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II 首都圏での「おやじの会」立ち上げ支援事例のその後
 
 小平市立第六小学校、小平市立第八小学校、浦安市立日の出小学校、八王子市立宮上小学校の事例については、平成17年2月5日開催のフォーラム・ワークショップでの事例報告を引用しています。
 
小平六小地区父親ネットワーク(小平六小おやじの会)
代表 船切 誠氏
 
 初めまして、多摩の小平市の第六小学校に娘がいま2年生で行っております船切と申します。よろしくお願いいたします。
 タイトルに「第2の幼なじみたち」というタイトルを付けさせていただきました。これは、たまたま小平第六小学校の1年間を小学館の「入学準備号」に掲載するということで、1年間ずうっと通しで小学館の方々が来て取材をされていました。最後に「おやじの会」の活動をインタビューしたいということでお話をさせていただいたんですけれども、そのときに「おやじの会」のメンバーの1人がいちばん最後に決め言葉を言ってくれたんですね。「私たちは第2の幼ななじみなんです」。「ああ、なるほどね」という感じが私たちあって、いま私たちがやっている「おやじの会」というのはたぶんこの言葉がいちばん表しているんじゃないかと思いましたので、ちょっとタイトルに付けさせていただきました。
 小平の第六小学校というのはどういうところかというのを、まず簡単に。昭和33年に開校したのだそうです。ブリヂストンの東京工場の横に小平第六小学校は建っておりまして、校長のお話を伺うと、そのブリヂストンの社長さんが、主に社員のためなんでしょうけれども、学校を1校、ぽーんと寄付して下さったと。昔のやっている方はスケールが違うなというふうに感じた覚えがあります。
 小平市のほうでは「地域で育てよう、健やかな子ども」というテーマで教育をやっています。六小の特色として「地域の風がいきかう学校」というテーマで、地域ぐるみで子どもへの教育等を行っています。
 校長は稲田校長先生という女性の方です。われわれがいまやっている活動に大きな影響を与えているのですが、「斜めの関係」ということをよく言われています。このスライドに四角が書いてありますが、あれが1つの家庭だと思って下さい。そのなかに親がいて、子どもがいるわけですね。当然、家庭は1つではありませんから、他の家庭もありまして、そこにも親がいて、子どもがいる。親子関係がこうあるわけですね。
 通常、近所付き合いと言いますと、その親と親との近所付き合いの関係ですとか、子どもは子ども同士で学校のなかでの関係を結んでいる。だけど校長がおっしゃるには、これだけではだめで、地域でということにするためには、こっちゃの親とこっちゃの子ども、こっちの親とこっちの子ども。ですから親が、先ほどのお話にもありましたけれども、よその子のことも見られる、そういうことができる関係をつくっていかないといけないというのを、よく稲田校長はおっしゃられております。
 それを「斜めの関係」とおっしゃっていて、まとめてよその子どもにも関わっていきますよと。基本的な話ですね、挨拶をする、ほめる、そういう形で普通の関わり方をしていって下さいね。で、地域が育てる子どもたちとなります。
 でもそうするためには、結局、親同士がしっかりコミュニケーションが取れていないといけない。先ほどこちらとこちらとありましたけれども、親と親とが知らないと、こっちの親がこっちの子どもを例えば叱っていいのか分からない。場合によってはゴツンとやるかも知れないわけですが、「それをやってもいいね」という了解が得られていないと、それは訴訟になっちゃうわけですから、そういう親同士のきちんとしたコミュニケーションが必要でしょうと稲田先生はおっしゃっています。
 多くの場合は、例えばPTAもそうですけれども、お母さん方が多くて、お母さん方のコミュニケーション、例えばサッカーだの野球だのといろいろありますけれども、そういうところで週末にお手伝いしてくれる方々は、どうもお母さん方が多いらしい。女性の方々の間でのコミュニケーションは取れているんだけれども、父親間では取れているんでしょうか?というのが、われわれ「おやじの会」の人間も思っているところでもあります。
 これはきょうは付けたりですけれども、地域が求めるだろう父親像というのはこういうことなのかなあと思っております。時間がないので飛ばしましょう。
