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1997/10/16 産経新聞朝刊
【新時代の風景】ナイターレース 群馬・桐生競艇場 全国初
 
 軽快なエンジン音とカクテル光線がまぶしい“夜の水辺”で勤め帰りの会社員やOL、カップルが、水しぶきを上げて疾走するモーターボートを目で追っている。全国二十四競艇場のトップを切って群馬県の桐生競艇場でナイターレースが開催(九月二十日からの二節九日間)された。今年度は試験開催だったが、初のナイターレースを見ようと、初日は一般レースにもかかわらず、GIレース並みの約一万一千八百人のファンが入場した。
 “初もの祝儀”ということもあり、九日間を通しての売り上げは予想を上回る約三五%増を記録した。「カップルや家族連れ、勤め帰りの客が目立った」とは主催の阿左美水園競艇組合。新たなファン層開拓に「手ごたえあり」と、関係者の表情もナイター同様明るさいっぱいだった。低迷する売り上げへのカンフル剤として、本格開催となる来年度以降に期待をかける。
 競艇のナイターレースについて、全国モーターボート連合会は昭和五十九年、浜名湖競艇場で公営ギャンブルとして初の実験を実施した。その結果は「レースに支障はない」だったが、「その後のバブル景気で売り上げが伸びた」(浜名湖競艇企業団)こともあって、ナイター開催の機運はいったんは下火になってしまった。しかし、まもなくバブルは崩壊・・・。
 桐生競艇も不景気で売り上げが低迷、桐生市主催の場合を例に挙げると、昨年度の売上高は五百六億千五百二十五万円(百二十八日開催)で、売上高がもっとも多かった平成二年度と比べて二八%も落ち込んだ。ナイターレースは、いわば、その打開へ向けての切り札。売り上げ増を期待できるビッグレースの誘致はもちろん、関係者の一人は「全国で最初という“話題性”もほしかった」と話す。
 昨年の二度にわたる夜間テストを踏まえて投光器を増設し、水面上の照明のムラを解消。「投光器に照らされ、明るすぎて家の中が丸見え」という周辺住民の苦情は、約二百メートルにわたって昇降式の遮光ネットを設置することで解決した。
 高さ二十五メートルの鉄塔十一本とメーンスタンド屋上の合計八百九十八台の照明装置によって、平均照度を一千ルクス(体育館の公式競技レベル)にまで引き上げた結果、今年八月下旬になって運輸省の認可が下りた。
 公営ギャンブルのナイターは昭和六十一年の大井競馬場を皮切りに、平成元年には隣の伊勢崎市にあるオートレース場ですでに行われている。競艇では蒲郡競艇場(愛知県蒲郡市)が来年からのナイターレースの開催を準備しているほか、多摩川競艇場(東京都府中市)でも検討を始めている。
 桐生競艇を主催する桐生市と阿左美水園では、来年五月から九月までの間に伊勢崎オート並みの五十−六十日程度のナイターレースを検討している。仕事帰りに“ちょっとボートを”。家族やカップルがカクテル光線の中で競艇を楽しむ光景が来年から見られる。
前橋支局桐生通信部 村山邦彦
写真報道局 小松洋
 
 
 
 
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