はじめに
第34回全国ボランティア研究集会(全V研)は、2003年2月9日から11日の日程で、参加者、分科会講師、スタッフ、ボランティアなど含めて約1,300人の方に参加いただき、山形県庄内地域の14市町村で開催しました。
初日は、鶴岡市文化会館にて女声アンサンブル「ろすまりん」による『雪の降る街を』の合唱で幕を開けました。開会式に続いて、『ボランティア一揆!公益の地から発信!!』をテーマに全体会を行いました。庄内はかつて豪商が私財を投じて、自然の脅威から身分による差別なく人びとを守るさまざまな事業を行ってきました。その成果の多くは現在まで継承されています。そしてこの地に住む人びとは、それを誇りとして『公益の地』と呼んでいます。全体会では、ボランティア精神につながる公益について議論しました。全体会終了後、分科会の会場となる各市町村に分散して、交流会を実施しました。
2日目は、14市町村で30の分科会を開催しました。
分科会テーマとして全V研では定番となっている老人福祉、障害者福祉や移動サービス、社会教育施設でのボランティアの連携、地域通貨などから、各地域が日頃から課題や問題に感じたり、特徴的に実践している事例から分科会を展開していきました。
分科会終了後は、鶴岡市湯野浜温泉「亀や」で参加者、分科会講師、スタッフなどが一堂に会し大交流会を実施しました。
3日目は、場所を酒田市に移して全体会を行いました。前半は若者企画実行委員会による「森で感じた未来の風〜伝えたいんだボランティアスピリット〜」を実施しました。
後半は今回で終了となるこの集会が、開催してきた地域や人にどのような影響を与えたのかを振り返るプログラムを実施しました。短い時間ではありましたが約20人の関係者に登壇していただき、全V研の果たしてきた役割などについて語っていただきました。
あらためてこの場をお借りして、本集会のためにご支援、ご尽力いただいたすべての関係機関・団体の皆様方に深く感謝いたします。
この報告書は、全国ボランティア研究集会・山形県庄内集会で行われたすべてのプログラムの記録をまとめたものです。参加した方々の熱気を感じていただき、今後の皆様の活動にお役立ていただければ幸いです。
全国ボランティア研究集会・全国事務局
今回の全国ボランティア研究集会は、文化と歴史の薫る山形県庄内地域を舞台に開催します。
かつて庄内地域は、冬季に日本海から吹き付ける風により飛砂の害に苦しんでいました。人びとの生活を改善しようと、本間家をはじめとした大商人が、私財を投じて沿岸部に黒松の木を植林し、防砂林を築きました。その姿勢は、あまねく人びとの生存と幸福に貢献したという意味で「公益」の原点であったと言われ、この地域の人々はそれを誇りとし、自ら「公益の地」と呼んでいます。
山形県庄内集会は、山形県庄内地域の14市町村にわたり、人口10万人の都市から5,800人の村まで多様なフィールドで分科会を実施します。それぞれに住む人たちの生活の中での課題や、地域に根ざした活動の中からテーマを選び、企画してきました。これらの課題は、全国の他の地域における課題を投影していると言えます。
この集会で行われる“ボランティア一揆”から、「未来へ向かってボランティアとは何か」「公益とは何か」を考えていきます。心のこもった交流の場を用意して、皆さまのご参加をお待ちしています。
●主催:
第34回全国ボランティア研究集会・山形県庄内集会実行委員会
社団法人日本青年奉仕協会(JYVA)
●プログラム:
2月9日(日) オープニング・開会式・全体会・・・鶴岡市文化会館
2月10日(月) 分科会・・・鶴岡市、酒田市など庄内地域14市町村で開催
2月11日(火・祝) 全体会・閉会式・・・酒田市総合文化センター
●助成
日本財団、山形県、庄内市町村会、庄内広域行政組合、山形県共同募金会
●協賛
アサヒビール株式会社、日産自動車株式会社、山形県内各企業
●後援
山形県教育委員会、山形県社会福祉協議会、あすをきずく青少年県民会議、庄内14市町村
庄内14市町村教育委員会、庄内14市町村社会福祉協議会、東北公益文科大学
日本青年会議所東北地区山形ブロック協議会、山形創造NPO支援ネットワーク
庄内市民活動センター、酒田パートナーシップオフィス、遊佐町商工会、八幡町商工会