 「おやじの会」ができたのは、あとで日付はたしか書いたと思うんですが、2003年の夏頃です。六小のPTAの行事で「PaPaっと夏まつり」という行事がありました。これはお父さんたちを学校に呼んで、いろいろ何かやってもらおう。まず何せお父さん方に来てもらおう。そういうのを目的にしたイベントで、2003年で3回目です。
 そのときにたまたま「運営をするお手伝いを募集しています」という紙があったのに名前書いて出したのがいまこの状態です。お父さん方が企画・運営するというスタイルでやっていたんですけれども、実際にはPTAの方々がいろいろなものを決めてやっていて、お膳立てをいろいろしてくれて、「いや、お父さんたち、いてくれればいいから」というような状態だったんですね。
 それがたまたまこの年に手伝ったお父さん方にとっては、言い方は良くないけど、とても屈辱的な、とても嘘をついているような、フェアじゃない感じがものすごくしたんですね。飲みながらの打ち上げですね。それには校長とか教頭もいたんですけれども、「お父さんたちの運営じゃないよ。だから来年は本当にお父さんを集めて、お父さんで企画・運営もやろうね」というふうに言ったのが「おやじの会」のいちばん最初のきっかけ、動機になりました。
 それで9月に「いちおうこんなふうな内容でやります」というので、校長に趣意書みたいなのを出して、9月に立ち上げることになりました。
 いちおう代表として私がやらせていただいています。いま2年生の女の子ですけれども、やっております。メンバーは大体2年生から5年生まで。なぜか2年生のお父さん、低学年のお父さんが多いんです。名簿に載っているのは13名おりますけれども、実際によく動いているのは8名ぐらいです。多いほうなんじゃないかなあと思います。いちおう校長と教頭にも顧問という形でいろいろご相談とか、まず学校のいろいろな施設を使うということに関して、お父さん方知っているわけがありませんから、そのへんのインターフェースをいろいろお願いしてやっていただいたりしています。
 目的は何か。「おやじの会」の目的。2004年の「PaPaっと夏まつりはお父さんたちでやりましょう」というのがいちばん最終的なゴールとしてあったんですけれども、まずコミュニケーションですね。自分たちの周り、自分たちが住んでいる地域のお父さん同士のコミュニケーションを取っていきたい。「あそこのお父さん知っている」「このお父さん知っている」、駅から出て家に帰るまでの間に知っている人がいれば、「こんばんは」とでも言えるようなコミュニケーションが取れる状態にしたいなというのが目的になっています。
 お父さん同士がコミュニケーション取れたら、あとは子どもとも話ができるようになるし、そうすれば、その地域でのお父さんの居場所というんですか、お父さんのポジションというものが見えてくるんじゃないか。そういうところのコミュニケーションを取っていきたいというのが目的になります。
 どういうことをやってきたかですが、先ほどもお話にあったイベント型になってしまうのは致し方ないことで、いちばん最初、子どもたちとあと家庭の方々一緒に集めて、学校の敷地内でいろんなことをやりたいな。いまのところ、年に2、3回アナウンスして来てもらってやっています。
 それから学校の行事、いろんな形で学校に参加って書いてありますけれども、実際には呼びつけられているというのが正しいんですけれども、「『おやじの会』から誰か出てよ」、そういう形で呼ばれているわけですけれども、そういうところにいろいろ行って、主に学校のなかでいろいろ紙芝居やったりだとかということもやっています。
 会を運営する上では、メーリングリストという形でネットでメールでいろいろコミュニケーションし、連絡を取り合っています。あとはフェース・トゥ・フェースが必ず必要で、毎月必ず1回、時間を取って、そこでいろいろなお話をしています。もともとは「のみ屋でコミュニケーション」というのを本当はやりたかったので、2003年のその立ち上げ直後ぐらいというのはそういうことばっかりやっていましたね。だけど、真面目なことも考えなきゃならないケースもあるから、毎月まじめに話さないといけないでしょう、というのが真相です。これは、学校の部屋を借りてやっております。
 どんなイベントをやったのかですけれども、2003年度は、いちばん最初に、「ラーメン&カレーづくり体験」というのをやりました。これは、「食の探検隊」というパッケージを持ってきていただいて、それで人を集めて何かイベントができるというものです。
