日本財団 図書館


1989/03/11 読売新聞夕刊
新天皇に「好感」広がる/読売新聞社全国世論調査
 
 「昭和」から「平成」へ時代の節目に際して、読売新聞社では、一月七日の昭和天皇崩御直後、さらに一月下旬の一月度定例全国世論調査の二回にわたり、「天皇と皇室」に関する世論調査を行ってきた。引き続き二月度調査(二月二十五、二十六日実施)でもその後の事態の進行に合わせて国民意識の実態と変化を探った。
◆なじむ平成 69%が好感◆
[「平成」の定着度]
 新しい元号「平成」が決まってから調査時で一か月半過ぎたが、「平成」の印象は、「非常に好感」が16%、「多少は好感」が53%で合わせて「好感」を持っている人が69%、これに対して、「なじみにくい感じ」は25%。さる一月七日の新元号決定直後に実施した調査では、「好感」を持っている人が61%、「なじみにくい感じ」は33%。この一か月半「好感」を持っている人が次第に増えており、新元号が国民の間にかなり浸透していることがうかがえる。
 「好感」が多いのは、年齢別では五十歳代以上の層で、いずれも70%を超えた。それ以下の若い層でも60%以上の人が「好感」を持っている。
 支持政党別では、民社党支持者81%、自民党支持者77%と多い。
 また、新天皇のお言葉や振る舞いに対して「非常に好感を持っている」と答えた人の83%、「多少は好感を持っている」と答えた人の75%が新元号にも「好感」を寄せている。新天皇の親しみやすい人柄が平成のイメージと密接に関連しているようだ。
 「なじみにくい感じ」と答えたのは、二十歳代31%、三十歳代26%と目立っているが、崩御直後の調査では、いずれも40%以上で、若年層でも浸透していることが分かる。
 支持政党別では、共産党支持者の46%が高い。
◆50代は60%が親しみ◆
[新天皇への気持ち]
 新天皇の即位から「大喪の礼」へ−−。新天皇陛下への気持ちを「おそれ多い」「尊敬している」「親しみを感じる」「反感をおぼえる」「関心がない」の中から一つ選んでもらったところ、「親しみを感じる」が52%(さる一月七日の昭和天皇崩御直後の調査では70%)、「関心がない」28%(同7%)、「尊敬している」14%(同17%)、「おそれ多い」1%(同3%)、「反感をおぼえる」1%(同1%未満)となっている。
 今回の調査では「親しみを感じる」人が、崩御直後の調査に比べかなり減っているが、なお半数を超えている。また「関心がない」という人が7%から今回28%へと増えているのが目立つ。
 この違いは、この調査が昭和天皇の崩御直後に行われたため、国民の関心が急激に高まり、調査結果に反映しているものとみられる。
 「親しみを感じる」人は、五十歳代60%、四十歳代57%、六十歳代56%と壮年層に多く、男女別では女性53%、男性51%とあまり差はない。
 支持政党別は、民社党支持者61%、自民党支持者58%、社会党支持者55%、公明党支持者48%、共産党支持者19%の順。
 一方、「関心がない」人は二十歳代52%、三十歳代37%と若年層で目立ち、職業別では学生48%、自由業45%、事務・技術職36%に比較的多い。
◆6割が浩宮さまに敬愛の念◆
[新皇太子像]
 新しく皇太子になられた浩宮さまに対して、国民はどのような気持ちを抱いているのだろうか。「親しみを感じる」が52%で、約半数の人が親近感を持っている。これに「尊敬している」(9%)や「おそれ多い」(1%)を加えると、六割の人が程度の差はあれ、敬愛の念を抱いている。
 これに対し、「関心がない」は32%、「反感をおぼえる」は1%となっている。
 都市規模別にみると、大都市では、それ以下の都市に比べて敬愛の念がやや薄く、「尊敬している」では全体平均を3%下回り、「親しみを感じる」でも全体平均を下回っている。
 男女別でみると、女性の方が敬愛の念が強い。「親しみを感じる」は、男49%に対し、女は55%となっている。
 一方、年齢別でもその差がはっきりと表れている。「親しみを感じる」は、二十歳代31%、四十歳代59%、六十歳代60%−−と、二十歳代から六十歳代までは、年代が上がるにつれて多くなる。
◆望ましい皇太子妃像 「外国語できる」3位 48%家柄こだわらず◆
[皇太子妃]〈家柄〉]
 浩宮妃は、いずれ皇后となる方。浩宮さまのお妃(きさき)としてはどのような家柄の人がふさわしいか質問したところ、「旧皇族や旧華族と関係があるかないかにはこだわらない」が48%を占め、これに「旧皇族や旧華族とは全く無関係な人」が16%で続き、「開かれた皇室」の立場から、結婚相手を選ぶのが望ましいとする人が多い。
