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1989/10/22 読売新聞朝刊
[社説]パチンコ疑惑の核心をそらすな
 
 「浄財と思って受けた献金が、後で問題化し、政治家がさかのぼって責任を問われるのは極めて不合理だ」−−。
 これは社会党の新村勝雄氏が、さる十六日の衆院予算委員会で、パチンコ業界からの政治献金問題について述べた主張だ。
 誠に正論である。私たちは、リクルート事件をめぐり、献金の時期、内容等を吟味することなく、リ社から献金を受けたというだけですべて「悪」とするような取り上げ方は間違いだ、と指摘し続けてきた。
 パチンコ業界からの献金についても、同様であることをすでに指摘した。新村発言の趣旨は、社会党がこれまで、リ社献金に関連して示してきた姿勢と真っ向から矛盾はするが、当然の主張である。
 いわゆるパチンコ疑惑を、献金受領者名簿や人数といった問題に拡散させるのは、核心をそらすことになりかねない。
 これまで疑問とされてきた点の第一は、パチンコ業界のからむ風俗営業法改正に反対した国会質問や、脱税防止の一助となるプリペイドカード導入に関連して関係官庁に働きかけたことと、献金との間に、因果関係はないのか、ということだ。
 第二は、政治資金規正法で禁じられている外国人、外国法人およびその関連組織からの献金問題である。もし法改正やプリペイドカード問題にからむ政治家の動きと、そうした外国人や関連団体からの献金に関係があれば、問題は一層重大である。
 現在は、もっぱら社会党議員の言動が問題になっているが、献金を受けていた他の政党の議員たちに、同じような問題はなかったのか。
 これらの疑問点は、十分に解明されなくてはならない。国会でも論議を尽くすのは当然である。
 ところが、二十日の参院予算委では、社会党議員が警察に圧力をかけたのではないかとする自民党質問、「事実とすれば大変遺憾だ」との渡部恒三国家公安委員長の答弁に対し、社会党は「事実無根の部分がある」「不穏当発言だ」などとして、審議をストップさせた。おかしな話である。
 私たちは、今国会初めの各党代表質問で、従来、ともすれば、与党の形式的質問、野党の一方的政府・与党批判というパターンを繰り返しがちだった国会が、双方向の論戦という本来あるべき姿を取り戻す兆しが見えたことを歓迎した。
 しかし、相手の言い分が気に入らないからといって、すぐに審議を止めるということでは、そうした論戦は成立しない。
 もとより、国会での論戦といえども、発言内容には一定の節度が求められるが、言論には言論で応じるというのが初歩的原則のはずである。
 事実関係が問題なら、なおのこと、国民の眼前での論議を通じて真相を訴える努力をすべきだ。相手の発言を中断させて、問題を舞台裏の折衝に移すというのは、本末転倒である。
 国会は、パチンコ疑惑の解明に向けて、核心をそらさず、国民によくわかる形で論議を尽くしてほしい。
 
 
 
 
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