(8)港湾活用のまとめ
(1)ストックヤードの導入
岸壁の直背後の用地に使用済自動車等の集荷、選別、保管などを行うためのストックヤードを整備することにより、内陸部にヤードを設けるよりも効率的かつ円滑な輸送を実現することができる。
海上輸送する岸壁までの輸送は近接しており、港湾荷役機械の利用も可能であり、輸送コストを削減し、効率的な荷役も可能となる。また、輸送先のリサイクル工場が岸壁直背後の場合、岸壁−岸壁間の海上輸送となり、極めて効率的である。
しかし、ストックヤードの整備については、ニーズ、用地の余裕、他の貨物の取り扱いを圧迫しないこと、台風等の影響のないことなどが条件となることから、個別の港湾の特性等に応じて検討する必要がある。
(2)リサイクルステーションの設置
港湾地区にリサイクル資源の集荷、保管スペースを設け、適切なタイミングでの海上輸送を可能とする施設をリサイクルステーションとする。
港湾に設置するリサイクルステーションには、3つのタイプがあり、各港湾におけるニーズ、港湾の特性等に応じて検討する必要がある。
なお、どのタイプであっても、ストックされたリサイクル資源やスペースの適切な管理が必要である。
表−6.3.19 港湾設置のリサイクルステーションの諸タイプ
タイプ |
持ち込み者 |
主要品目 |
事例(計画を含む) |
業者の共同ストック |
リサイクル事業者 |
廃家電(家電販売業者)
ビン(酒販店)
バッテリー(自動車整備業者) |
名瀬港(ビン等)
古仁屋港(廃家電、バッテリー等)
亀徳港(廃家電) |
クリーンセンターからの
リサイクル資源ストック |
収集運搬業者 |
ビン、缶(スチール、アルミ)、ペットボトル等 |
与論港(計画中) |
住民持ち込み
リサイクル資源ストック |
住民 |
ビン、缶(スチール、アルミ)、ペットボトル、古紙等 |
名瀬港(佐大熊地区) |
|
注1: 海上コンテナを港湾の一定の場所に設置し、そこにリサイクル資源を持ち込むタイプが多い。
注2: リサイクルステーションを学校、公民館などに設置する考え方もある。
図−6.3.3 港湾活用のイメージ図
(3)港湾におけるリサイクル資源の取り扱いルールの確立
使用済自動車やペットボトル、缶、ビン、古紙等の港湾における集荷、保管等(リサイクルステーションの設置)は、効率的な集荷、輸送に貢献し、全体としてのリサイクルを推進する可能性がある。
一方、用地の余裕の有無、台風の影響などの検討が必要であるし、設置するにしても、他の貨物との調整や管理のあり方などが検討される必要がある。
また、リサイクル資源の港湾の取り扱いにおいて、全体としての効率性、円滑さの確保とともに、環境、安全性、景観への配慮などが必要である。
上記の点に対応するために、各港湾におけるリサイクル資源の取り扱いについて、港湾管理者、港湾運送事業者、船社(代理店)、リサイクル事業者などにより、望ましいルールを検討、確立する必要がある。
(4)環境リサイクル拠点としての港湾の活用とクリーンアップ
これまで港湾における使用済自動車のストックヤードの導入、ビン、缶、ペットボトル等のリサイクルステーションの設置を検討してきたが、これらは同時に、地域住民や小中学生の環境学習施設として、港湾の役割やリサイクルの実態と重要さを学ぶものとして活用することができる。
また、地域の人々が日常的に利用し、かつ観光客などが訪れる島の玄関として、港湾の清掃や景観向上によるクリーンアップが望まれるところである。
ここでは、奄美群島における静脈物流ネットワークの実現化に向けた取り組み方策と関係者の役割分担を検討する。
(1)実現化に向けた取り組み方策の検討
(1)使用済自動車等のリサイクルに関わる関係者の協議の場の設置
奄美群島における使用済自動車等のリサイクルの推進に向けては、行政(市町村、県、国)と民間企業(自動車販売・整備、リサイクル等)との連携、協力が求められる。
各島については、市町村、民間企業が団体を設立し、会合の開催等により連絡・調整等を行い、自動車リサイクル法に関わる事項の検討を行う。
上記の各島での会合の一方、奄美群島全体の自動車リサイクルを中心とする行政関係者の連絡・調整、協議の場が設置されることが望ましい。そこにおいて、使用済自動車の集荷、保管、海上輸送の望ましいあり方等についての情報交換や国への要望等を協議することが考えられる。