 「旧皇族や旧華族、あるいはその親戚(しんせき)関係にある人」とする人はわずかに5%にとどまっている。「関心がない」は27%。
 年齢別にみると、「旧皇族や旧華族と関係があるかないかにはこだわらない」は、五十歳代が57%で最も多く、これに七十歳以上が52%で続いている。また、「旧皇族や旧華族とは全く無関係な人」は、年齢が高くなるにつれて増える傾向を示し、二十歳代13%、四十歳代17%、六十歳代22%となっている。
 また、浩宮さまに対して「親しみを感じる」と答えた人の63%が、「旧皇族や旧華族と関係があるかないかにはこだわらない」としているのも注目される。
〈お妃像〉
 浩宮さまの結婚相手にはどのような人が望ましいと思うかあげてもらったところ(複数回答)、上位三位は〈1〉「性格が明るい」(42%)〈2〉「気品がある」(39%)〈3〉「外国語が話せる」(30%)−−となった。
 この質問では、「関心がない」を含めて九項目を提示したが、「外国語が話せる」が三位となったのは、国際化が一層進むなかで国民の皇室外交に寄せる期待の大きさを示しているといえそうだ。
 「スポーツ好きである」(六位、13%)や「芸術を愛好している」(八位、7%)などをあげる人は意外と少ない。
◆お言葉などに親近感 46%「国民と触れ合いを」◆
[新天皇への印象]
 新天皇陛下は、「即位後朝見の儀」や昭和天皇の大喪の儀式でも分かりやすい口語を使われたり、親しみやすさが目立っている。国民はこうした新天皇のお言葉や振る舞いをどう評価しているのだろうか。
 「非常に」と「多少は」を合わせ「好感を持っている」人は67%、「あまり」と「全く」を合わせて「好感を持っていない」人は6%、「関心がない」人は24%。国民の三分の二は好感を持って見ていることが分かる。
 「好感を持っている」グループを年齢別にみると、六十歳代80%、七十歳以上78%、五十歳代76%、四十歳代69%、三十歳代62%、二十歳代41%の順で、中高年層で好感を持つ人が多い。男女別では、女性69%、男性65%。職業別では農林・水産業71%、主婦70%と目立ち、学歴別では小・中学卒73%、高校卒66%、大学卒61%となっている。
 一方、「関心がない」人は、二十歳代47%、学生41%、自由業35%、事務・技術職31%、大学卒30%などに比較的多い。
[開かれた皇室]
 さる一月七日の調査では、「開かれた皇室」を望む声が半数を占めた。そこで新天皇陛下がいろいろな行事に出席するなど、国民と触れ合う機会を、いままでより多く持ってほしいかどうか聞いたところ、「多く持ってほしい」46%、「いままで通りでよい」45%と二分し、「少なくてよい」は5%にとどまっている。
 「多く持ってほしい」という人は、七十歳以上56%、六十歳代54%と高齢者に多く、小・中学卒51%、主婦以外の家庭婦人57%などに目立つ。支持政党別では公明党支持者53%、民社党支持者51%、自民党支持者50%の順で多い。
 「いままで通りでよい」という人は二十歳代50%、高校卒47%、学生55%、自由業52%、農林・水産業51%などに多い。
◆昭和天皇大喪の政教分離 式場同一に戸惑い◆
[政教分離]
 昭和天皇をおくる大喪として、神道にもとづく皇室行事の「葬場殿の儀」と、国の儀式である「大喪の礼」が、先月二十四日、東京・新宿御苑で厳かに営まれた。同じ場所でほぼ連続して行われたが、国民は、憲法二〇条に定められた「政治と宗教の分離の原則」が守られたと考えているのだろうか。
 調査結果は、「守られた」が25%、「守られなかった」が14%、「判断が難しい」が39%、「関心がない」が16%と分かれた。四割もの国民が戸惑いをみせたのは、憲法二〇条に対する理解や敏感さのほかに、守られたかどうかが、同じ場所での挙行、二つの儀式の間に行われた鳥居や大真榊(おおまさかき)の撤去などをどう評価するかにかかっているからだろう。
 支持政党別にみると、自民党支持者は「守られた」が35%、「判断が難しい」が39%、「守られなかった」が10%、「関心がない」が10%、社会党支持者はそれぞれ24%、39%、21%、11%、公明党支持者は15%、43%、25%、11%、民社党支持者は27%、53%、15%、5%、共産党支持者は4%、17%、48%、23%。自民党支持者に「守られた」が、天皇制を厳しく批判している共産党支持者に「守られなかった」が多い。「守られた」は、五十歳代以上の層(31―32%)、低学歴(小・中学卒32%―大学卒22%)に多く、「守られなかった」は、五十歳代未満層(15―18%)、高学歴(大学卒18%―小・中学卒10%)に目立ち、「関心がない」は、二十歳代(25%)で高い。
 
