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= 学校及び父親を活用した地域教育力推進事業 =
子どもと交わろうプロジェクト
まえがき
 本事業は、昨年度の「パートナーシップによる地域の教育力推進事業」の継続事業である。主要な中味は二つ。
 ひとつは、首都圏でモデル的に取り組んだ5つの小学校の「おやじの会」立ち上げのフォローアップである。これには当財団みずから取り組んだ。
 もうひとつは、昨年度「おやじの会」等の実態調査でご協力頂いた6つの地域プロジェクト委員会による、前年度の経験を生かした形での「おやじの会」等の受け皿団体(以下受け皿団体と略称)2校(あるいは2団体)を目標にした、その立ち上げへの取り組みである。
 前者については、PTAとの関係、中核になるお父さんがいるかどうか等々の事情により、結果として取り組みに温度差がでてきているが、受け皿団体への参加者は昨年度に較べ、着実に増えている。
 後者については、もとより地域性、もっと具体的にいうならば、もともと地域に子供会やPTA等々既存の組織があり、それらを活性化することで子ども達の活動の受け皿になる地域もあれば、新興の住宅地で既存の組織が無く、新たに「おやじの会」のような組織を立ち上げる必要がある等々、その地域性は様々であったが、それぞれの地域でモデルになりうる受け皿団体ができた。
 さらに、地域によってニュアンスの違いはあるが、ひとつ共通していえることは、地域プロジェクト委員会が関係する学校や地域の団体間のネットワーク構築を強く意識して取り組んで頂いた結果、受け皿団体同士のコミュニケーションが良くなり、互いに学び合うようになったことである。
 本事業は、文部科学省が平成16年度より開始の「地域子ども教室推進事業」に先行する形で取り組んできた事業である。当財団が考える望ましい出来姿、具体的には、週末にお父さんと子どもで学校等に行けば、「おやじの会」が企画する複数のイベントをやっており、好きなものにそれぞれが参加する。お父さんは、自分の子どもだけで無く他人の子どもにも積極的に関わり、子ども達が自発的に何かやるのを手助けするといった姿までは、未だ道遠しの感はあるが、これに向かい、一歩一歩着実に近づきつつあることは、間違いない。
 なお、本報告書では、上記の二つに加え、首都圏でのモデル取り組み事例を踏まえて開催のフォーラム・ワークショップおよび、新たにモデルとして選んだ6地域でのフォーラムの概要もまとめて掲載した。
 以上を参考に、より多くの地域でお父さん達が「おやじの会」に参加し、社会参加の第一歩を踏み出されんことを期待したい。
 
はじめに
[子供の居場所づくりと父親の社会参加]
お父さん達への10の提言
 子ども達が健全な社会人になるためには、子どものころから多様な大人とふれあうことが大切です。あなたの力を日本の未来を背負う子ども達のために注力しましょう。子ども達と接するには、次のような心がまえを持ってほしいと思います。
 
1. 主人公は子ども達。子ども達にあなたの気持ちを押しつけず、子ども達の気持ちをあなたが受け入れよう。
2. 子ども達が仲間どうしでぶつかりながら、自分達で考え、問題を解決していくのを、辛抱強く見守ろう。
 
 そのために
3. 教えることは学校にまかせ、子ども達の能力を引き出すことに専念しよう
4. 子ども達が楽しむことを、自分たちも楽しもう
5. 子ども達の知恵や意欲を大いに取り込んで活動しよう
6. ほかのお父さん達とも友達になろう
7. 先生方も上手に誘い込もう
8. 活動をしていないお父さん達にも、参加の呼びかけをしよう
9. 出来ればお母さんも入り、家族ぐるみで活動しよう
10. 子ども達が好きなことをしていきいきとしてくれば、それがあなたの勲章になります
 
(財)さわやか福祉財団 理事長 堀田 力
 
こどもの居場所づくりとお父さんの社会参加
 古来、子どもはお父さんの背中を見て育つといわれている。
 お父さんの日常とは違った姿を見て、子どもが社会性を身につけ、自立することが、本事業の主たる狙いであるが、実は、この事業にはもうひとつの狙いがある。それはお父さんの社会参加である。
 今のお父さん、特にサラリーマンといわれる勤労者は、本当に仕事に忙しい。企業を取り巻く経済的、社会的な環境が激変する中、仕事をこなすだけで精一杯、子どものことは、お母さん任せという家庭が多いのではないだろうか。
 昨今、産業界の一部で「ワークアンドライフバランス」といったことが、叫ばれ始めているが、21世紀の日本をよりよき社会にするためには避けて通れない過程であり、解決すべき課題であろう。今、産業界をはじめ、様々なセクターで論議されている「企業の社会的責任」にも繋がる話でもある。
 その意味でも、勤労者の一人ひとり、特にこれからの産業界を中心的に担っていく30歳台、40歳台の勤労者であるお父さんには、この点を理解頂き、たまの休日には、子どもと一緒に学校等に出掛け、「おやじの会」の活動に参加頂くことを提唱したい。







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