平田町商工会、松山町商工会、余目町商工会、立川町商工会、三川町商工会
藤島町商工会、羽黒町商工会、櫛引町商工会、朝日村商工会、温海町商工会
酒田商工会議所、鶴岡商工会議所、大山商工会、遊佐ロータリークラブ、八幡ロータリークラブ
平田みすみロータリークラブ、庄内松山ライオンズクラブ、余目ライオンズクラブ
余目ロータリークラブ、立川ロータリークラブ、藤島ライオンズクラブ、羽黒ライオンズクラブ
三川ライオンズクラブ、温海ロータリークラブ、酒田ライオンズクラブ、酒田中央ライオンズクラブ
酒田山王ライオンズクラブ、酒田みなとライオンズクラブ、酒田ロータリークラブ
酒田中央ロータリークラブ、酒田東ロータリークラブ、酒田湊ロータリークラブ
酒田スワンロータリークラブ、鶴岡ライオンズクラブ、鶴岡中央ライオンズクラブ
鶴岡朝暘ライオンズクラブ、鶴岡鶴陵ライオンズクラブ、鶴岡ロータリークラブ
鶴岡南ロータリークラブ、鶴岡西ロータリークラブ、鶴岡東ロータリークラブ
山形新聞社、荘内日報社、朝日新聞山形支局、毎日新聞山形支局、読売新聞山形支局
河北新報社山形総局、コミュニティ新聞社、鶴岡タイムス社、NHK山形放送局、山形放送
山形テレビ、テレビユー山形、さくらんぼテレビジョン、庄内観光コンベンション協会
全国社会福祉協議会・全国ボランティア活動振興センター、中央共同募金会
青少年育成国民会議、中央青少年団体連絡協議会、日本青年団協議会、日本赤十字社
日本経団連1%クラブ、日本NPOセンター、NPOサポートセンター
日本ボランティア学習協会、Vnet社会教育施設ボランティア交流会
移動サービス市民活動全国ネットワーク、震災がつなぐ全国ネットワーク
国際協力NGOセンター、宅老所・グループホーム全国ネットワーク
日本労働組合総連合会(順不同)
2月9日(日) オープニング〜開会式〜全体会(会場:鶴岡市文化会館)
13:30〜13:45
オープニング ふるさと賛歌 〜希望をつないで〜
○女声アンサンブル ろすまりん
1999年に女性だけで誕生。定期演奏会の外、器楽や独奏、ジョイントコンサート等、幅広い内容で開催し、県内の合唱、アンサンブルフェスティバルに参加。
13:45〜14:10
開会式 主催者挨拶
山形県庄内集会実行委員長 仲川 昌夫
日本青年奉仕協会会長 川崎 繁
来賓挨拶
山形県知事 高橋 和雄
14:10〜16:30
全体会『ボランティア一揆!公益の地から発信!!』
ボランティア活動を実践している人たちの公益とは何か、市民と公益の関係、公益とボランティアの関係について考えます。
全体コーディネーター:加藤哲夫(せんだい・みやぎNPOセンター)
1949年福島県生まれ。1981年出版社「カタツムリ社」設立。1985年エコロジーショップ「ぐりん・ぴいす」開店。環境・エネルギー問題・食と有機農業などに取組む。1993年「東北HIVコミュニケーションズ」設立。1992年より「エコロジー事業研究会」を主宰。1997年日本で4番目の民設民営によるNPO支援センター「せんだい・みやぎNPOセンター」設立、1999年特定非営利活動法人化し、代表理事・常務理事を務める。
第1部 公益とボランティア
パネリスト 小松 隆ニ(東北公益文科大学学長)
1938年新潟県生まれ。「自分づくり」から「まちづくり」の観点から公益活動の推進と検証を実践。専門は、「公益概論」「公益政策」。日本公益学会、日本ニュージーランド学会所属。
主な著書に「難民の時代」(学文社)、「ニュージーランドの社会誌」(論創社)、「大正自由人物語」(岩波書店)、「公益学のすすめ」(慶應義塾大学出版会)など多数。
東山 昭子(鶴岡市ウイメンズ・フォーラム代表)
願わなければ実現しない。動かなければ変わらない。生命輝かそう 今 その時!!願う自分、動く自分をしっかり育てながら、仲間どうしの夢を重ね、“むすぶ つなぐ ひらく”のウイメンズ・フォーラムのキーワードを現実のものとするパワーを高めたい。先人に学び、公益をわが喜びとする活動をここから日常的に展開し続けたい。
寸劇『天保一揆』 「天保一揆」は転封阻止の一揆である。
武州川越藩の松平大和守斉典が、羽州荘内藩への国替えを希望した。川越藩15万石、荘内藩14万8千石だが、荘内藩の実収は20万石を超えている。川越藩の財政は逼迫しており、実入りのよい荘内藩への国替えをお側御用取次の水野忠篤を通じて申し入れしたのである。
