前橋市が開催する前橋競輪(開催執務委員長、関根洋道・同市収入役)の同市に対する「繰入金」が今年度、50年の開設以来、初めてゼロとなる見通しであることが13日までに分かった。毎年、収益の一部を同市一般会計に納入してきたが、売り上げが減少していることに加え、今年度は年間売り上げの約6割を占めてきたレース「寛仁親王牌(はい)」が初めて前橋で開催されなかったため。県内4つの公営競技のうち、好調な収益を背景に市財政を支えてきた前橋競輪にも、不況の波が押し寄せている。
前橋競輪を管理運営する市競輪事務所などによると、市競輪特別会計から一般会計への繰入金は開設の50年から昨年までの半世紀の間に、計約750億円に上り、市財政を下支えしてきた。しかし、繰入金は93年度の45億円をピークに減少を続け、昨年度は8億円。今年度も当初予算で7億円を繰り入れることになっていた。
今年度は、長引く不況やファンの高齢化などの影響で、1開催(6日間)当たりの売り上げが、昨年の約16億円から約14億円に減少。さらに昨年の総売上約430億円のうち約265億円を占めて収益の柱だった寛仁親王牌が、今年度は91年のレース創設以来初めて、青森県で開催されたことが響いた。
同事務所は、今月末から全国に先駆け、より高額の配当を狙える「三連単」車券を導入するなど、車券をこれまでの2種から7種に増やし、新たなファン層の獲得などで経営改善を目指す。同事務所は「現在の売り上げは、利益が出るか、ぎりぎりの水準。(繰入金の復活は)基本的に厳しい状況だが、新車券の動向に期待したい」と話している。
一方、県内四つの公営競技は、不況に加え、サッカーくじなどギャンブルの多様化もあって、いずれも苦戦を強いられている。高崎競馬は94年の計2000万円を最後に、県と高崎市への繰り入れを行っていないほか、伊勢崎オートも昨年度、繰入金ゼロに転落。桐生競艇は今年度当初、桐生市一般会計に15億円を繰り入れる方針だったが、同市競艇事業課は「売り上げ減で、下方修正せざるを得ない状況。何とか当初予算の半額程度を繰り入れられればいいが」と苦慮している。
※ この記事は、著者と発行元の許諾を得て転載したものです。著者と発行元に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど、著者と発行元の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。