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2001/12/02 毎日新聞朝刊
[クローズアップ2001]新宮さま誕生(その1) 「配慮」重ねた宮内庁
◇一線医師を抜てき−−「技術」と「口の堅さ」信頼
 皇太子ご夫妻の第1子・新宮(しんみや)さま誕生は、景気低迷で先行き不透明感が強まる日本列島を、明るいニュースとして駆け巡った。ご結婚から8年半がたつうえ、天皇の地位(皇位)の継承問題も関係することから国民の関心を呼び、宮内庁にとって、雅子さまが順調に出産されることは「至上命題」(同庁関係者)だった。お子さま誕生に向けた環境作りに腐心した宮内庁の動きと、皇室典範をめぐる問題を検証した。
【皇室取材班】
 「守秘義務があるのでお話できません」
 雅子さまの懐妊発表後、ある皇族が雅子さまの主治医、堤治・東大教授(51)に胎児の性別を尋ねると、堤氏はそう言って拒んだという。「口の堅さは有名だ」と、堤氏を知る東大医学部OBは評する。
 堤氏は、長野赤十字病院などを経て、同大教授となった。不妊治療を長く手がけ、子宮内膜症の治療や環境ホルモンにも詳しい。これまでも宮内庁病院に非常勤で勤めて皇室医療の一端を担い、今年3月、東宮職御用掛に就任した。産婦人科医が御用掛に就くのはご夫妻結婚後初めてだった。
 皇室・宮内庁に専門家の立場から助言する御用掛には、同じく産婦人科医の坂元正一・東大名誉教授(77)がいたが、堤氏の就任とほぼ同時期に退任している。ある幹部はその背景を「働き盛りの方にこの問題について全権を与え、全力でやって頂くため」と解説し、「残された期間はもう少ない」と付け加えた。
 一昨年末の流産では、情報漏れによるマスコミ報道の影響を指摘する声も一部にあった。それだけに主治医の条件は「確かな腕」と「口の堅さ」。関係者は「(堤氏は)主治医にうってつけ」と口をそろえる。
 宮内庁側も堤氏に全幅の信頼を寄せ、従来の形式にとらわれない手法をも受け入れてきた。これまで皇太子妃の出産時には、超音波診断や小児科、内科の専門家らを集めた「医師団」が結成されるのが通例だったが、今回は見送られた。それは、堤氏の意向を反映した結果という。
 しかし、一方で堤氏は信頼する専門医と連絡を取り合い、雅子さまを見守った。7月には堤氏に近い女医の定月(さだつき)みゆき氏が宮内庁病院産婦人科医長になった。定月氏は、ご夫妻の住む東宮御所にすぐ近い官舎に移り、日常的な診察を受け持った。
 一方、99年末の流産を受けて、「お静かに見守っていただきたい」(古川清東宮大夫)という宮内庁の強い意向が、メディアへの対応に表れた。懐妊の正式発表を行う際には、当初、テレビカメラ中継を認めないと報道陣に申し入れた。妊娠5カ月目に行った「内着帯式」で帯を東宮御所に運び入れる場面も「内々の行事」を理由に写真提供を渋り、41年前の皇太子さま誕生時に比べ、情報公開は明らかに後退した。また、出産予定日も明らかにされなかった。
◇今後、外国訪問増える?
 「来年からはご夫妻の外国訪問が増えるのではないか」。懐妊発表後、ある宮内庁関係者はこう予想した。
 英国留学経験がある皇太子さまと米国ハーバード大卒で外務省キャリア官僚だった雅子さま。しかし、93年6月の結婚から雅子さまの出産までに、長期外国訪問は94年11月と95年1月の2回にとどまっている。「日程を入れてキャンセルすれば相手国にも失礼だし、公式訪問となると負担は大きい。お子さま誕生の環境作りには、外国訪問はマイナスだった」とある幹部は振り返る。
 天皇、皇后両陛下は皇太子時代、浩宮さま(現皇太子さま)の誕生半年後の60年9月から、過密ともいえる日程で各国を訪問した。お子さまが生まれた今後、宮内庁の対応が注目される。
◇「お健やかに・・・」政界からもお祝い
 小泉純一郎首相は1日、皇太子妃雅子さまの女児ご出産について「国民の皆様と共に心からお祝いを申し上げます」とする「首相謹話」を発表。主要各党も祝福の談話や謹話、コメントを発表した。
◇首相謹話◇ 本日、ご誕生を迎え、国民の皆様と共に心からお祝いを申し上げます。皇太子、同妃両殿下のお心持ちは申すに及ばず、天皇、皇后両陛下のお喜びはいかばかりかと拝察いたします。ご誕生は皇室の一層のご繁栄を象徴するものであり、このおめでたい日を迎えたことは、国民のあげて喜びとするところであります。ここに、謹んでお健やかなご成長と、皇室の一層のご隆運を衷心よりお祈り申し上げます。
◇山崎拓自民党幹事長◇ 全党員・党友こぞって心からお祝い申し上げます。新世紀の洋々たる未来に向けてお健やかにご成長されるよう衷心よりお祈り申し上げます。ご誕生は皇室のご繁栄を表すものであります。
◇神崎武法公明党代表◇ 誠に喜ばしく慶賀にたえません。天皇、皇后両陛下並びに皇太子、同妃両殿下に心からお祝い申し上げます。皇太子ご夫妻のお子さまの健やかなご成長と皇室のご繁栄を心よりご祈念申し上げます。
◇鳩山由紀夫民主党代表◇ 国民ひとしく待望しておりました殿下のご誕生を心よりお喜び申し上げます。今後、皇太子ご夫妻の愛情を一身に受けられ、健やかにお育ちになりますよう祈念申し上げます。
◇志位和夫共産党委員長◇ 新しい生命の誕生は、ひとしく喜ばしいことです。
◇今後の主な行事
◇浴湯(よくとう)の儀◇ 7日午前9時から、宮内庁病院で。邪気を払い、文運と健康を祈る。新宮さまが浴湯している間読書(とくしょ)の役が日本書紀の一節を読む。その後、鳴弦(めいげん)の役2人が掛け声とともに弓の弦を2度引き放つ。
◇命名の儀◇ 同日午前11時、東宮御所。天皇陛下から新宮さまへ称号と名が贈られる。
◇皇統譜(こうとうふ)登録◇ 命名の儀の翌日か翌々日、皇族の戸籍簿の皇統譜に誕生期日、名前などを記入する。
◇賢所皇霊殿神殿(かしこどころこうれいでんしんでん)に謁するの儀◇ 誕生から50日目以降。一般のお宮参りに当たる。お子さまが宮中三殿に拝礼。
◇ロシア州知事「言い伝え」を披露「女の子が生まれると戦争終わる」−−田中外相と会談中
 雅子さまの女児ご出産のニュースが、日本とロシアの外交舞台に彩りを添えた。
 東京・麻布台の外務省飯倉公館で1日に行われた、貿易経済に関する日露政府間委員会。午前の会合で、フリステンコ露副首相は田中真紀子外相に「会談が長引くと喜ばしいことがあるのではないですか」とささやいていたが、昼食会の終わり間際に「女児をご出産」の知らせが入った。同席したファルフトジーノフ・サハリン州知事が「ロシアでは女の子が生まれると戦争もやみ平和が始まると言われています」と切り出し、パノフ駐日大使が「平和に乾杯」と乾杯の音頭を取った。
 
 
 
 
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