本来なら、なんの落ち度もない荘内藩酒井家を移封する理由はない。しかし、川越藩の松平斉典は、前将軍家斉の24番目の男子斉省を養子に迎えており、その生母おいとの方を動かし、将軍と老中の間をつなぐ水野忠篤に大枚の「賄賂」を使って、川越藩、荘内藩の国替えを実現しようとしたのである。
水野忠邦はこうした策略を承知の上で、三方国替えを提案する。15万石の川越藩、14万8千石の荘内藩に移し、荘内藩を7万石の長岡に移し、長岡藩を川越藩に移す。川越藩は実質的に20万石になり、長岡藩は表高15万石となる。ただ一藩荘内藩だけが表向きでも領地半減となり、実質的にはそれ以下に藩収入は減収となる。
いかにも理不尽な話であり、いかに幕府の力が強い封建制度の世界であっても、そんな一藩のエゴイズムが容易に通るようでは天下の御政道が保たれるはずがない。
解説「歴史の群像」より 川村 湊氏
○「寸劇」構成団体(鶴岡市在中の劇団)
表現舎刻一刻(定期公演、出前公演を中心に幅広い活動を展開)/舞台結社d-n(創作劇を中心に小ホールで活躍)/友情出演「劇団いでは」
第2部 未来の風 〜ボランティア一揆〜
パネリスト 佐高 信(評論家)
1945年山形県酒田市生まれ。東北公益文科大学客員教授。経済雑誌編集長を経て、1982年評論家として独立。政治、経済、文化など多方面で辛口評論家として活躍。
主な著書に「司馬遼太郎と藤沢周平」(光文社)、「黄沙の楽土」(朝日新聞社)、「佐高信の政経外科」(毎日新聞社)、「官僚国家=日本を斬る」(講談社文庫)、「鵜の目 高の目 佐高の目」(読売新聞社)など多数。
石井 布紀子(コラボねっと)
1966年兵庫県生まれ。1992年西宮市内にて学習塾「すくーるすばる」をオープン。自己決定や自己選択、自ら学ぶ力のサポートを公私共のミッションとする。1995年の阪神淡路大震災以降、この塾が緊急救援センターとなったことをきっかけに、復興支援まちづくりグループ「プロジェクト結ふ(ゆう)」の代表世話人となり、さまざまな市民の協働にチャレンジしはじめる。同会は1998年、仮設住宅の撤退とともに解散。現在、社会貢献性の高いしごとの場作りや、個々人の多様な働き方を支えることから、新しい人とまちの可能性を探り、未来を創りたいと実験事業を展開中である。2000年より、(有)コラボねっとの代表取締役に。全国にて、市民活動そのものや、それらと行政との協働を推進するためのアドバイザーや、各種委員を務めている。関西学院大学、花園大学非常勤講師。
庄内マップ
(拡大画面:82KB)
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分科会一覧
分科会名 |
会場名 |
分科会1 生命(いのち)の森を次世代に |
遊佐町 |
分科会2 移動(移送)サービスは福祉活動の主力 |
八幡町 |
分科会3 住民による『共働』のまちづくりはできるか! |
平田町 |
分科会4 地域の先生はどこにいますか? |
松山町 |
分科会5 おらほの「お宝発見術」 |
余目町 |
分科会6 空にそびえたつ大きな風車!クリーンエネルギーの風力発電! |
立川町 |
分科会7 誰もがこの地域で生きていくために |
三川町 |
分科会8 「人」と「想い」を編むまちづくりを考える |
藤島町 |
分科会9 感性をとぎすまし、ボランティア精神の原点をみつめる |
羽黒町 |
分科会10 伝統・文化を活かした人づくり、地域(まち)づくり |
櫛引町 |
分科会11 (過疎化+高齢化)×ボランティア=いきいきサロン? |
朝日村 |
分科会12 自治と生涯学習の里づくリ |
温海町 |
分科会13 シニアのパワーを活かすには |
酒田市 |
東北公益文科大学 |
分科会14 仲間を増やし、リーダーを育むためには? |
東北公益文科大学 |
分科会15 子育てボランティアパワーアップ大作戦 |
東北公益文科大学 |
分科会16 自然環境と共生するまちづくりを考える |
最上川スワンパークほか |
分科会17 コミュニティと災害 |
東北公益文科大学 |
分科会18 地域福祉NPOのミッション(志)をボランティアと共に |
東北公益文科大学 |
分科会19 スクール・イン・アクション!! |
