解放同盟大阪府連合会青年部、障害者の就労を支援する会など)が集って、NPO法人「おおさか若者就労支援機構」を立ち上げ、本格的にフリーターやニートの支援活動に取り組むことになった。
 
若者の問題は若者が解決
 若者を取り巻く環境を「フリーター等の急増で、若者の目的意識の低下が指摘されているが、それは、社会に対する閉塞感や職業経験の不足からくるもので、若者を社会全体で育てていく環境が整っていないからである」ととらえた上で、活動内容を「(1)若者が主体となって、働くことや生き方について自由に語り合える場づくり、世代間交流を通じて地域に目を向ける取り組み、ピアカウンセリングを通じた働く意識を高める環境づくり。(2)就職を希望する者には、企業と協力したインターンシップ、資格取得に向けた支援、就労に結びつく情報発信」等とし、若者の問題は若者自身で解決していこうというものだ。NPO事務所は大阪府庁の近くにマンションの1室を借りて運営している。1名いる常勤職員は青年団員で、元フリーター。早速1名の就労を実現させた。
 
家族も巻き込んで
 さて、最近の具体的な活動をイベントのチラシなどから見てみよう。
 『家族から始めるニート就職支援―わが子への仕事サポート1、2、3』は、家族を対象にした活動だ。(1)家族ができることを考えるワークショップ(2)「JOBカフエOSAKA」見学説明会などを2度に渡り開催した。
 若者を対象にしたのが『就労支援フェア』(下チラシ)。落語家の桂小米朝のトークをはさんで、(1)就労対策(履歴書や面接対策)(2)マナー対策(ビジネスのマナー)(3)職業適性診断(4)若年・中高年・障害者就労相談コーナー(5)求人募集展示コーナーなど盛りだくさんな内容。当日は200人以上が訪れ、それぞれのコーナーに熱心に参加したという。
 「この事業を仕事探しだけでなく青年団や地域の活性化につなげたい」と東さん。今後の活動に注目したい。
 
関連ホームページ: http://www.city.izumisano.osaka.jp/section/kankou/index.htm
 
ニート
フリーターでもなく
失業者でもなく
玄田有史他
幻冬舎 1575円
 
 2003年、UFJ総合研究所は、厚生労働省の委託を受けて日本版「ニート」の実像に迫った。それによると、ニートは中・高校中退、不登校経験者がなりやすいこと、相談する人・友人が少なく「孤立した人間関係」「自分に対する自信の欠如」等共通した特徴として挙げられるという。
 著者らは横浜の「ジョブスポット」や「青年の家」等に出向き、たくさんの若者に会い、彼らの声を聞き、ニートの実像に迫っている。そこで「ニートに欠けているのは職業の情報・知識でなく、働く自分に対する自信」であり、「彼らに必要なのは自分が人と交わっている実感であり、交わることの緊張と楽しさだ」と、わかる。
 ニートは「働きたくない」のではなく「働くために動き出すことができない」でいるだけであり、「動きだすためのきっかけ」を必要としている。だから、義務教育を終わるまでの職場体験がニート予防策になるであろうと主張する。実際、富山県と兵庫県ではすべての中学校で5日以上の職場体験が行われており、富山県は卒業後ニートになる割合が全国で最も低いという。著者は誰でもニートになりうる可能性があることを訴える。
 
フリーターという生き方
小杉礼子
勁草書房 2100円
 
 いま、若者と働くことをめぐる議論が各界に広がっているが、フリーターの働き方と意識の実態を正しく伝えたい、というのが本書の意図である。著者は独立行政法人「日本労働機構」の研究員として、多くの若者の就業行動を調査・研究してきた。まず、フリーターとは「学生でないこと、若者であること、正規雇用者でないこと」と定義する。フリーターの学歴は中・高校卒が多いが、彼らを採用しない企業側の理由は「経営環境の悪化(48%)」、「高学歴の者で代替(42%)」「業務の高度化(20%)」を挙げている。一方、フリーターを続ける理由として、彼らの多くは「他にやりたいことがあるから」「自由で気楽」「自分に向いた仕事がわからない」と語る。その「やりたいことの中味は「音楽・芸能系」である。フリーターの問題は、職業能力開発が十分に行われず、キャリアも積めないこと、就業内容・機会共に条件が悪いことであるが、フリーターになる背景には学歴が低く、進学できなかった家庭の経済状況も見過ごせない。こうした状況から学校と社会を結ぶ接点が特に問題であり、職業的能力をどう育てるか社会全体の問題として取り組む必要があることを強調する。
 
脱フリーター社会
大人たちにできること
橘木俊詔
東洋経済新報社 1575円
 
 フリーターの増加は「社会全体に責任がある」という立場から、学校・家族はどう変わっていくべきか、政府・企業はどのような対策をとればよいのかを大胆に提言した本。提言するのは経済学者と若者自身。若者の提言―(1)正規雇用者のサービス残業の削減(2)割増賃金制度の見直しなど。経済学者の提言―ワークシェアリングと賃金格差の是正(2)学校と公共部門による職業教育と職業訓練(3)若者の変化への対応と支援策など。







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