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1994/11/27 読売新聞朝刊
[社説]国連改革への象徴的ステップ
 
 国連総会第六委員会で、国連憲章にある「旧敵国条項」の削除を検討するよう求める決議が初めて採択された。
 旧敵国とは、第二次世界大戦で連合国と敵対関係にあった日本、ドイツ、イタリアなど七か国を指している。国連憲章では、これら旧敵国に対しては、安全保障理事会の許可なしに地域的機関が強制行動をとれることなどを定めている。
 削除検討の理由について、決議では旧敵国は国連加盟国となり、国連活動に重要な役割を果たしてきており、旧敵国条項は「時代遅れとなった」としている。
 今日の国際社会に占める日、独などの位置、加盟国が協力して「国際の平和と安全を維持する」という国連の目的など、あらゆることに照らしてこの条項は時代錯誤である。削除すべきは当然だ。
 今回の決議は、ポーランドの主導で日、独など二十九か国が共同提案した。共同提案国の中には、先の大戦で日本が直接的な被害を与えたフィリピンやインドネシアも含まれている。日本にとって意味あることと受け止めたい。
 日本はこれまで国連総会演説などの場で繰り返し削除を求めてきた。にもかかわらず、削除の決議さえ出来なかった。
 削除のためには憲章の改正が必要で、憲章改正となれば、安保理の改組など国連改革全体に飛び火してしまう、という危機感が一部の常任理事国にあったためだ。
 今回削除検討の決議がようやく採択されたのは、冷戦終結を受けて国連を時代に即したものに変えようという国際社会の意思の表れと言ってよいだろう。
 第六委員会での採択を受け、来月には国連総会で削除検討を正式決定、来年二月から国連憲章特別委員会で具体的に議論することになる。
 第六委員会で満場一致に近い形で決議が採択されたからといって、削除がただちに実現されるわけでもない。
 現在検討が進められている常任理事国拡大など安保理改組と密接に絡んでくるからであり、削除が現実化するとしても二、三年後とみられている。
 その一方で、外務省などには、旧敵国条項の削除が先行すれば安保理改組が後退しかねないと懸念する声がある。安保理改組に反対する常任理事国の一部から、「旧敵国条項を削除したのだから安保理改組はしないでいい」という主張が出てくるのではないかと見るからだ。
 このため、日本は近年、安保理の改組についての合意ができ、憲章を改正する時に、旧敵国条項の削除をすればよいとの方針をとってきた。
 決議は前文で、安保理を拡大すべきだとの点で意見の一致をみた作業部会の報告を歓迎している。
 国連を時代に合ったものに発展させるための憲章改正の一環として、旧敵国条項の削除と安保理改組をともに進めていくことが必要だ。
 今回の削除検討決議を国連改革全体を進める一つのステップと位置づけたい。
 
 
 
 
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