東北公益文科大学 |
分科会20 《若者企画》若者と公益 |
東北公益文科大学 |
分科会21 誰でも創れる!?公園づくり入門編 |
鶴岡市 |
中央公民館 |
分科会22 施設ボランティアコーディネーター養成講座 |
中央公民館 |
分科会23 どうするボラセン!? |
働く婦人の家 |
分科会24 企業の支援を引き出すノウハウGET! |
中央公民館 |
分科会25 おとながまもる“こどものじんけん” |
中央公民館 |
分科会26 ぐるっと地球の風、となりの君と感じたい |
出羽庄内国際村 |
分科会27 NPOにおけるITの上手なつかいかた |
MARICA東館ネットコミセン |
分科会28 心のバリア 社会のバリアを解き放て! |
出羽庄内国際村 |
分科会29 市民主体のスポーツ振興のあり方を考える |
働く婦人の家 |
分科会30 地域通貨はボランティア活動を変えるのか? |
中央公民館 |
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2月11日(火・祝) 全体会〜閉会式(酒田市総合文化センター)
9:00〜10:30
若者企画森で感じた未来の風 〜伝えたいんだボランティアスピリッツ〜
今ここに旅をしている一行がいる。ある日、一行は森に迷い込んでしまった。その森は不思議なオーラを放つところであった。旅人らはそこで色々な出会いを経験する。それを通し様々な発見をすることになる。一体その森で何があったのだろうか!?それは全V研3日目で明らかになる。あなたもその旅に参加してみてはいかが?
第1部 森に迷った旅の一行が森での出会いや発見を通して集会テーマである“未来の風”を如何に興していけるかについて語り合い、輪を大きくしていきます。
第2部 若者企画分科会(分科会20)のメンバーも一緒になり、若者なりの感想・意見を出し合い、ボランティアのこれからや、私たちは何をもっていて、何ができるのかについてのエッセンスを会場の皆さんと導き出していきたいと考えています。
10:30〜11:45
全国ボランティア研究集会 34年を振り返って
コーディネーター:斎藤 信夫(日本青年奉仕協会事務局長)
スピーカー:スピーカーはこの集会に参加しているあなたです。
この全国ボランティア研究集会に、さまざまな形で関わってきた方たちからメッセージをいただきます。
今をさかのぼること34年前、1970年(昭和45年)に行われた「全国奉仕活動研究大会」に全国から167名の参加者が集まり「奉仕活動の展望」というテーマで、“奉仕活動”の在り方について研究討議した。
この集会は、第7回目から「全国ボランティア研究集会」と名称を変え、わが国で唯一「ボランティアの、ボランティアによる、ボランティアのための集会」となる。
この全国ボランティア研究集会は、それぞれの時代の中にあるボランティア活動の動向を的確にとらえ、ここから芽吹いた活動も数多くあり、多方面にさまざまな影響を与えてきた。
また集会の企画や運営に関わる人たちや、参加者の中から数多くのネットワークが築かれ、わが国におけるボランティア活動の推進に大きな役割を残してきた。
全国ボランティア研究集会は、今回(第34回山形県庄内集会)をもって終了することになるが、その34年の歴史の中で、ボランティア活動そのものや集会を開催してきた地域、そして関わってきた人びとがどのように変化し、どのような役割を担えてきたのかを、集会に関わった人たちからの生の声を通してここに現していきたい。
11:45〜12:00
閉会式 主催者挨拶
山形県庄内集会実行委員会 副実行委員長 冨田 ユリ子
日本青年奉仕協会 常務理事 祐成 善次
合唱「夜明けのうた」
○酒田市合唱連合
酒田市出身のシャンソン歌手、故岸洋子の偉大な足跡を讃える「岸洋子メモリアル希望音楽祭」のために、酒田地区の合唱連盟加入の合唱団を中心として結成しました。
音楽祭では「夜明けのうた幻想(夜明けのうた 希望)」を歌い上げます。
また、一昨年4月に酒田市に開学した東北公益文科大学の入学式のお祝いとして「夜明けのうた」と「大地賛頌」を大合唱し、好評を博しています。
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