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クルーズコーディネーターの仕事
 
会場風景
 
 今日は私の仕事を少しご説明させていただきます。皆さんのお手元に商船三井客船の「にっぽん丸の船内新聞」という新聞が入っていると思います。どの客船も大体、こういう新聞が入っております。これは前日の夕方にスッと部屋に差し込まれまして、お客さんはこの新聞を見ながら、明日何をしようかと、おもいおもいに考えるんですね。
 クルーズにはレジャークルーズ、チャータークルーズと2通りのタイプがあります。チャータークルーズというのは、日本ならではの形態で船をまるごと、企業もしくは団体が借り切って、自分達の思うように船の中を彩る。その彩る時の船内のコーディネイトをするというのが、私の一番の仕事でございます。
 その時どういうふうにするかというと、船内の部屋と時間をみながら、そして、一番大切なのが、食事の時間です。食事の時間というのは船内で一番動かせない時間ですね。食事の時間を基本に、どういうスケジュールにしようか。例えば、このクルーズですと500人のお客様が乗っていらっしゃいましたので、ダイニングのサイズが300人位ですから、2回食にわけて、そしてその裏と表にバンド演奏をして、メインショー等をするということで船内は組み立てられています。食事もこの日はデッキランチですね。デッキランチやアフタヌーンティ、ディナー、そして夜食ということで、4回の食事があるというシステムになっています。
 そして目的地です。例えば、すごく眺めの良い、明石海峡大橋の下をくぐる、瀬戸内海の瀬戸大橋の下をくぐるというような、外の景色が素晴らしい時間帯にイベントを組むことは無理ですから、そういう時間帯には出来るだけイベントをはずして外に出ていただくんですね。そうすると外の景色のことも考えながら、団体の皆さんがどういうものを期待して船に乗っていらっしゃるものかという目的に向かって、会社の表彰なのか、会社の団結なのか、どちらかというとインセンティブで、乗ってらっしゃるお客様に対してもてなす接待のクルーズなのかという目的に向けて、クルーズを組んでいく。
 また、船内、大方の船ですと、夕方以降ドレスコードというのを決めていまして、船の中の色を決める。それは何も堅苦しくするというのではなくて、どんないい船でも一番大切なのは、私は船内に乗ってこられるお客様だと思っているんです。ある日は少しおしゃれにする。ある日は思いきってカジュアルにして、みんな浴衣にしてしまうというような船内のドレスコードを統一することによって、その船のメリハリをつけることができる。そういうことを考えるのが私の役目です。
 
クルーズの楽しさ
 クルーズ、何が楽しいのというと、なかなか一言で、クルーズの楽しさをあげることは出来ないんですが、一番はやはり何にもしない贅沢、そして何でも出来る贅沢、この2つがあるということがクルーズの一番の魅力だと思います。で、はじめにクルーズの楽しさについて映像をみながら皆さんに見ていただきたいと思います。
 船は到着地に行くまでの船のプロセスだというふうに強調するんですが、これが実は乗ってみないとわからんとです。
 私は平成元年に世界半周のクルーズ、内閣府が主催しました「世界青年の船」に乗ってから、このクルーズという世界にどっぷり足を浸けることになってしまいました。
 
船旅ならではの運河通過(キール運河)
 
〇さまざまな船内イベント
 船内では様々なイベントが繰り広げられています。大体、食事が終わった夕方以降、メインショー、コンサート、マジックショーですとか、いろんなものがあります。
 これはフォーマルデイとなります。食事の前のカクテルパーティが行われています。
 船内、様々なイベントが、目的地、どこの目的地に行くのかによって、イベントも様々に違ってきます。でも、なんだかんだ言っても、皆さん、日本船籍ですから、この盆踊り大会を超えるイベントは、どんなにすばらしいマジックショーをもってきても、どんなにすごいブロードウェーのショーを持ってきても、およそ盆踊りを超えるイベントをいまだかつて見たことがありません。なぜかというと、全員が参加できるからです。陸(おか)で盆踊りというと、「エッ」という感じですが、でも360度大海原に囲まれて、潮風をあびながらの、この盆踊りというのは最高です。
 また、特に世界一周クルーズなどの長い時間がある場合は、午前中はミニカルチャー教室があります。こういうパソコン教室等もあります。こういう船に乗らなければ、およそパソコンをさわることもなかった。船に乗らなければ折り紙を折ることもなかったというような、通常の陸(おか)では体験できないようなカルチャー教室も満喫できます。
 またお誕生日には、必ず船がお誕生日の方を前もって調べて、お誕生日のプレゼントやカードを下さいます。
 