(2)港湾におけるリサイクル資源の取り扱いルールの検討
使用済自動車やペットボトル、缶、ビン、古紙等の港湾における集荷、保管等(リサイクルステーション)においては、他の貨物との調整や管理のあり方などが、効率性、円滑さ、環境、安全性、景観への配慮を踏まえて、確立される必要がある。
そのため、港湾管理者、港湾運送事業者、船社(代理店)、リサイクル事業者などにより、港湾におけるリサイクル資源の望ましい取り扱いルールを検討、確立する必要がある。
なお、同時に、リサイクル資源の保管・輸送拠点として、通常時における港湾のごみの清掃についても検討されることが望まれる。
(3)住民の理解の促進
使用済自動車のリサイクルの推進のためには、何より、この制度についての住民の理解と協力が必要であり、広報等を実施することが重要である。
また、使用済自動車をはじめとするリサイクル資源が港湾・海上輸送を通して輸送されリサイクルされている点についても、住民の理解を得ることが重要である。リサイクルや、環境向上における港湾・海上輸送の果たす役割についての理解があれば、港湾におけるリサイクル資源の保管や荷役に際し、迷惑的な見方ではなく、好意的な見方が期待できよう。そのためには、単なる広報だけでなく、港湾のリサイクル関連施設の情報公開、施設公開や清掃等の周辺対策も必要となる。
(4)奄美群島における取り組みへの支援の確保
奄美群島においては、離島であることにより、(1)人口・産業集積が少なく、廃棄物等の発生量が少ない、(2)島内にリサイクル事業者がいない、もしくは少ない、(3)輸送費を要する等によりリサイクル資源の焼却・埋立、不法投棄などが生じている。
これに対し、関係業界による支援、また奄美群島の自治体や民間事業者の尽力により、使用済自動車等のリサイクルを推進する体制が築かれつつある。しかしなお、輸送費の高さ、特に二次離島の輸送費の高さとリサイクルの困難さ、指定取引場所がないことによる割高な家電リサイクル等の問題がある。
これらについては、奄美群島の関係者の尽力とともに、全国的な関係団体、国などの支援が不可欠であり、関係各位に積極的にお願いし、必要な支援策が確保、実施されることが重要である。
必要な支援として、以下のものがあげられる。
・二次離島の使用済自動車の海上輸送費の10割補助
・港湾内における使用済自動車の横もち費用の支援対象化
・使用済自動車輸送のための専用コンテナの確保
・海岸清掃などへの支援
(5)取り組みのフォローアップ
本調査で提案された使用済自動車をはじめとするリサイクル資源の効率的、円滑な輸送のあり方については、今後の関係者の取り組みを踏まえてフォローアップされ、改めて、実現に向けた関係者の合意形成と取り組みが展開されることが必要である。
特に使用済自動車の海上輸送費への支援に関しては、自治体の計画は策定中であり、実際の支援は平成17年秋からの予定である。したがって、これらの実施状況を踏まえて、関係者の取り組みが検討されることが必要である。
(2)関係者の役割分担
奄美群島における静脈物流ネットワークの実現化に向けては、関係する官民の関係者の連携、協力が必要である。各方策により関係者の関わりは異なり、それぞれの役割分担は以下の様に整理される。
表−6.4.1 関係機関、団体等の役割分担
提案事項 |
市町村 |
住民 |
民間
(販売等) |
民間
(リサイクル) |
海運
港湾
事業者 |
県 |
国 |
使用済自動車等のリサイクルに関わる関係者の協議の場の設置 |
○ |
- |
○ |
○ |
○ |
○ |
- |
港湾におけるリサイクル資源の取り扱いルールの検討 |
○ |
- |
○ |
○ |
○ |
○ |
- |
住民の理解の促進 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
- |
奄美群島における取り組みへの支援の確保 |
○ |
- |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
取り組みのフォローアップ |
○ |
- |
○ |
○ |
○ |
○ |
- |
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