 国際理解教育情報センターさんというところからの紹介で、「食の探検隊」というプログラムを使わせていただいたんですけれども、それをいちばん最初やりました。われわれ、何もノウハウがないところで人を集めて何かやって、それで「あっ、良かったね」という体験をするには、ゼロベースでやるとうまくいきませんので、いちばん最初はこういうことをやりました。
 それから学校公開日というのがあるんです。1週間ぐらい長い学校公開日というのがあるんですけれども、そのなかの1日で「読み聞かせにお父さんたち来てよ」と言われて行ったりだとかしています。あと、新入学児童の保護者会で「こういうことをやっています」という話もしています。
 あと2月8日、これは去年ですけれども、「芋煮会」というのをやりました。これは「おやじの会」だけで、子どもたちを集めてきて芋煮の鍋を3つつくりました。基本的な食べ物のセットは決めてあるんですが、子どもたちをチームに分けて、チームで何か特色を出すということで買物に行かせたんですね。どういう鍋にしたいのかみんなで打ち合わせをして。たしか1,000円持たせて、ものを買ってきて、そこに入れて下さい、というのをやりました。
 あとは青少対の綱引きというところにも呼ばれて参加しています。
 2004年度なんですけれども、入学式で説明したりだとかしていますが、あと、保護者へのアンケートということで、特にお父さんたちに「子どもに関してどんなことをしていますか」というアンケートを取りました。集計した結果をフィードバックしていないので、とてもよくないアンケートなんですけれども。「『おやじの会』はPTAとは違いますよ」というふうに紙に書いて出しているのにもかかわらず、やはりPTAの1部門だと思われていたりとかするので、仕方ないのかなとか思っています。
 「PaPaっと夏まつり2004年」というものの企画を全面的に私たちやりました。私たち的にはとりあえず最初の目標はクリアできて良かったな、自己満足かも知れませんが、うまく行ったんじゃないかなと思っています。
 それから去年の11月末には「ペットボトルロケットを飛ばそう」ということで、食べ物ばっかりやるというのも何か変なので、食べ物以外のもの、理科的なものをちょっとやってみたいというのでやってみました。これも結構好評で、ペットボトルロケットって、普通の市販のペットボトルをつなげて、空気を圧縮して入れてピューッと飛ばすものなんですけれども、ちゃんと飛ぶのもあるし、飛ばないで後ろに飛んでくるものだとかあるんですけれども、それでもやはり楽しいイベントになりました。
 お父さんも一生懸命こう空気入れを押したりしてくれて、良かったと思います。優勝したのは84メートル飛んだ1年生がつくったロケットで、あとでトロフィーですとかいろいろつくって渡したりしています。
 で、「PaPaっと夏まつり」をくわしく。7月にやりました。このスケジュール決めからわれわれは関与してやっています。いつぐらいにやったらいいのか。たまたま1学期の終業式の2日ぐらい前にやりました。いちおう、「大々的にいろいろやっても大丈夫でしょう」という校長先生からの了解をもらいました。
 ふつう、「おやじの会」の定例会は5時から6時までの打ち合わせで1時間ぐらいで終わるはずだったんですけど、このためだけに毎週、毎週3時ぐらいから5時、6時ぐらいまで学校で打ち合わせをしていました。メーリングリストでもやっていましたけども、メールで3カ月間で350通ですから、1カ月の間に100通のコミュニケーションをやっていました。
 特に僕らの企画で良かったなと思うのは、「水鉄砲バトル」という、水鉄砲で水を掛け合うんですけれども、頭に、金魚すくいのすくうものをくっつけて、それでこう撃ち合うというものです。
 あと、スポーツチャンバラというのをやってみたいというお父さんがいたので、軟らかい棒で叩く、いちおう防具をきちんとつけてやるんですけれども、そういうのをやりました。これは小平に指導できる方がいるということを知っていたPTAのお母さんがいらっしゃったので、その方経由でお願いをして来ていただいています。
 この値はPTAがまとめた値ですけれども、このぐらいの規模で行いました。このとき人手が足りなくて、僕はうちの会社の若い連中を4名ぐらい連れてきて手伝わせた覚えがあります。
 そういうイベントをいろいろいままでしていたんですけれども、今後どういうふうにしていったらいいのかなというふうなことも考えています。食べ物ばかりのイベントというのは何かいやだなと思って、それでペットボトルをやりました。何か理科系っぽいとか工作系っぽいものは、お父さん方はなんとなく比較的出てきてくれそうな感触をいま得ています。