○最大の楽しみ、食事
 こちらはデッキランチですね。360度大海原に囲まれてのデッキランチ。また、夕方はデッキディナーという場合もあります。
 これは夕食のメニューです。世界一周ですから、100日間同じメニューを決して出しません。その寄港地、それから、そろそろ飽きてきたから、逆にピラミッドを見たから、帰ってきたその日に純和食のメニューを出します。
 
可愛い海洋動物との出会いもあります
 
デッキランチ
 
 いろんなものを少しずつ食べるというようなメニュー構成になっています。一番下に日本酒というのがございます。ご心配なく。日本酒を買って乗船なさらずとも、日本酒もちゃんと船内にございますので、ご安心してご乗船なさってください。また、ある日は地中海料理。たいてい、目的に行く前にこういう、その目的地の風土にあったメニューを出します。また、ここを見てください。押し寿司、香の物。ここらあたりが日本船ならではの心くばりではないかと思います。
 
世界一周のメニュー例((1)夕食/北海の幸フェア)
・蟹づくし(タラバ蟹、ズワイ蟹、ストーン・クラブ、伊勢海老)
・スモーク・サーモンの飾り盛り
・鮭のチャンチャン焼き
・和牛サーロイン・ロースト・ビーフグレイビィ・ソース
・鹿肉赤ワイン煮込み
・焼き鳥各種
・おでん
・手巻き寿司各種
・蟹身ちらし味噌汁 香の物
・ハムカツ・サンド 和風ソース味
・サラダ各種
・フルーツコーナー(柏餅・水牡丹・朝顔。・ざくろ風苺ショートケーキ)
・日本酒(亀の尾)
 
世界一周のメニュー例((2)夕食/地中海フェア)
・ブイヤベース
・生ハム、オリーブ、チーズコーナー
・アスペク・ゼリーの盛り合わせ
・鯛のイタリア風焼き
・エスカルゴのマッシュルーム詰め焼き
・鴨とドライ・トマトのグリル パスタ添え白ワイン・オリーブ・ソース
・牛肉の赤ワイン煮込み
・ラムの香草風味焼きマスタード・ソース
・焼き鳥各種
・パエリア
・押し寿司 香の物
・イタリアンサンド
・オリジナルひとくちピザ(カルツォーネ)
 
○船旅ならではの体験
 2003年のにっぽん丸の世界一周クルーズは、キール、パナマ、スエズという3つの運河を通りました。
 一口にクルーズといっても、いろんなクルーズがあります。この画像はアラスカクルーズですね。日本人に最も人気のあるコースでもあります。
 で、クルーズの楽しみの中で、何を楽しんでいるかというと、くじらを見た時ですよ、イルカが追っかけてきたとですよ。といっても、陸(おか)の方にクルーズの楽しさを伝えるというのは至難の技です。体験した方だけがわかるこの開放感。
 また、日本近郊のクルーズになりますと、寄港地が観光地というだけに限らず、地元の人がどんなレシピで迎えてくれるかというのも、寄港地の魅力の要因になります。初めて船がその寄港地を訪れると、必ず記念の品をいただきます。
 また、日本船籍ならではの良さで大浴場がある。つまり世界一周をですね、自分家とお風呂と引きずって行くという開放感。これ、左側に窓があるんです。ですから、お風呂に入って海を見ながら航けるのです。
 日本にはいろんな海域があります。私、瀬戸内海クルーズが好きなのは、門司港を出て、関門海峡を通って、来島海峡大橋、瀬戸大橋、それから明石海峡の下をくぐっていくという、非常に雄大な体験が出来ることです。
 また、今年の8月13日の関門花火大会の時に、飛鳥とにっぽん丸の2隻の船が下関に停泊しておりました。お客様はもう大喜びで、船上から見る花火大会クルーズというものも良いものです。
 世界一周クルーズなんですが、平均年齢68才。男女比でいきますと、やや女性の方が多いです。皆さん、世界一周クルーズというと、どんなお金持ちがいくんだろうとお思いでしょう。もちろん、中には本当にお金持ちもいらっしゃいますが、こつこつとお金をためて、いつかは世界一周クルーズに乗られるお客様もいらっしゃいます。2人分で600万円位からですね。
 
大自然との出会い







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