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1999/07/13 産経新聞朝刊
日本財団 100以上の学校をカンボジアに建設 旧ポト派地区中心に
 
 【プノンペン12日=宇都宮尚志】カンボジアを訪問中の笹川陽平・日本財団理事長は十二日、サル・ケン副首相兼内相とプノンペン市内で会談し、カンボジアの教育向上に役立てるため学校建設を進めていく考えを明らかにした。
 計画では、教育が荒廃している反政府勢力、旧ポル・ポト派の元支配地区を中心に実施し、軌道に乗れば百校以上を建設する予定だ。日本が旧ポル・ポト派の元支配地区に学校建設を行うのは初めてで、日本財団としては教育整備を通じて、人材育成を図るとともに、国内の安定化にもつなげていきたい考えだ。
 カンボジアは昨年七月の総選挙を経て同年十一月、新政権が発足、新たな国造りに乗り出した。しかし、これまでの混乱で、社会基盤の整備が遅れ、教育分野では、学校不足が深刻な問題となっている。
 同国の社会資本を向上させるため、一九九四年に日本政府や世界銀行が中心となって「カンボジア社会基金」が設立されたが、千四百校以上の学校建設の要請が寄せられ、資金が不足。日本財団が支援に乗り出すことになった。
 新設される学校は三−五教室を備え、一校当たりの建設費は、教員の給与や教材も含めて約二万四千ドル。十校程度を旧ポル・ポト派が支配していた西部パイリンに設置し、三−四年かけて成果をみながら、対象地域を拡大していく。資金は世界銀行と折半する。
 旧ポル・ポト派は昨年末に最後の最高幹部らが投降し消滅したとはいえ、パイリンには政府に帰順した元兵士ら約二万人が集結して自治区を形成している。
 サル・ケン副首相は「戦火が続いたカンボジアでは国民が政府を信じる体制づくりが求められている。学校建設はその重要な役割を果たす」と期待を表明。笹川理事長は「学校は国民のコミュニケーションを推進する。危険要素をはらんでいるパイリンに建設することは、国内の安定化に寄与する」と語った。
 
 
 
 
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