 [質問と回答] (数字は%)
 
◆新しい天皇が即位してから一か月半ほどたちましたが、あなたは、新天皇に対して、どんな気持ちをお持ちですか。次の中から、一つだけあげて下さい。
・おそれ多い 1.4 ・反感をおぼえる 1.2
・尊敬している 13.9 ・関心がない 27.8
・親しみを感じる 51.8 ・答えない 4.0
 
◆あなたは、新天皇が即位されてからのお言葉やお振る舞いに対して、好感をお持ちですか、そうではありませんか。
・非常に好感を持っている 14.3    
・多少は好感を持っている 52.6    
・あまり好感を持っていない 5.4 ・関心がない 23.5
・全く好感を持っていない 0.6 ・答えない 3.5
 
◆あなたは、新天皇がいろいろな行事に出席するなど、国民と触れ合う機会を、いままでより多く持ってほしいと思いますか、いままでより少なくてよいと思いますか、それとも、いままで通りでよいと思いますか。
・多く持ってほしい 45.5 ・少なくてよい 4.9
・いままで通りでよい 44.5 ・答えない 5.1
 
◆あなたは、新しく皇太子になられた浩宮さまに対して、どんな気持ちをお持ちですか。次の中から、一つだけあげて下さい。
・おそれ多い 0.8 ・反感をおぼえる 1.0
・尊敬している 8.9 ・関心がない 32.3
・親しみを感じる 52.1 ・答えない 4.9
 
◆あなたは、浩宮さまの結婚相手として、どんな家柄の人がふさわしいと思いますか。次の中から、一つだけあげて下さい。
・旧皇族や旧華族、あるいはその親戚関係にある人 5.1    
・旧皇族や旧華族とは全く無関係な人 16.4    
・旧皇族や旧華族と関係があるかないかにはこだわらない 48.1    
・関心がない 27.4 ・答えない 3.0
 
◆浩宮さまの結婚相手には、どのような人が望ましいと思いますか。次の中から、三つまであげて下さい。
・性格が明るい 41.9 ・スポーツ好きである 12.9
・つつましやかである 22.2 ・芸術を愛好している 6.5
・気品がある 38.5 ・外国語が話せる 29.5
・容姿が美しい 11.1 ・関心がない 24.4
・清潔な感じがする 23.2 ・答えない 4.7
 
◆2月24日に、昭和天皇の葬儀があり、神道にもとづく皇室行事の「葬場殿の儀」と、そのあと、国の儀式として「大喪の礼」が行われました。あなたは、このような昭和天皇の葬儀の行い方について、憲法に定められた政治と宗教の分離の原則が守られたと思いますか、それとも、守られなかったと思いますか。
・守られた 25.0    
・守られなかった 14.0 ・関心がない 15.5
・判断が難しい 38.9 ・答えない 6.6
 
◆あなたは、新しい元号の「平成」に、好感を持っていますか、それとも、何となくなじみにくい感じを持っていますか。
・非常に好感を持っている 16.1    
・多少は好感を持っている 52.7    
・なじみにくい感じを持っている 24.5 ・答えない 6.6
 
《調査の方法》
 ・調査実施日=2月25、26日
 ・調査対象者=全国の有権者3000人(250地点)
 ・抽出方法=層化多段無作為抽出法
 ・実施方法=個別訪問面接聴取法
 ・有効回収数=2211人(回収率74%)
 ・回答者内訳=男48%、女52%
▽20歳代15%、30代20%、40代22%、50代20%、60代15%、70歳以上8%
▽大都市(東京23区と政令指定都市)19%、中都市(人口10万人以上の市)37%、小都市(同10万人未満の市)20%、町村24%
 
 
 
 
※ この記事は、著者と発行元の許諾を得て転載したものです。著者と発行元に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど、著者と発行元の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。

「読売新聞社の著作物について」








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION