2003/01/05 産経新聞朝刊
危機にヒンする地方競馬 今年度売り上げ、5000億円割れ確実
庶民の身近なギャンブルだった地方競馬が危機にひんしている。全国二十六地方競馬場の今年度の売り上げは、史上最高額だった平成三年度の約半分の五千億円割れが確実。競馬場間の馬や騎手の交流や、開催日をお互いにずらすなどの改革も講じられているが、景気低迷の壁は厚い。農水省も対策に乗り出した。
(河嶋一郎)
◆不況の壁厚く農水省改革開始
地方競馬は戦後すぐの時期には、沖縄を除く各都道府県に一場以上の計八十五場あった。戦災復興に果たした役目を終えて縮小され、現在では二十六会場で運営されている。最近は経営難から閉鎖するケースが相次ぎ、平成十四年は益田(島根県)が閉鎖、来年度からは足利(栃木県)が開催を取りやめる。
「地方競馬全国協会(地全協)」によると、十四年一月から十月までの売り上げは総額四千七十五億円だった。
バブル景気にわいた平成三年度には九千八百六十二億円を記録し、関係者が「一兆円も目前だ」と喜んだ時期もあった。ところが、その翌年から一転してマイナスに。今年度の四月−十月期でみても前年同期比92.8%の三千六十一億円にとどまる。今年度は約三十年前並みの五千億円割れの可能性が強いという。
地方競馬の発展を阻んだのは「一場完結型」の経営といわれる。場外馬券売り場が少ないため、馬券を場内で買う人が多く、場内と場外との売上比率は、日本中央競馬会(JRA)が一対九であるのに、地全協側はほぼ半分ずつで、ファン層が広がりにくい。
そこで地全協では各地の競馬場をブロックに分け、お互いに開催日程をずらすことで、少し離れた場所の開催でも投票できるように工夫した。それまで同じ競馬場で走ることの多かった馬や騎手を交流させることで、迫力のあるレース作りを目指した。
このため、全体の延べ開催日は十四年一月から十月で前年同期と比べ約百三十日減り、千五百八十日となったが、一日平均の売り上げは前年比100.9%となるなど改善の兆しもみられる。
地方競馬では十四年八月、大井(東京)で約九百七十五万円の国内公営ギャンブル最高額の配当がでたことがあり、意外性のあるのが魅力だ。
地全協幹部は「市場を効率よく全国に広げていくことが課題。ブロックごとの競馬場を中心に、より魅力的なレースを目指さなければ」と話す。
農水省では、「競馬のあり方にかかる有識者懇談会」を設置し、改革の方向性を探り始めている。
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