1997/12/31 読売新聞朝刊
[社説]国連での地位と負担の落差
国連総会は先週、来年から三年間の国連通常予算(年間約十三億ドル)に対する加盟国の分担率を定めた決議を採択した。
それによると、日本の分担率はことしの一五・六五%から来年は一七・九八一%、九九年は一九・九八四%となる。二〇〇〇年には二〇・五七三%とさらに増える。国民総生産(GNP)などを基準にした旧来の算定方式を踏襲した結果である。
国連改革の必要性が指摘されてから相当の年月がたつ。そのポイントは二つある。第一は国連の最も重要な機関で、世界の平和の責任を担う安全保障理事会の改組。もう一つが国連財政の健全化である。
この努力において大事なのは、新しい時代の国際社会のニーズに的確に対応できるよう国連の旧来の枠組みを基本的に見直す姿勢である。二十一世紀の到来に間に合わせるためには、年内に国連改革の具体的な方向づけを示す必要があった。
しかし結果は、期待に反するものとなった。大きな失望を禁じえない。
まず安保理改組問題は、作業部会ですでに丸四年間の話し合いが行われてきたにもかかわらず、議論が収斂(しゅうれん)していない。
日独の常任理事国有力候補国や米国などは、安保理改組の大まかな枠組みについての加盟国間合意を総会決議の形で、年内に実現することをめざしていた。
しかし、ドイツの常任理事国入りを嫌うイタリアなどが抵抗し、途上国グループも消極的姿勢をとったため、国連総会議長は先月の時点で「現段階では決定しない」との声明を出し、この懸案を先送りした。
国連事務局のリストラは、アナン事務総長のイニシアチブで一定の前進を見せているが、安保理改組の前進がなければ真の国連改革には程遠い。
国連財政の危機をもたらしているのは米国の分担金滞納であり、米国は速やかに義務を果たすべきである。ただ米政府が、現行二五%の分担率を二〇〇〇年時点で二〇%になるよう段階的に引き下げて欲しいと主張しているのは、理解できる。
超大国であっても、国連経費の四分の一も押しつけるのは妥当性に欠ける。GNPを重要な指標にしつつも、国連における加盟国の地位・責任・権限を考慮した負担の適正配分を考えるべきである。
米国の負担を減らし、その分は他の常任理事諸国がカバーすべきだ。
しかし今回も、分担率策定方式の抜本的見直しは行われなかった。これでは、米国の不満は解消しない。米国に日本の負担を合わせれば、二〇〇〇年には四五%を超える。この特定国への集中依存こそ、国連財政の健全性を損ねる最大の要因である。
安保理改組は、国際社会での加盟国の長期にわたる地位を左右する問題であり、あらゆる角度からの議論が必要である。単に分担率が大きいから常任理事国の資格があるとはもちろん言えない。
だが安保理改組の展望がないまま、日本が、常任理事国である英仏中ロ四か国の負担の合計の一・五倍もの分担金を背負うのは、やはり納得できることではない。
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