III 「守り」から「攻め」への新たな挑戦と物流機能の重要性について
そういう中で今の日本、特に九州の農業はたいへん危機的な状況です。ただでさえ、構造調整が進まない、高齢化して農業を継ぐ人がいないという中で、安い中国産は日本の農業の壊滅的な状況へ後押しをしているかのようです。今、九州の各行政が守りから攻めの農業を構築しようということを打ち出しております。
安い農産物、安い機械、安い半導体など中国は「作る」世界の工場だけではなくて、実は「市場」でもあります。
とりあえず香港から攻めようということで、福岡県は実は12年前から青果物の輸出をほそぼそと催事の形式でやっていたんですけれど、これを本格的にやろうということで、私が一昨年からアドバイザーになりまして、輸出促進をお手伝いしています。
図13 定着する日本食品
●定着する日本食品
ご承知のとおり江戸時代から俵物三品といって、アワビ、フカヒレ、どんこ椎茸は日本のモノが最高級と言われ、今でもそうです。たいへんな高値で輸出しているということが私の最初の発端でもありました。現に香港の高級食材の卸屋に行かれるとわかりますが、左下の写真で値段が218とあるのが日本産、58と書いてあるのは青島、中国産です。日本と書くだけで値段が4倍に跳ね上がって売れるのです。ジャパンブランドというのは実はホンダ、ソニー、トヨタだけではないと実感したわけです。
●日本と変わらぬマーケット
図14は一昨年最初にキャンペーンをやった香港そごうですが、右の写真は福岡県のイチゴで「とよのか」というのを並べたところです。1パック、98香港ドルです。1香港ドル、約15円としますと約1500円で売られていたのです。
これを試験的に並べていただいて、試食販売をやりましたら、全部売り切れて、すぐ追加注文になりました。びっくりしました。1パック1500円のイチゴを日本の駐在員の方が買うでしょうか?福岡県でも旬の時には300〜400円。私、ずっと見ていましたら、普通のOLさん、特に地元の方が買っていかれるわけで、日本の駐在員の方は「あー高いわね」ということであまり買わないのです。
図14 日本と変わらぬマーケット
隣が長崎、熊本のみかん。これも1ネット、16香港ドルと、いい値段で売られていますが、全部売れてしまって驚きました。おそるおそる出荷したのが、こういうふうにいっぺんで売れてしまったので、密かに自信を持ったわけです。
今や、香港の量販店はほとんど福岡県産あるいは九州産の軟弱野菜と呼ばれている、春菊、小松菜、かいわれ、えのきだけなどを置いていただいています。
図15 まるふくマーク(福岡県産品商標)
多分こういうものを買うのは日本の駐在員だろうと思われるでしょうがSARSでほとんどの駐在員が日本に帰られた後、売上が減るどころか増えたということです。
写真のとおり、日頃、皆様御馴染みのパッケージが売られています。小松菜が超特価ということでも24香港ドル、すなわち400円という値段で売れていくわけです。
業者の方が7〜8社おられて、エアカーゴと船便で毎週10便以上、香港へ輸出されています。
福岡でもこれに意を強くしまして、SARSの時は全く身動き取れなかったんですけれど、今年からまるふくマーク(図15)を登録しまして、積極的にこれが日本の品質だとブランド化で差別化しようと、この商標を中国、台湾、香港で取りまして、日本の高級品として売っていこうと展開しているところであります。
●香港のマーケット
ご承知のとおり香港は関税がありませんし、検疫もほとんどありません。しかもSARSが流行った時以来、安全衛生に対する意識が向上しています。良い品物であれば高くてもほしいと、1時間、電車に乗ってでも日系のデパートやスーパーに行って買いたいという人達がいるところであります。
図16は今年の7月にキャンペーンをやった時のものです。八女の黒木町の巨峰ですけど、1箱、268香港ドル、4千円ちょいです。桃にいたりましては12個で何と9千円。これが全部売り切れてすぐ追加ということになりました。種なし巨峰や日本の水蜜桃がいかにおいしいかということです。
これらを買うのはアッパーミドルと呼ばれる人達だということで驚いています。
図16 香港のマーケット
●何故日本産の高級品がアジアで売れるのか
なんで日本ブランドの高級品が売れるのか。これは実は食料品だけじゃなくて、自動車でもそうです。ホンダ、トヨタなど、日本ブランドが売れています。もちろん金持ち層が増えています。中間層も増えています。少子高齢化とか、日本食ブームもあります。北京や上海でもナマ魚とか、寿司を食べたり、納豆食べるということで、日本の文化がどんどん浸透しています。
また、アジアは日本以上に贈答文化がすごいこともあります。さらに、最近上海、香港や台湾、韓国に行かれた方が「お土産品を買うものがない」といわれますね。物価があまり変わらなくなってきているのです。日本のものは、もちろん高いと言われるんですけれども、昔のような差がなくなってきているわけです。
それから健康志向とか衛生というような意識がアジアでは共通化しているというところも、チャンスに繋がっているというわけです。
図17 香港・台湾で売れ始めた日本食品
●香港・台湾で売れ始めた日本食品
食品に関して言えば、ここに挙げたようなものが売れている。私が長くつきあっていた中国人の友人は、これまで、納豆は絶対に食べない、味噌汁ダメ、日本茶ダメ、干物なんて臭くてダメだと言っていたのに、今や、バイヤーの人が「是非持ってきてくれ」というようになりました。
台湾のテレビでも納豆を食べると血がさらさらになるとやってて、今、納豆の大ブームで、本当にびっくりしてしまいます。
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