1997/05/11 読売新聞朝刊
[社説]国連改革の核心は安保理改組
コフィ・アナン国連事務総長が十一日、一月の就任以後初めて来日する。橋本首相や池田外相らとの会談で、国連改革の在り方などに関し意見を交わす予定だ。
創設されて半世紀以上を経た国連は、冷戦の終了とも重なって、あらゆる面での改革を促されている。この認識は、今や国際社会が広く共有するものだ。
二十一世紀にまたがる任期を持つアナン事務総長の大きな使命は、国連改革の貫徹に向けて事務当局側の最高責任者として着実に作業を進める点にある。
アナン氏は三月、十項目からなる国連事務局の改革案を公表した。内容は年間十三億ドル強の現行国連事務局予算を約五%削減し、約一万人の国連職員も千人減らすという、いわば“身を削る”ものが中心となっている。経済・社会問題担当三部局の統合や、細かなものでは作成文書を二五%減らすことも盛り込まれた。
何はさておき、まず事務総長の権限内で実施できる改革措置を打ち出した。素早い対応も含めて評価したい。一部はすでに実施に移されているが、最後まで確実に実行してもらいたい。
アナン事務総長は、加盟国の承認が必要な改革に関する報告書を七月に出す。私たちは、この報告書に国連諸機関の合理化・統廃合についてどこまで大胆な提言が盛り込まれるかに注目したい。
国連は半世紀余の歩みの中で、各種の下部機関を次々に作り、肥大してきた。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のように、冷戦終結後かえって役割が増大したものもあるが、貿易や開発などの部門では存続の意味を半ば失ったような機関もある。思い切ったリストラを断行する時期にきている。
国連改革の核心はやはり、国連の“重役会”である安保理の改組である。
前大戦の戦勝主要国が常任理事国を独占する姿は、国連がかなめのところで、半世紀以上も前の旧体制にとどまっていることを示す。国際社会の力関係を正当に代表するものになっておらず、二十一世紀の地球的課題取り組みに国際社会の総力を結集できる枠組みになっていない。
安保理改組の議論が国連の作業部会で始まって三年余が経過した。加盟国の長期に及ぶ政治的地位を左右する問題であり、厳しい議論になるのは当然だろう。
とは言え、そろそろ議論を収れんさせないと、安保理改組の努力が空中分解しかねない。その意味で評価したいのは、作業部会長を務めるラザリ国連総会議長(マレーシア大使)の最近の動きだ。
ラザリ議長は、各国から意見を聴取した上で、三月に安保理改組に関する議長案を提示した。常任理事国を五か国(うち二議席は先進国から)、非常任理事国を四か国増やそうというものだ。ラザリ議長は、作業部会が次期国連総会の開幕する九月までに大枠の結論を出すことも求めた。
ラザリ案には難点もある。しかし安保理改組を現実のものにするには、同案をたたき台に議論を煮詰めるのが確実な道だ。
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