ブルーリ・アルサーと呼ばれる悲惨な細菌感染の皮膚病が、熱帯を中心に二十四カ国に広がり、さらにまん延する気配を見せている。皮膚組織が破壊され、衰弱から死亡するケースもあるが、本格的な研究はされておらず、ワクチンも未開発だ。世界保健機関(WHO)が研究チームを発足させる中、日本財団(東京、曽野綾子会長)がWHOへ五十万ドルの支援金の拠出を決めるなど、日本でも支援の機運が高まり始めた。
WHOへの報告では、ブルーリ・アルサーはここ数年、熱帯諸国で急増。アフリカのコートジボワール(象牙海岸)やカメルーン、中南米のメキシコやペルー、アジアのインド、インドネシア、それにオーストラリアなど二十四カ国にのぼる。
コートジボワールでは、この三年間で五千人以上が感染。同じ西アフリカのベニンでも、この十年間で二千三百人が感染した。世界的な調査はなく患者数は不明だが、結核、ハンセン病に次いで三番目に多い細菌感染症とみられている。
患部を切除して皮膚移植すれば一応、治癒するが、発展途上国では医療施設が不十分で、消毒などの初期治療さえできない。このため入院が二、三年に長びいたり手足の切断や後遺症の出る患者も急増。農村では働き手が奪われて経済にも影響が出るなど社会問題に。患者の半数以上を子供がしめている点も深刻だ。
ブルーリは、患者の大量発生が最初に報告されたウガンダ(中央アフリカ)の地名。アルサーは潰瘍(かいよう)の意味。感染すると皮下に結節ができる。痛みはないが、かゆみが出ておできになり筋肉組織まで破壊、全身に広がる。失明や衰弱死も報告されている。
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