長引く不況の影響が、ここそこに影を落とすなか、浦和競馬場も瀬戸際の運営を強いられている。6年連続の赤字により、積み立てていた「競馬事業経営安定基金」も1998年度にすべて取り崩し、赤字は累積する一方となる。G1レース優勝馬も出したこともあり、根強いファンもいる浦和競馬に、明日はあるのか――。
浦和競馬場は、県と浦和市が出資する一部事務組合「県浦和競馬組合」が運営している。バブル経済の87〜91年度には、年間10億円を超える黒字を続けていたが、92年度に1億2700万円の利益を上げて以来、赤字に転落。収益が上がれば一部を、県と市に納めることになっているが、その配分金さえ95年度から納めていない状況だ。
同組合の星野剛・総務課長は「公営競技は好不況により波があるが、競馬が一番影響を受ける」と話す。馬のえさ代など馬にかかる費用に加え、世話をするきゅう務員や調教師の人件費など、競艇や競輪など他の公営競技に比べ、必要経費が高いからだ。また、客にサラリーマンが多くなり、一人当たりの購買額が下がっていることも大きい。「言い換えれば、健全なギャンブルになったと言えますけどね」と星野課長は苦笑する。
ただし、明るい兆しもある。県は「累積を重ねるわけにはいかない」と、同組合を管理する県公営競技事務所に「赤字が続くようであれば、閉鎖も視野に入れる。収支状況をよく見ながら、緊張感を持って運営にあたるように」と指示。その方針を受け、競馬組合は今年7月から、起死回生策として、馬券購入法に、人気の高い「枠番号連勝単式(枠単)」「馬番号連勝単式(連単)」の2方式を導入したところ、わずかながら人気を盛り返してきた。
星野課長は「お客さんのニーズに応えられる態勢になった」と言う通り、売り上げの4割強は枠単、連単によるものだ。7月の1日平均売上額も、前年度の約3億8800万円から、約5億1800万円と、前年度比33.4%の増となった。8月も前年度比33%増となっている。
こうした策が功を奏してか、今年度の1日平均売り上げは、4月から5開催日連続の前年度比増で、黒字ペース。同組合も「喜ぶのは早い」と気を引き締めつつ、「今年度は少しは累積を減らせるかもしれない」と期待をかけている。
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