2004/03/23 読売新聞朝刊
ハルウララ武騎手騎乗 曇り空吹き飛ばす拍手 高知競馬場で初の入場制限=高知
高知市の高知競馬場で二十二日、武豊騎手が騎乗して行われたハルウララ(八歳牝馬)の第百六戦。初勝利はならなかったが、夢の共演に過去最高の観客で埋まったスタンドを熱狂させた。高知龍馬空港やJR高知駅には早朝から県外客らが次々に到着。関連グッズは飛ぶように売れ、赤字に悩む県競馬組合には大きな“プレゼント”。ハルウララと武騎手に温かい拍手が送られ、スタンドは曇り空の暗さを吹き飛ばすようなさわやかさに包まれた。
◆混 雑
この日の開門時間は普段より三十分早い午前九時三十分を予定していたが、午前八時過ぎには数百人が並んだため、約四十分前倒しで開門。午後二時二十分ごろには収容可能な約一万三千人を超えたため、同競馬場で初めての入場制限が行われた。入場できなかった人たちは約二キロ離れた春野総合運動公園内の陸上競技場に案内され、大型画面での観戦となった。
道路誘導や場内警備には通常二人の警察官を五十二人に増やして対応。県競馬組合は「大きなトラブルがなくてよかった」とホッとしていた。
◆グッズ販売に列
開門直後、競馬場内の二か所に設けられた関連グッズのコーナーでは数百メートルの列ができるほどの人垣。新商品を含め三十五種類のグッズが販売された。ハルウララのしっぽの毛が入った交通安全のお守りなどが最も人気を集め、出走前にはすでに売り切れた。
旅行会社のツアーで来た三重県四日市市の会社員大林健二さん(38)は「会社の人に頼まれて限定グッズ一万四千円分を買いました」と笑顔。松山市の主婦前原由美さん(28)は「馬なのにこんなにグッズがあるとは」と驚いていた。販売員の一人は「武さんとハルウララのおかげで、最高の盛り上がりです」とほくほく顔だった。
◆スタンド
百連敗に近づくにつれ伸びてきた入場者数は、ついに一万三千人と過去最高を記録。レース中は女性ファンらを中心に「頑張って」と声援が飛び、中には手を大きく振り上げる姿も。ゴール後は「残念」との声が上がったが、すぐに「よくやった」と、大きな拍手が沸き起こった。
夫と一緒に二、三年前から競馬場通いが日課になったという高知市朝倉、主婦中田光野さん(71)は「ハルウララ人気にはびっくり。名古屋にいる孫の大学生から、ハルウララの馬券を買ってと頼まれたけど人が多くてとても無理。でも、それ以外のレースの馬券が的中したので、とてもうれしい」と胸を弾ませていた。
松山市の無職加藤成さん(75)は「負けても一生懸命な姿がかわいい。どうしても肉眼で見たいと思って来ました。年を重ねているのに、頑張っている姿に、こちらも負けられないぞという気持ちになる」と話していた。
四月から高校に進学する春野町平和の花本龍一君(15)は、騎手を目指して勉強中。「腕の力とか持久走が足りんかった」から一度は不合格に。五月に再挑戦する。「テレビモニターでしか見れなかったけれど、ウララも一生懸命。自分も負けないように頑張り、いつかは多くの人に応援される騎手になりたい」と語った。
《数字で見るハルウララ》
▽平均馬体重 今年に入って5戦は420キロで出走。105戦目(今年2月29日)はほかの10頭の452キロより30キロ以上も軽く小柄
▽生涯獲得賞金 106万5000円。ちなみに、22日に開催された交流レース「黒船賞」の1着賞金は3000万円
▽生涯成績 2着4回、3着6回、4着11回、5着13回、着外71回。99戦目(昨年11月30日)の3着以降は入賞から遠ざかっているが、ここ6戦で4回、単勝1番人気に推されている
▽入場者数 98戦目(昨年11月9日)以降の出走日は101戦目(今年1月2日)の8256人を最高に、平均3340人で通常の2.1倍
▽馬券売り上げ 98戦目以降の出走日の関連馬券の売り上げは平均7930万円で通常の1.2倍
▽関連グッズ Tシャツやキーホルダー、お守りなど35種類を数え、「サポートKRA」によると、2月末までの売り上げは約1000万円に上る
(戦績などはいずれも105戦終了時現在)
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