 基本的にはお父さんと家族一緒に、それから、一人親家庭もあるので、そのへんのところを配慮しながら、みんなで楽しめるようなイベントをしていきたい。
 やはり本当はパワーをどう引き出すのか。お父さんが持っている力が、何を知っていて、何ができるというのが見せられるようなものをやっていきたいなと思います。むずかしいんですけれども、やっていきたいという気持ちだけはあります。
 あと、3月に「お菓子アートをつくろう」。なんでお父さんでお菓子をつくるんだろうということもありますが、たまたまこれもメンバーが「お菓子をつくってみたい」というところで、次はやってみよう。お菓子で何か工作をしてみたい。ジオラマをつくりたいと最初言っていたんですけれども、なかなかむずかしいのかなあと思っています。
 あとは入学式で説明したりですとか、ペットボトルロケットは受けが良かったので、もういっぺんやってみるといいんじゃないかなと思っているところです。
 それから遊んでいるだけでいいのかというふうにも思っています。楽しむということはいいんですが、学校の周辺に変な人がいろいろいます。うちの子どもは学童に通っているんですけれども、私の自宅は学校から結構近くて、数分で家に着くんですが、その間の通りに止まっている車から「お菓子あげるよ」っていうふうに言われたりしたらしいんですね。子どもはそのまま真っ直ぐ帰ってきたんですが、そういう人たちがいる。これに「おやじの会」はどういうふうに反応したらいいんだろうか?だから遊んでばっかりで本当にいいんだろうかというふうには思っています。
 あと、地域でいろいろふれあい活動ということで、このへんのケアでいろいろ道に立っていただいている民間の方々いらっしゃいますので、そういうものと一緒にやるべきかなというふうにも考えています。
 あとは、いまはコアメンバー7、8名でやっておりますので、もう少し増えないと、やりたいことができなかったりしています。ウォークラリーをやりたかったんですが、ウォークラリーをやるときには、安全を考えると、あちらこちらにいろいろ立って、「あっ、来ている」とかっていうのをちゃんと連絡していないと、むずかしい。それをやるには8人では無理なんですね。何チームかで歩かせると、30人とか40人とかスタッフがたぶん必要なんですね。そういうのをやるには人間の数が少ないので、いろいろしなきゃいけないなあと思っているところです。
 このスライドの内容はうちの家庭のことなんですけれども、よその子どもばっかり見ていくと、自分の家のなかが崩壊してしまうんですね。たまたま、すみません、私事ですけれども、12月にまた子どもが生まれまして、特に妻がちょっとナイーブな状態になっていて「外へ行かないでよ」と。おやじの会ばっかりやっているというのは、本末転倒な話ですね。親子関係とか夫婦関係がおかしくなるというのは本末転倒な話だと思います。だからボランティアだけでいいというわけではない。地域が求めているかも知れないけれども、そればっかりに走ってもどうしようもないですね。
 お父さん同士のコミュニケーションを取るには、飲んでるほうが比較的話がしやすいんですけれども、でも、飲んでばっかりいると、「遊んでいる」というふうに評価されますので。「なーに、『おやじの会』っていって、結局、飲んでるだけじゃーん」というふうに。いや、そうなんですけど、それも何かいやだなと。「地域振興」と、みんな飲んでいるときにはそう言っていますけれども。
 これは稲田校長が撮った写真ですね。これはペットボトルロケットをつくろうというものでやったものです。こういうのをみんな一生懸命、これは図工室ですけれども、ここでつくっていました。
 このときには、自分で好きなものをつくって、それを校長先生の前に行って写真を撮ってもらって、それを後で子ども一人ひとりにその写真を返してあげる。そのために校長先生に撮っていただいています。こういうときには容赦なく校長を使っております。
 このへんですね。みんな結構、自慢げに見せていますね。
 これが発射台で、これが自転車の空気入れですね。これを何回かやって、自転車のブレーキみたいなところをギュッとにぎると、これがシューッと飛び出すというしくみです。インターネットで1万何千円かしました。これをみんなで買いました。
 以上、小平六小の「おやじの会」をご紹介させていただきました。







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