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1997/09/25 読売新聞朝刊
[社説]常任理入りに必要な責任の明示
 
 ニューヨークで開かれている国連総会では、各国代表による一般演説が来月七日まで連日行われる。加盟百八十五か国のうちほとんどの国が演説を予定しており、その中でアピールするのは容易ではない。
 その点で、二十三日の小渕外相の演説はそれなりの工夫を感じさせた。内容的には国連改革に的を絞り、これまでしばしば見られた総花方式を避けた。時間も昨年より十分程度短かった。
 国連改革を前面に掲げたのは、加盟各国の間で改革に向けた機運がこれまでになく高まっていることが背景にある。アナン事務総長の改革案が提示され、安全保障理事会のあり方を巡っても、作業部会案や米国案が俎上(そじょう)に載っている。
 小渕外相は演説で、「国連改革の大筋について本年中に合意を達成すべきである」と強調した。安保理改革では、理事国を増やすことでは一致しているものの、数や割り振りの問題で、今の常任理事国と非同盟諸国の対立が先鋭化するなど、必ずしも先行きは楽観を許さない。
 仮に「総論賛成・各論反対」の状態が続けば、改革は暗礁に乗り上げてしまう。この機を逃すと、改革の機運が急速にしぼんでしまう可能性も小さくない。
 冷戦後の国際情勢の下で、期待の高まっている国連の存在そのものに対する信頼感にもかかわってくる。小渕外相が、期限を切り、改革実現に向けた努力を各国に促したことは当然である。
 外相は、国連財政悪化の要因の一つである分担金問題について、滞納国の責任を問うと同時に、責任に応じた分担の原則にも言及した。公平という観点から見ても、日本にとって、改革の結果が分担率の引き上げだけということでは、国民の納得を得られるわけがない。
 問題は、各国に対し、日本の主張と立場への理解をどう深めていくかである。
 外相は、安保理常任理事国入り問題について、昨年同様、「責任を果たす用意がある」と意欲を表明した。
 常任理事国となれば、安全保障を巡る意思決定に常に参画できるなど、プラスは大きい。日本の国際的な地位から見ても、常任理事国入りを目指すべきである。
 その一方、責任も大きくなる。が、演説では、常任理事国としてどういった責務を果たすのか、といった点に関しては、今年も具体的に触れることはなかった。
 核心部分が凍結されたままとなっている国連平和維持活動(PKO)協力法の見直しはその一例だ。常任理事国となれば直ちに対応を迫られる問題である。
 そうした点について明確な考えを示さないのでは、説得力に欠ける。国連改革をうたう以上、日本の責任についても早急に立場を鮮明にする必要がある。
 総理府の世論調査によると、回を追うごとに、常任理事国入りに理解を示す人の割合は高まり、昨年は六五%近くに達した。とはいえ慎重論も残っている。なぜ理事国入りが必要なのか、国内の理解を引き続き求めていくことも忘れてはならない。
 
 
 
 
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